赤糸で縫いとじられた物語 原作:寺山修司(ふたりの部屋)

格付:C
  • 作品 : 赤糸で縫いとじられた物語
  • 番組 : ふたりの部屋
  • 格付 : C+
  • 分類 : 幻想(その他)
  • 初出 : 1984年7月30日~8月3日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : 寺山修司
  • 脚色 : (不明)
  • 演出 : 多田和弘
  • 主演 : 中尾幸世、柴田侊彦

歌人であり劇作家、小説家にしての評論家でもあった寺山修司さんの大人向けの童話を原作とした作品です。
寺山さんが47歳の若さで亡くなられた翌年である1984年に「ふたりの部屋」でラジオドラマ化されました。


現代のカリスマ

寺山さんといえば昭和末期を代表する文筆家で、多芸な才人としてとても有名な方でした。
あの時代の空気を代表する一人として、当時青少年であった方を中心として、今でも多くのファンがいる方ですが、残念ながら私個人としては今まで寺山作品に親しむ機会に恵まれず、寺山さんを語る言葉を持ちません。
ただ、そんな私でも正直、「寺山修司」と聞いただけで、何となく評論をためらってしまう「カリスマ」的な威圧感を感じてしまい、少々、この記事はやりづらい感を覚えます。
とはいえ、読んだことがないものは仕方はない。
本記事も本作品(しかもラジオドラマ版)という狭い範囲しか知らない者による独善的なものになってしまっているかも知れませんが、気にせず書くことにします。
ファンの皆様にはご容赦ください。

各回の概要

さて、本作品は1話完結の童話が5回放送された作品であり、各回のタイトルと一言内容は以下のとおりです。

タイトル 一言
1 壜の中の鳥 言葉を話す鳥の出現以降、次々と人が鳥になっていく。
2 消しゴム なんでも消してしまえる魔法の消しゴムを手に入れた人々の話。
3 まぼろしのミレナ 十年先が写る世にも不思議な写真機に見知らぬ少女が写った。
4 かくれんぼの塔 鬼ごっこ。緑の髪の子供が鬼をするたびに子供たちが消えていく。
5 海のリボン 言葉をしゃべれない少女が、結ぶと災いをもたらすという黄色いリボンを付けるが…

ほのかな残酷さ

現代語で現代日本を切り取るのが寺山さんの本分だとすると、どことも知れない世界を舞台にした童話作品(子供向きかは定かではありませんが)は、異例な作品に含まれるようです。
ただ、幻想的でありながら、どこか現実的で残酷な内容になっており、多くの今日的な寓意が含まれているのが寺山さんらしいところではあります。
でも、正直、苦手なんですよね、こういう「大人のための童話」っているやつ。
以前ご紹介した「五つの魔法の物語」もわかったようなわからないような作品でしたが、本作も同じ。
寓意といわれても私のような即物的な人間にはどうにもややこしいだけでして…

お気に入りは第四話

そんな中で、第四話だけはなかなかのお気に入りです。
確かに、かくれんぼにおける。鬼と隠れる人間の関係って面白いですよね。
人間関係の歪な一方性を描くのに適した題材だと思います。
「かくれんぼの楽しみは軟禁の楽しみ」って、確かにこんな言葉を使われたら、しびれちゃう人はいるようなあ、と感じました。

中世幸世さん出演作

さて、話は変わるのですが、本作品について、寺山修司作品であることのほかに、もうひとつ大きな特徴をあげるとすれば、やはり中尾幸世さんが出演されていることになるでしょう。
中尾さんはNHKの異端のドラマディレクター佐々木昭一郎さん演出のTVドラマ「夢の島少女」に出演してデビューされた方です。
その後の佐々木作品にも多く出演されましたが、このラジオドラマ版「赤糸で縫いとじられた物語」以降は声の出演で多くの方を魅了されているようです。
以下のような非公式ファンサイトもあります。

(外部サイト)http://www.bion.sakura.ne.jp/

幻の女優

かすかにかすれた声で囁くような独特な演技をされる方で、まあ口悪く言えば暗い淡々とした演技なのですが、確かに独特の雰囲気があります。
今でも半プロフェッショナルながら、ファンの声に答えて朗読などの活動を続けていらっしゃるようですが、その原点がこの作品になるようです。
本作品では柴田侊彦さんと組んで、独特な幻想的な世界を作り上げています。

続編及び関連作

最後に本作品の続編を紹介して終わりたいと思います。
その作品は、その名も「赤糸で縫いとじられた物語 パート2」。
「ふたりの部屋」の後番組である「カフェテラスのふたり」で放送されました。
過去、番組をまたいで続編が作られた作品を紹介したのは「CF愚連隊」(アドベンチャーロード)→「ロンリー・ランナー」(青春アドベンチャー)くらいでしょうか。
なかなか珍しいことだと思います。
ちなみに「パート2」が放送された「カフェテラスのふたり」には、同じように柴田さんとコンビを組んだ、同じ寺山修司さん原作でファンタジー調である点でも似ている「時には母のない子のように」など、中尾さんの出演作品がいくつかあります。

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