- 作品 : 俺たちの行進曲
- 番組 : ふたりの部屋
- 格付 : A+
- 分類 : 少年(中高)
- 初出 : 1981年5月4日~5月29日
- 回数 : 全20回(各回10分)
- 原作 : 有明夏生
- 脚色 : 蓬莱泰三
- 演出 : (不明)
- 主演 : 広川太一郎
昭和29年、福井県福井市。
戦災と震災の二重苦に苦しんだこの町もようやく復興の時を迎えつつあった。
そんな町の姿を映したかのように地元の越前高校に通う音楽部(実態はブラス・バンド部)の3人の男子高校生も青春の時を迎えつつあった。
まだ貧しい日本。しかも洒落た娯楽などない田舎町。でも若者はいつも希望とともに生きているのだ。
本作品「俺たちの行進曲」は直木賞作家・有明夏生さんの小説をラジオドラマ化した作品です。
ちなみにこの「俺たちの行進曲」は1984年には民放(ラジオ図書館)でもラジオドラマ化されています。
福井への思い入れ
さて有明さんは1936年に大阪に生まれましたが、1945年に福井県に疎開。
そのまま福井で高校を卒業していますので、本作品がリアリティがあるのは当然のこと。
同じ終戦後間もない時期の高校生活を描いている「背中あわせのハートブレイク」が終戦後でありながらどこか都会のオシャレさと上流階級のアンニョイさを感じさせる(舞台がやんごとなき方も通っちゃう名門の筑波大付属ですから)のに対して、本作品はあくまで田舎の朴訥な高校生が主人公。
男子高校生の頭の中
もちろん主人公たちは男子高校生ですので頭の中の半分くらいはエロで占められているわけですが、まだまだ古い気風も残るなか、それが華やいだ展開につながれるわけではなく、あくまで泥臭いドタバタ、じんわりとしたおかしさ(作中のセリフを借りると「全くためにならん馬鹿馬鹿しい話」)につながっているのがそれっぽい。
もちろん今聞くと完全に異世界の趣はあるのですが、男子高校生のうつうつとした日常なんて案外、いつでもこんなものなのかも知れませんね。
そういえば「男子高校生」+「音楽もの」という点で本作品に似ている「青春デンデケデケデケ」や「翼はいつまでも」からも似たようなにおいを感じる。
現実の高校生
そういえばこれらの原作者ってすべて男性なんですよね。
「バッテリー」や「一瞬の風になれ」、「DIVE!!」などに見られる女性作家特有の脱臭された男子高校生像とはやはり違うと言わざるを得なません(善し悪しの問題ではなく)。
まあこれらの作品はスポーツものでスポーツマンはもっと爽やかなのかもしれません。
脱臭しなさすぎると「フルネルソン」みたいに味わうのが難しくなってしまったりもしますし。
福井の苦難の歴史
さて、そんな終戦直後の男子高校生の日常(=馬鹿話)がつづられる本作品ですが、最後は急に雰囲気が変わります。
もともと作品冒頭から主人公の三浦和也が戦災孤児であるというシビアな設定が明かされてはいるのですが、途中、それはあまり作品に大きな影響を与えるとことはありません。
しかし最後の最後、福井がたどってきた苦難の歴史とからめて語られることになります。
この辺の急なトーンの変調、個人的には締まった感触になり悪くないと思いました。
原作小説の構成
ところで、上記で「主人公の三浦和也」と書いたのですが、原作を読んだことがある方は「あれ?」と思われたのではないでしょうか。
そう本ラジオドラマ版は主人公が少し原作と違うのです。
主人公格が3人いるのは同じなのですが、原作小説では、
- 第1・4・7章がクラリネットの新井昇
- 第2・5・8章がトロンボーンの川崎伸治
- 第3・6・9章がトランペットの三浦和也
の目線から語られ、最終第10章は3人ともにスポットライトが当たる構成です。
オリジナル要素
しかしこのNHK-FM「ふたりの部屋」版は終始、三浦和也が主人公として描かれるのみならず、冒頭、40台になった和也が昔語りをするというオリジナルの構成となっています。
本作品は全20話ですが、この時代の「ふたりの部屋」は1話=10分だったため、全体でもそう長い作品ではありません。
そういった中、中身を削らずコンパクトにまとめるための工夫だったと思います。
広川太一郎さん主演?
最後に出演者ですが、記事の冒頭で主演としている広川太一郎さんはこの「大人になった和也」役であり、同時に全体のナレーション役でもあります。
実質的な主役は高校生3人を演じた草川祐馬さん、後藤尚人さん、関亘さんとなります。
ところでこの出演者のお名前ですが、ネットで検索して出てきたものをそのまま使わせて頂いています。
NHKさんよろしくお願いいたします
本来、NHKの公式情報からもってきたいところなのですが、NHKクロニクルなどにもまだデータがアップされていません。
国会図書館などで紙媒体から探せばよいのか知れませんがさすがに面倒くさい。
ネット情報では本作品のタイトルも「おれたちの行進曲」となっており原作と微妙に違います。
今回は確証が取れないことから原作タイトルをそのまま記事のタイトルに採用しているのですが、ドラマ化時に変えた可能性もあります。
こんなことがあると公式情報を整理して欲しいものだと改めて思います。
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