- 作品 : 世紀の大冒険レース~アムンゼンとスコット
- 番組 : アドベンチャーロード
- 格付 : AA+
- 分類 : 冒険(秘境漂流)
- 初出 : 1987年11月16日~11月27日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : チェリー・ガラード、本田勝一
- 演出 : 角井佑好
- 主演 : 細川俊之
1911年1月、南極大陸にふたりの男が上陸する。
一人は大英帝国の誇る優秀な海軍軍人ロバート・ファルコン・スコット。
もう一人はアルゼンチン出身の熟練した探検家ローアル・アムンゼン。
国家の威信と男の夢をかけたふたりの大冒険レースが始まる。
進むは人跡未踏の大地・南極大陸、目指すは人類史上初の南極点への到達。
世界一過酷な旅の果てにふたりを待ち受ける運命は、栄光か失敗か。
史実のアムンゼンとスコットの南極点到達レースを扱った作品です。
チェリー・ガラードの「世界最悪の旅」と本田勝一さんの「アムンセンとスコット」を底本にNHKがつくった準オリジナル作品のようです。
なお、タイトルでは「アムンゼンとスコット」とアムンゼンが前に来ていますが、本ラジオドラマは主としてスコットサイドを中心とする内容になっています。
世界初の南極点到達
このレースの結末は非常に有名ですので、以下はネタバレ覚悟で書いています。
結末をここで知りたくない方は、恐縮ですが、ここでストップして下さい。
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何と言ってもスコット
主役のスコット役は細川俊之さん。
最終回でスコットが遺書を書いている場面の細川さんの声を聴いていると何度聞いても涙ぐんでしまいます。
あの渋い声で、冒険のスポンサーに対して「小生は遂に大探検家にては、これなく候。」ですよ。
夫人への遺書は「最愛なる妻キャスリーン…いや…拝啓、ロバート・ファルコン・スコット未亡人へ…」ですよ。
死んだボアーズ隊員の母親に宛てた手紙は「ボアーズの母堂へ 拝啓、生涯の最も大いなる打撃の一つをお受け遊ばしたる後に、この書状がお手に届くことをお許し下されたく候。」ですよ。
正直感動せざるを得ない
万感が胸に迫りつつもあくまで軍人としての責務を全うしようとする姿には、このようなヒロイックな行動にシニカルな私でも何がしかの心が動かされずにはおれません。
実際のスコットも、死の直前に計12通もの遺書を書き、その中では死んだ隊員の働きを褒め、世間の人たちへ隊員の遺族への配慮を求めるとともに、自分の妻には適当な男性がいれば再婚することを勧めているとか。
無茶な計画、無茶な行動ではある
今日の検証ではスコット隊は負けるべくして負けた、という評価がほぼ定着しているようです。
確かに遭難直前の状態で標本採取を継続するなど、素人の私から見ても狂気の沙汰です。
ただ、あれほどの悪条件が重ならなければこのような悲劇には終わらなかったでしょうし、「蜩ノ記」の秋谷のときにも書きましたが、自らの価値観だけで他人を断罪するのは避けたいものです。
敗北を受け入れることは敗者の誇り
何しろスコット隊は南極点に残されていたアムンゼンの手紙(スコット隊が負けたことの証明)を持ち帰っているんですよ。
自分の命よりも優先すべきものがある、と口で言うことは簡単ですが、死を前にして実際の行動でそれを示すのはなかなかできないと思います。
なお、本作では、スコットだけでなくスコット隊の他の極点到達メンバー(ウィルスン、ボアーズ、オーツ、エヴァンズ)のひとりひとりの性格と行動が丁寧に描かれており、その辺も聞きどころです。
アムンゼンも「らしい」よね
一方のアムンゼンを演じたのは草野大悟さん。
こちらもエネルギッシュで合理的なアムンゼンを見事に演じており、「脱獄山脈」の相馬刑事とはまた違った魅力がありました。
この作品で唯一の残念点
また、ナレーションは女優の和泉雅子さんです。
ただ、この和泉さんなのですが、ナレーション自体は良いですが、作品の前後にご自身の南極・北極経験をお話されるのが、ちょっと…
特に最終回の全ての物語が終わって余韻に浸っているときに聞こえてくる和泉さんのアレ。
制作側はリスナーを現実引き戻すために敢えてやっているかもしれませんが、どちからという醒めてしまう感じ。
ちょっとないんじゃないの、というのが正直な感想でした。
何はともあれ、昭和の南極探検作品である本作品、平成の南極探検作品である「氷山の南」とはかなり趣の違う作品です。
コメント
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私もリアルタイムでこのラジオドラマを聴いておりました。細川さん、草野さん、石田さんをはじめ各演者がいいお芝居をしており、スコットの最期は涙無くしては聴けませんでした。ただ和泉雅子さんのラストの語りはやや興醒めであった記憶がございます。
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ピョートルさま
コメントありがとうございます。
何度聞いてもスコットの言葉は感動的ですよね。
最後の語り?なんかありましたっけ?