ネムコとポトトと白い子馬 原作:谷山浩子(サウンド夢工房)

格付:B
  • 作品 : ネムコとポトトと白い子馬
  • 番組 : サウンド夢工房
  • 格付 : B-
  • 分類 : 幻想(その他)
  • 初出 : 1990年4月16日~4月27日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 谷山浩子
  • 脚色 : 岡本螢
  • 演出 : 香西久
  • 主演 : 高沢順子

ネムコさんは喫茶店で物を書いたり本を読んだりするのが大好き。
ある日、喫茶店で紅茶を飲んでいると、砂糖の中から白い馬があらわれた。
「約束の時間だよ。青い髪のポトトが待ってるよ。」
白い馬の誘いに乗って紅茶の中の世界に旅立ったネムコさんだったけど…




シンガーソングライター谷山浩子さんの童話風物語を再構成してつくられたラジオドラマで、脚色はこのようなファンタジックな作品を多く手がけている岡本螢さんです。
青春アドベンチャーの前番組である「サウンド夢工房」で放送されました。

サウンド夢工房の常連

サウンド夢工房は放送期間2年の短命の番組でしたが、その僅かの間に、本作品に「谷山浩子の“悲しみの時計少女”」と「谷山浩子の電報配達人がやってくる」を加えた3つの谷山さん原作作品が取り上げられました(多くの作品が取り上げられた原作者さんについての特集はこちら)。
ちなみに他の2作品が「谷山浩子の~」と原作者の名前がついたタイトルになっているのに対して、本作品のみ「ネムコとポトトと白い子馬」とそれが付いていません。
理由は不明ですが、ひょっとして他の2作品には谷山さんご自身がご出演されているからかも知れません。

各回の基本フォーマット

さて、本作品は毎回、ネムコさんが現実世界で何かをしていると白い子馬が現れ、異世界へと連れて行かれます。
そしてそこで夢のような(あるいは悪夢のような)体験をするのですが、結局、青い髪のポトトには出会えずに(そもそもポトトが何者かの説明もない)現実世界に戻ってくる、というのが原則的な1回分のフォーマットになっています。
各回ごとに旅する不思議な世界は、「紅茶の中」であったり「コンピューターの中」であったり、あるいはどことも知れない不思議な空間であったり。
現実世界の花屋のおばさんが役どころを変えて出てきたり、何かに追いかけられる内容だったり、地球を食べてしまったりして、まさに夢の中のような不思議な展開が続きます。
不思議な雰囲気が大好きな谷山浩子ファンには堪らない内容だと思いますが、正直言って、この手の話が苦手な人には全く興味のない作品だと思います。

各回のサブタイトル

なお、各回には以下のサブタイトルがついています。
本ラジオドラマは谷山浩子さんの「猫森集会」が原作ですが、最終話のみ「ねこの森には帰れない」収録の童話「手品師」を改変して継ぎ足しています。
ちなみに、第5夜の「電話の向こう」は原作における「地底通信」の後半部分を独立させた作品です。
この第5夜は男女の恋愛を背景にして、我が儘や憎悪、破壊衝動のような負の感情を描いたやや異色の回になっています。
とはいえ、これも谷山さんの曲「忘れられた部屋で」や「夜のブランコ」などに現れている、歌手谷山浩子の一つの側面だと思いますが。

  1. 紅茶の誘い
  2. タネもシカケもコンピューター
  3. 地球博物館
  4. 地底通信
  5. 電話の向こう
  6. エイエン物語
  7. エイエン物語の続き
  8. スーパーマーケット・マン
  9. 猫森集会
  10. ネムコとポトトと白い子馬

いわゆるファンタジー

基本的にどの話も、徹頭徹尾、「不思議の国のアリス」的な意味でファンタジーです。
当然、予想外の展開が続くのでちょっとでも聞き逃すとつながりがわからなくなってしまう難があるのですが、例によって?ストーリー自体がさっぱり訳がわからないので、つながりがわからなくなっても問題はないのかも知れません。

声優さんのプロの技

さて、出演者は、高沢順子さん、古谷徹さん、太田淑子さんの3人。
谷山浩子さんの分身である主役のネムコ役を女優の高沢順子さんが専属で演じており、古谷さんと太田さんはその他の役を何役も演じ分けています。
ちなみに古谷さんは「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイや「巨人の星」の星飛雄馬で、太田さんは「ひみつのアッコちゃん」のアッコや「ヤッターマン」のガンちゃん(ヤッターマン1号)で有名な大御所声優さんであり、結構豪華な布陣。
古谷さんは真面目なヒーローの印象が強い方ですが、意外とこのような浮き世離れした話にも合う声をしているというのが本作品を聴いての印象です。
なお、第6夜では「アプレンキルシス・オバルキス・ジャムステス・ブォーラ」や「ピルビルモル・ススカナバジャ・ベーベー」などの早口言葉のような台詞を言うシーンがありますが、さすがプロの声優さん、滑らかな台詞まわしです。
まあプロなら当たり前なのかも知れませんが。

七色の声

一方、本作品の聴きどころとも言えるのが太田さんの演技。
本作品では作品の冒頭と最後に出演者が地の声で話すパートがあるのですが、このパートの時の太田さんの声と作品中の色々な役をやっているときの太田さんの声の違うこと違うこと。
地の声は、まあ言ってみれば普通のおばさんの声なのですが、作品中では完全な(アニメ風の)少年の声。
しかも役ごとにちゃんと違う声になっている。
青春アドベンチャーのようなラジオドラマにおける出演者として、舞台俳優さんの方が良いか、専業声優さんの方が良いかは議論が分かれるところだと思います。
しかし、「ミヨリの森」や「封神演義」でも思ったのですが、ファンタジー要素が強い作品では、やはり地声でない声で演技し慣れているアニメ畑の方は強いですね。

ラジオ図書館版の存在

ところで、本作品の類似作品として、1986年にTBSのラジオドラマ番組「ラジオ図書館」(50分番組)で放送された「青い髪のポトト」(脚色:高木達(たかぎ・とおる)さん)があります。
同じ題材を青春アドベンチャー系の番組とラジオ図書館の両方で取り上げた例としては、他に「怪人二十面相・伝」があるのですが、2つの番組でかなり異なる脚色がされていた「怪人二十面相・伝」と異なり、本作品は両番組で似たつくりになっています。

違いもある

とはいえ、「青い髪のポトト」の方は、「猫森集会」のみを原作とした作品で、主人公(名前はない)の一人称で進む構成で、内容は「ネムコとポトトと白い子馬」における第1夜・第2夜・第9夜に該当する部分のみという違いがあります。
そのため、結局、ポトトには会えずに終わるのですが、終盤、主人公がポトトと間違える少年の声がどうにも谷山さんに似ている気がします。
番組終了後の出演者紹介では谷山さんの名前は出ないのですが、青春アドベンチャーの「おしまいの日」に主演されていたことからもわかる通り谷山さんは立派に演技ができる方ですので、ひょっとしてこっそり出演されていた…なんてこともあるのかも知れません。
気のせいかもしれませんが。

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