舞い踊る桜の花の下、誰に顧みられずとも自分の役割を果たす。「五葉のまつり」(今村翔吾)

ドラマ化希望作品

【特集:ラジオドラマ化推薦作品23】今村翔吾「五葉のまつり」

この特集シリーズは、主にブログオーディオドラマ化されたらいいなあと思う作品を紹介していくもの。
今回は、2022年4月にアップした服部正也さんの「ルワンダ中央銀行総裁日記」からおよそ3年ぶりに新しい作品を推薦したいと思います。
紹介作品は今村翔吾さんの「五葉のまつり」。
「八本目の槍」に続く今村さんの石田三成シリーズ?の第2弾です。
「八本目の槍」がいわゆる「賤ヶ岳の七本槍」(賤ヶ岳の戦いで活躍した豊臣秀吉子飼いの7人の武将)からみた石田三成の姿を描いた作品であるのに対して、この「五葉のまつり」は豊臣政権末期を支えたいわゆる「五奉行」の視点から石田三成を描いた作品です。

嬉しい出来事

さて突然ですが先日嬉しい出来事がありました。
NHK-FM青春アドベンチャーで小川一水さんの「天涯の砦」のオーディオドラマ化が公表されたのです。
実は「天涯の砦」はこのブログを始めて間もない2012年10月にこのシリーズで紹介した作品
NHKの方がこのブログを見て選んだとは思いませんが、私が推薦した作品で初めての採用です。
それを記念して久しぶりに推薦記事を書こうと思ったのですが、さて何を紹介するか。

ジャンル「職業」

仕事で疲れた頭でふと思いついたのはやはり頑張る仕事人間を勇気づけるような作品がいいなということ。
お仕事ものなら池井戸潤さんの小説などを持ち出すのが一番だとは思うのですが、青春アドベンチャーのいつもちょっとずらした作品選択には少し合わない気がする。
というか、天邪鬼な私としてはそんな直球では選びたくない…

復活の地+ルワンダ中央銀行総裁日記+今村翔吾

そんな中「今回のきっかけは小川一水さんだったなあ」と思っていてふと思い出したのが、小川さんの作品で別に紹介している「復活の地」。

-そういえば直前は「ルワンダ中央銀行総裁日記」だったな。
昨年ぼろ鳶組が終了したけどまた今村翔吾さんの作品を聞きたいな。

と考えて「そうだ最近読んだこれが最適だ!」と思ったのが「五葉のまつり」です。

共通点

「復活の地」は架空の惑星を舞台にしたSF、「ルワンダ中央銀行総裁日誌」は戦後の世界を舞台にしたノンフェクション、「五葉のまつり」は歴史小説。
全く違うジャンルのようですが実は大きな共通点があります。
「復活の地」の主人公は震災復興に取り組む官僚、「ルワンダ中央銀行総裁日誌」の主人公は異国の地で孤軍奮闘する日銀マン、「五葉のまつり」の主人公たちは脆弱な政権を切り回す政治家。
いずれも困難な環境下で名声を残すことより人々の幸福を願った実務家たちの物語なのです。

五奉行って?

特に本作品の主人公たちは「五奉行」。
みなさん歴史の授業で習ったので五奉行という言葉自体は覚えておいでかもしれませんが、石田三成以外の五奉行の名前って言えますか?(ちなみに浅野長政、前田玄以、増田長盛、長束正家です)
個人的には試験前に暗記に苦労した覚えしかありません。
一方の五大老(徳川家康、前田利家、毛利輝元、宇喜多秀家、小早川隆景)が戦国武将としても知名度があるに対して五奉行はマイナーすぎる。
しかしこの五奉行の活躍を活写しているのが「五葉のまつり」なのです。

アドベンチャーか

作中では豊臣秀吉から無理難題を出された5人が、知恵を振り絞り当代一級の実務能力を駆使して乗り越えていきます。
秀吉も嫌がらせで難題を投げかけているわけではなく政治的な必要性があるから命じているのであり、実現がいかに困難かを分かっているからこそ、彼ら5人の能力を信じて任せているのです。
一方、5人も優秀であるがゆえに(ある時は秀吉以上に)背景を理解しています。
そのため、普段は必ずしも親しくない彼らですが、強い責任感からぶつかり合いながらも実現に邁進します。
その様はまさにアドベンチャーです。

「まつり」とは?

小説は序章を除き5章に分かれており、それぞれで描かれるのは「北野大茶会」「刀狩り」「太閤検地」「大瓜畑遊び」「醍醐の花見」であり、それぞれの章で五奉行の1人ずつがクローズアップされる構成です。
ここで気づかれた方もいらっしゃると思いますが、タイトルの「まつり」とは「祭」であると同時に「政」(まつりごと)でもあり、1・4・5章が「祭」、2・3章が「政」のニュアンスが強い章です。
ただ全体を通して豊臣時代をお祭りの時代と捉えているのかも知れませんし、これらの難題に全員で取り組んだ時代こそ五奉行のそれぞれの人生の祭りの時代(青春時代)だったのかもしれません(実際、史実では、物語の後、五奉行の人生は様々にわかれていくことになります)。
その意味で(主人公たちは中年男性ですが)青春アドベンチャーの採用作品にふさわしいと思いました。

いかんせん長い

ただ最大の問題は今村翔吾さんの作品でもかなり長い方に入ること。
単行本は633ページまであります。
さすがに15分×10回では短すぎてダイジェストになってしまいます。
各話とも「五奉行の誰かの若いころ」という導入がついて本編に入る構成ですが、やはり導入部もしっかり描いてほしい。
最低でも全15回(1章3回×5章)でしょうか。


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私やリスナーの皆さんが自信を持ってお勧めする作品たち。
小説や漫画など色々な作品があります。是非ご覧ください。

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