1848 作:並木陽(青春アドベンチャー)
「『騎馬の民なるマジャルの王はかつて、東の果てより馬を駆り、この地にたどり着いた。羊…の群れ、え、悠然と…草を食み、荒々しき…いや猛々しき?…』 だめだめだめ!どうして私の書くものには心踊る勇壮さというものが宿らないのかしら…」
悄然としてユリシュカは筆を置いた。
羊飼いの娘を母に持ち、大平原を駆ける英雄の生涯に思いをはせる夢見がちな少女に過ぎなかったユリシュカ。
しかし、時代の荒波は近代化に立ち遅れた辺境の男爵家の少女の人生をも大きく変えていくことになる。
欧州のそして世界の歴史を変えた革命の1848年まであと少し。
ユリシュカも、そしてその兄カーロイも、まだ自らを待ち受ける運命を知らない。