- 作品 : ポンコツおやじとみんなの保育園
- 番組 : FMシアター
- 格付 : C+
- 分類 : 日常
- 初出 : 2023年10月7日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 内村宏幸
- 演出 : 清田翔太郎
- 主演 : 古川慎
熊本県・鹿児島県を襲った集中豪雨。
山間の一級河川の氾濫は多くの集落を飲み込む大災害を引き起こした。
3年後、久しぶりにサトシが帰った故郷は川こそ以前のままだったが、鉄橋は折れたまま、人口も半分近くに減るなど寂しい状況だった。
そして何より母が園長を務める保育園が閉園を余儀なくされるという。園児が全員地区を離れることになったからだ。
この状況にサトシの心は揺れる。自分にできることはないのか。保育園を再開することは無理でも代わりに人が集まれる施設はできないものだろうか。
本作品「ポンコツおやじとみんなの保育園」はNHK福岡局制作のラジオドラマです、
作品の舞台は作中の言葉でいうと「つまむら」の「かみのせちく」。
3年前というと「つまがわ」ならぬ「球磨川」が大氾濫したことで全国に衝撃を与えた「令和2年7月豪雨」。
となるとモデルとなった地区は「球磨村」の「神瀬(こうのせ)地区」なのでしょうが、一応、フィクションという扱いなのだと思います。
福岡局の制作
当時、私もニュースを見ていて衝撃を受けた一人ですが、本作品のディレクターの清田翔太郎さんは長崎県西彼杵郡出身、脚本家の内村宏幸さんは熊本県人吉市出身、主演の古川慎さんも熊本県出身。
地元の方々の衝撃はいかばかりだったことか。
大災害があっても少しすると忘れられてしまうのは人の世の常ですが、忘れて欲しくないという強い気持が反映した作品なのだと思います。。
堅苦しくない
とはいえ本作品は深刻な雰囲気の作品ではありません。
FMシアターの主演ではかなり珍しくいアニメを中心に活躍されている声優・古川慎さん(第14回声優アワード助演男優賞)を敢えて主演に起用し、深刻さ、生活臭さは敢えて抑えているように感じます。
地元のおじちゃん達も水商売の女性に入れあげちゃったり、とんでもない聞き違いをしたりとか、かなりのポンコツ具合で、終始雰囲気はコミカル。
園児とおじさん達のほのぼのしたやり取りが想像されるタイトルとは違って保育園シーンが全くなかったのは残念ですが、災害もの、復興ものだけど、堅苦しいものにはしたくない!という制作側の強い意志を感じられたのは好印象でした。
ドラマとして面白さ
ただ…
面白かったかというと個人的には少し微妙でした。
なんとなくディテールが気になるんですよね。
真剣に考えても仕方がないと思いつつ、「都市再生特別措置法の個別条文が弁護士より詳しくても自慢にはならないよね」(弁護士の能力ってそういうことではないと思う)とか、「保育園の土地が国のものになるってどういう状況」(借地だったのか?でもそのあとに買い戻すとか言っているけど?)とか、「いくらなんでもあの焼きそば間違いはないでしょう」とか、「打ち上げ花火っていきなり別の花火師を連れてくればできるものなの?」とか、色々考えてしまいました。
コメディ要素
逆にコメディと言い切るにはコメディ度が足りない気がする。
脚本の内村宏幸さんは、お笑いコンビ「ウッチャンナンチャン」のウッチャン(内村光良さん)の従兄とのことですが、もっとお笑いに振っちゃってもよかった気もします(しんみりは最後だけで)。
また、上手く表現できないのですが、肝心の古川さんの声や演技もまわりの役者さんから少し浮いていた気もします。
両方ともうまいからこそなのでしょうし、活躍フィールドの違いもあるので仕方がないのですが、やはり声優さんは青春アドベンチャーの方があっている気はしました。
災害大国
…などと色々後ろ向きのことも書いてしまいましたが、軽く聴ける楽しい作品であることは事実。
また、今年も梅雨の時期になり、先日も松山市で市内中心部の松山城ふもとで土砂災害が発生しました。
日本の国土は災害とは切っても切り離せない。
「はるかぜ、氷をとく」の時も思ったのですが、被災者を思い、防災を考え続けることはとても大切で、このようなドラマには大きな意味があると思います。
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