- 作品 : いまはむかし~竹取異聞~
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AAA-
- 分類 : 伝奇(日本)
- 初出 : 2013年11月25日~12月13日
- 回数 : 全15回(各回15分)
- 原作 : 安澄加奈
- 脚色 : 田中摂
- 音楽 : 山下康介
- 演出 : 木村明広
- 主演 : 細見大輔
平城京に遷都してから2年。
武官の家に生まれた弥吹(やぶき)は、武人になることを厭い、幼なじみの薬師の娘・朝香(あさか)とともに、父のいる都から逃げ出す。
しかし、貴族の若さまで生活力に欠ける弥吹はたちまち路銀に困ってしまう。
自分が誇れるのは多くの書物を読んでいることだけと考えた弥吹は、市場の辻に立って今までに読んだ多くの物語を語り聴かせることで金を得ようと思い立つ。
「いまはむかし! いまよりももっとむかし…」
弥吹の語りが、輝夜(きよ)と阿生(あき)というふたりの少年との出会いを生み、ふたりとの出会いが、弥吹と朝香の運命をも変えていくことを、この時の弥吹はまだ知らない。
安澄加奈さん原作の小説を原作とするラジオドラマです。
舞台は奈良時代。
神代(ドラマ古事記~神代篇~)、古代(空色勾玉)、飛鳥時代(645~大化の改新・青春記~)、平安時代(鬼の橋・夢源氏剣祭文)、源平争乱期(風神秘抄など)など多くの時代を舞台とした作品が制作されてきた青春アドベンチャーであり、奈良時代を舞台とする作品は「古事記~神代篇」についで2作目だと思います。
奈良時代風味は薄目
ただし、奈良時代が舞台といっても、登場人物の名前やストーリーの面から、奈良時代でなければいけない必然性は薄い作品です。
“竹取物語”(=かぐや姫)である時点で自動的に舞台は奈良時代になるでしょうし、都が平城京であることや、藤原不比等が登場する点など、時代はきっちり奈良時代には設定されているのですが、正直言って古墳時代から平安時代までのどこの時代にも移植が可能な作品内容だと感じました。
また、登場人物達のセリフもほぼ完全に現代語ですので、よく言えばとっつき易い、悪く言えば本格的な歴史劇ではない作品だと思います。
そして、単純にフィクションとしてみても、テーマもストーリーも目新しさや深みはあまりないものです。
爽やかな成長物語
…などと散々、否定的なことを書きましたし、確かにストーリーはコテコテなのですが、意外と飽きさせない展開です。
また、素直でまっすぐな成長物語であり、単純に娯楽作品として聴くと聴取後感はさわやかです。
何より結末が気持ちいい。
ある意味、登場人物たちの旅はまだ途上の状態で物語は終わるのですが、集まり、そして散じていくなかでの若者の成長がうまく描かれていると思います。
あくまで子供向きの娯楽作品ですが、それと割り切れば上質な出来だと思います。
そして、その出来の源は原作の力だと思います。
“和風ファンタジー小説”という分野では、「風神秘抄」や「空色勾玉」など青春アドベンチャーでも複数作品が取り上げられている荻原規子さんが第一人者だと思いますが、あまりメジャーでない方にもなかなかの書き手がいらっしゃるようです。
最初は少し違和感
出演は主役の弥吹役が細見大輔さんです。
「これは王国のかぎ」のハールーン役や「魔岩伝説」の遠山影元役が印象的な細見さんですが、正直言って本作品の冒頭では、舞台俳優らしい朗々たる演技が、17歳の文弱な弥吹とあまり合わない感じがしました。
特に物語当初に「へっ?」という言葉で驚きを表現するシーンが多くあるのですが、これが気になって仕方がありませんでした。
高音が響く…
また、弥吹の相手役の朝香を演じるのが前田希美さんで、これがまた、特に物語冒頭で、キンキンに高い声で演技されるので、正直言って少し辟易しながら聴いていました。
前田さん、「三匹のおっさん」ではあまり感じなかったのですが、「やけっぱちのマリア」での声がかなりキンキンで、正直、「やけっぱちのマリア」の出来がアレだったので、本作品でも似たように雰囲気を感じてしまったんですよね。
でも、物語が進むにつれ、おふたりが演じる役が落ち着いた性格になってきたからか(あるいは単に私が声に慣れただけかも知れないですが)、後半は違和感がなくなりました。
舞台俳優+モデル+声優
また、もう一組の主役コンビである、輝夜役の能登麻美子さんと、阿生役の冨樫かずみさんは主にアニメ等で活躍されている声優さんのようです。
本作品の主役級4人は、舞台俳優(細見さん)、ファッションモデル(前田さん)、声優(能登さんと冨樫さん)というバックボーンが異なる方々が演じられています。
それが違和感なく共演されているのが本作品の珍しいところだと思います。
山下音楽に外れなし
さて、本作品の音楽を担当しているのは「風神秘抄」、「ピエタ」、「泥の子と狭い家の物語」などの作品で、青春アドベンチャーではお馴染みの山下康介さんです。
正直、この3作品の音楽が良すぎたので、本作品の音楽があまりとびぬけた感はないのですが、やはりオリジナルだけあって物語にあった音楽になっています。
やはりオリジナル音楽はイイですね!
またも便乗?
ところで、この作品が放送されたのは2013年12月。
スタジオジブリ制作の映画「かぐや姫の物語」(高畑勲さん監督)の公開から1か月と経っていない時期です。
とても偶然とは思えません。
NHKのスタッフ、商売っ気ありすぎです。
ちなみに、この「かぐや姫の物語」、「放課後はミステリーとともに」や「幻想郵便局」で青春アドベンチャーとは縁の深い朝倉あきさん主演です。
どうせ便乗するなら本作品にも朝倉さんを起用したら面白かったかも知れません。
朝倉さんを起用するなら朝香かな?
でも一度聴いてしまった今となっては、朝香は前田さん以外には考えられませんね。
コメント
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「とっつき安い」ではなく「取っ付き易い」ではないでしょうか。
格付がAAAになってますが、これは高評価ということでしょうか?私が格付けするとしたらこの作品はCです。面白くもないし、黒ずくめの男役の高瀬哲朗さんの演技には辟易しながら聴いていました。そしてかぐや姫の男言葉には違和感があり、強がっているように見えましたね。聞き苦しい作品でした。
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コン様
いつもながら誤字のご指摘ありがとうございます。
間違いない高評価にしています。
理由は本文を読んでいただけましたら。