- 作品 : ひょうたんから‘午’
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : コント
- 初出 : 2001年12月17日~12月21日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 作 : (下記のとおり)
- 演出 : 吉田努
- 主演 : 渋谷琴乃、温水洋一
太陽系第三惑星は文明が未成熟だ。
この惑星の文明が銀河連邦に加盟できるくらいに成熟するまで、慎重に監視を続けなければならない。
そう、われわれは銀河連邦の監視員。
動物の姿をしているのは地球人の目を欺くためだ。
だから「にょろん」と言っていても蛇(巳)ではないし、「ひひーん」と言っていても馬(午)ではない。
化ける動物を変えて12年で1周の持ち回りで分担していたら、監視にうすうす気が付いた人類が「干支」などという制度を作ってしまったようだが、そもそもわれわれは動物ではない。宇宙人なのだ。
さて、今年も監視員の引き継ぎの時期がやってきた。
この星の中でも特にいい加減な「日本」という国になにか大きな変化があったようだ。
ついに銀河連邦に加盟できるような精神的成熟を遂げたのだろうか。
今年の監視員に聞いてみよう。
平成最後の作品紹介
この記事をアップする2019年4月30日をもって「平成」の時代は終わりとなります。
このブログで主に取り上げているNHK-FMのラジオドラマ(オーディオドラマ)番組「青春アドベンチャー」は1993年にスタートした番組ですので、平成の時代とともに歩んできたといっても過言はないわけですが、その平成の30年の中でも17年間に亘って放送された青春アドベンチャーの隠れた代表作こそが年忘れ青春アドベンチャー、通称「干支シリーズ」でした。
これまでその16年分の作品を紹介してきたのですが、この平成最後の日に17番目の作品である「ひょうたんから‘牛’」をご紹介いたします。
藤井青銅さん以外による脚本
…などと、まずは大上段にスタートしましたが、このブログ、放送作品を放送順とは関係なく順不同に紹介していますので、この作品も干支シリーズ最後の作品という訳ではなく、その意味では17分の1でしかありません。
ただ、この作品は他の干支シリーズ16作品にはない大きな特徴をひとつだけ持っています。
それは、脚本に藤井青銅さん以外の方が関わっていること。
本作品以外はすべて藤井青銅さんがおひとりで脚本を書いていらっしゃるのですが、この作品のみ、第2回~第4回の脚本を別の方が書かれています。
そのため回ごとの微妙な雰囲気の違いを聞き比べるられることが本作品の最大の醍醐味。
とはいえ、結局、その1年の出来事をネタにしたコント作品であることに変わりはないのですけどね。
ちなみに藤井青銅さんはこの年「踊る21世紀 Part2」でも時事ネタ色がとても強い作品を書いています。
各回の内容
さて、本作品でネタになった2001年の主な出来事は以下のとおりです。
カッコ内は各回を担当した脚本家さんです。
政治・経済(作:藤井青銅)
「第1次小泉内閣発足」「省庁再編」「アメリカ同時多発テロ」「BSE問題(狂牛病騒動)」
政治・経済面では随分と多難な1年でした
それにしても(良くも悪くも)小泉純一郎のリーダーシップのなんと強烈であったことか。
現職の某A総理などは比較にもなりません。
近年の総理の中では小泉純一郎が特異過ぎた(あるいは変人すぎた)だけかもしれませんが。
なお、この回は本家・藤井青銅さんの脚本回ですが、ギャグの切れは今ひとつ。
芸能界での出来事(作:さわだみきお)
「反町隆史と松嶋菜々子が結婚」「えなりかずき歌手デビュー」「モーニング娘。のメンバー入れ替え」「『明日があるさ』リバイバルヒット」
何だか細かいネタが多い…
「モーニング娘。」は1999年(福田明日香卒業)あたりから入れ替えが始まり、この2001年には初代リーダーだった中澤裕子が卒業しました。
なお、この回ではNHKらしく“つんく”を”てんく”と架空?の人物に言い換えていますが、いつもの干支シリーズであればこのくらいは実名で制作しそう。
この辺に藤井青銅さんではないことによる遠慮が垣間見える気がします。
スポーツの話題(作:小野田俊樹)
「高橋尚子、世界新記録」「イチローとローズ」「大阪オリンピック誘致失敗」
イチローがシアトル・マリナーズでプレーを始めたのがこの2001年でした。
当初は活躍を疑問視する声もありましたが、終わってみれば、新人王+MVP+首位打者+盗塁王。すごいものです。
そのイチローもこの記事をアップした2019年についに現役引退が決まりました。
一方、2001年は大阪がオリンピック開催地に落選したことも大きな話題となりました。
しかし、この記事をアップした2019年の翌年2020年には、大阪ならぬ東京オリンピックの開催が予定されており、大阪でオリンピックが計画されたことはすっかり忘れ去られています。
文化(作:山名宏和)
「千と千尋の神隠し 日本映画史上最大のヒット」「外資系の大型ショッピングセンターオープン」「FOCUS廃刊」「陰陽師ブーム」
「千と千尋の神隠し」が20年近く前の作品であることに驚愕。
1989年に死去した手塚治虫さんから引き継ぐような形で日本のサブカルチャーの頂点の座についた宮崎駿さん(それ以前は著作(シュナの旅)がラジオドラマになるくらいにはマイナーでした)。
この時点で概ね手塚さんの死去から10年が経過していた訳ですが、結局、更にその後20年を経過しても宮崎さんを引き継げるような人は現れていません…
また、フランス系の大型スーパー「カルフール」がオープンしたのがこの前年の2000年。
スウェーデンの家具量販店イケア(IKEA)が再進出したのがこの翌年の2002年でした(出店は2006年の船橋店が第1号)。
後者は日本に定着しましたが、前者は2009年には撤退することになります。
さらに、写真週刊誌の草分けで「FRIDAY」「FLASH」とともに一時代を築いた「FOCUS」が廃刊したのもこの年。
「FRIDAY」「FLASH」は今でも続いていますが。「FOCUS」はよりハードというか「本気度」の高い雑誌でした。
最後に「陰陽師ブーム」もありました。
2001年は世紀末感覚(末法思想?)がまだ抜けていない頃だったのかも知れません。
思えば1998年に「夢源氏剣祭文」で安倍晴明を取り上げた青春アドベンチャーは先見の明があったな。
社会的出来事(作:藤井青銅)
「迷惑メール」「荒れる成人式」「プロジェクトX~挑戦者たち~」
この辺は、2019年の現在でも、良くも悪くもあまり古びていませんね。
「プロジェクトX」なんか2005年に放送が終わっているのに、今でも「世界の果てまでイッテQ!」でネタにされていますし。
「荒れる成人式」も全然変わらず。
ヤンキー文化は根強いですね~。
こうしてみると藤井青銅さんがネタを絞ってひとつのコントに時間をかけているのに対して、他の脚本家さんの回は小さいネタをたくさん並べるつくりです。
違いが見えて面白いです。
ヒット曲の紹介
なお、この「干支シリーズ」のフォーマットは毎年ほぼかっちりと決まっているのですが、エンディングに「その年の更に12年前のヒット曲を流すか」だけは、年によって違いがあります。
基本的には流されるのですが、1994年(イノシシが来た)、2000年(2001年巳年の旅)、2001年(本作品)、2002年(迷えるお未年)のみこれがありませんでした。
【藤井青銅原作・脚本・脚色の他の作品】
青春アドベンチャーの長い歴史において、最も多くの脚本と最も多くの笑いを提供しているのが脚本家・藤井青銅さんです。こちらに藤井青銅さん関連作の一覧を作成していますので、是非、ご覧ください。
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