カムパネルラ 原作:山田正紀(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : カムパネルラ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : SF(その他)
  • 初出 : 2018年9月10日~9月21日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 山田正紀
  • 脚色 : 矢内文章
  • 音楽 : 関向弥生
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 平埜生成

岩手県の花巻に向かったのは、遺言に従い母の遺骨を花巻の豊沢川に撒くためだった。
宮沢賢治が大好きだった母らしい遺言だが、毎日忙しいぼくからすると、何とも厄介な遺言だ。
普段の仕事で疲れていて、何度も寝てしまったからか道中の記憶は飛び飛び。
だが、ようやく大沢温泉郷に到着した。
後は川まで下りて遺灰を撒くだけのはずだったのだが…
現在は昭和8年9月19日、近所でやっている葬式は宮沢賢治の葬式だという。
僕は寝ている間にいつの間にかタイムスリップしてしまった?
いや、そもそも宮沢賢治が死んだのは昭和8年9月21日のはずだ。
これは一体?



20世紀初頭、岩手の地から、仏教と農村生活を基盤とした数多くの詩や童話を世に送りだした宮沢賢治。
「注文の多い料理店」、「雨ニモマケズ」、「風の又三郎」など作品を通して、多くの日本人に知られた作家です。
岩手の風俗に根差した土俗的な雰囲気と、農業技術(賢治自身、技師でもあった)やエスペラント語、そしてユートピア思想といった西欧文明風の要素が混然一体となったその独特の物語世界は、彼の死後、多くのクリエイターを刺激していきました。
本作品「カムパネルラ」も、SF作家・山田正紀さんの手によるそんな「賢治インスパイア系」の作品のひとつです。

最近採用が多い山田正紀作品

なお、山田正紀さんというと流行作家としては一昔前の方、というイメージがあるのですが、青春アドベンチャーでは2013年以降、「ツングース特命隊」、「チョウたちの時間」、そして本作品と3作品が立て続けにラジオドラマ化されており、近年ではかなり採用作品数の多い作家さんです。

実は放送日に仕掛けが

ちなみにNHK-FM自体が宮沢賢治が大好きで、例えば賢治生誕120年にあたる2016年には「劇作家競作シリーズ・賢治の声を探して」と名付けられた一連の作品がFMシアターで放送されました(「I want to be.ケンジノウタ」、「ホワイトダスト」など)。
本作品が放送された2018年はその2年後ですので、「今回の放送タイミングは特に深い意味はなさそうだなあ~」と思って聴いていたのですが、よく考えてみると賢治の死没した日は「9月21日」。
本作品の最終放送日にピタリとあっています。
青春アドベンチャーらしい遊び心ですね。

モチーフは「銀河鉄道の夜」

さて、本作品がモチーフとしている作品は「銀河鉄道の夜」。
「カムパネルラ」が「銀河鉄道の夜」の準主役級の登場人物の名前であると知っていれば明らかだと思います。
ただ本作品中ではカンパネルラは生首でしか登場しないのですけどね。

まあ、それはとにかく、主人公の「ぼく」が「銀河鉄道の夜」の舞台と昭和初期の花巻がごちゃごちゃになった世界に迷い込んでしまうことにより物語は始まります。
そこで「ぼく」は、「宮沢さそり」なる、実在しない賢治の姪や「風野又三郎」なる不思議な力を持った少年と出会うのですが…
なんと、途中から物語は急展開していきます。
実は…

詳しく書けない

と詳しくを述べたいところではあるのですが、これ以上、作品世界の背景を書くと、中盤以降のネタ晴らしになってしまうためほとんど何も書けません。
「『銀河鉄道の夜』は永久物語運動体であり、その中における『銀河鉄道』は思考補助装置である」という重要な要素を説明するためには舞台背景を説明しないわけにはいかないのですが。
敢えてNHK-FMの過去作でいうならば、「お父さんの会社」や「サイコサウンドマシン」的な要素(←これらのリンクを踏むときはネタバレ注意です)というか、まあ一般的にいえば「ソード・アート・オンライン」的なアレというか…いかん!ほとんどネタバレですね。
まあ、その要素が入り込んできて、一気に山田正紀さんらしい、反骨的な物語へとなっていくのです。
圧倒的な権力、全体主義的なものへの嫌悪、勝ち目のない戦いと、実際負けて終わる結末など「神狩り」から始まる初期作品群に通じる、いかにも山田正紀風の展開です。
ではあるのですが…

賢治ワールドでやる必要があったのか

これって宮沢賢治モチーフでやる必要がある作品だったのでしょうか。
確かに宮沢賢治は社会主義運動に関わった(と当局から睨まれた)り、逆にファシズム的な団体との関係もあったりしたので、作品テーマとの連想はつけやすい人物です。
また、「銀河鉄道の夜」は内容の異なるいくつかの「版」があり、しかも結局は未完に終わっている(賢治が存命であればもっと後の「版」もありえた)というのは実に想像力を刺激する話ではあります。
ただ、個人的には、賢治の魅力はそうした政治的な主張や思想と関係ない部分にあるように考えています。
だから、多くの人が多くの想いを載せてきた賢治ワールドに、政治的な主張を載せてしまうことにも、何となくもやもや感が残りました。

肝心のポイントが納得できない

またこれは一層個人的な思いになるのですが、全体主義を否定する最後のよりどころが、母親というのも釈然としません。
最後の「ぼく」の「抵抗」のシーンはいかにも山田正紀さんらしく、「神狩り」ファンの私としては感じるものがあったのは確かではあります。
ただ後味が悪すぎます。
作者の主張が自己犠牲の否定である以上、賢治の世界を守ることに殉じる物語の結末がああならざるを得ないことは十分わかるのですが…

主演は平埜生成さん、ヒロイン役は春名風花さん

さて、本作品で主役の「ぼく」を演じたのは俳優の平埜生成さん。
2017年の「天下城」では前半部分で主人公の次郎左を、後半ではその子である市郎太を演じていらっしゃいましたが、今回は初の単独主役です。
また、ヒロイン?と思われる「宮沢さそり」を演じたのは、「はるかぜちゃん」こと、女優の春名風花さん。
青春アドベンチャーでは2016年の「エド魔女奇譚」に次ぐご出演です。
ちなみにこのふたり、主人公とヒロインと言っても色っぽいシーンは一切ありません。
まあ「さそり」の正体は●●ですので、あるわけがないのですが。

こども店長はもはや子どもではない

また、「どっどど、どどーどー」という必殺技(?)があまりに印象的な「風野又三郎」を演じたのは俳優の加藤清史郎さん。
そう、7歳だった2009年ごろのトヨタ自動車のCMで「こども店長」に扮して一躍人気になったあの加藤清史郎さんです。
本作品出演時は17歳。
エヴリシング・フロウズ」に前田旺志郎さん(笑いコンビ「まえだまえだ」)が出演した時にも感じたのですが、いつの間にか随分と大きくなったものです。



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