- 作品 : サラマンダー殲滅
- 番組 : 特集・スペース・アドベンチャー
- 格付 : A-
- 分類 : SF(宇宙)
- 初出 : 1991年6月3日~6月21日
- 回数 : 全15回(各回15分)
- 原作 : 梶尾真治
- 脚色 : 高谷信之
- 演出 : 千葉守
- 主演 : 塩田朋子
“ヤポリス・サースデイ”
それは、宇宙歴375年に、惑星条約機構の首都・惑星ヤポリスで起きた大規模テロ事件の呼び名である。
神鷹静香(こうたか・しずか)は、この事件までは普通の主婦だった、この事件で夫と娘を失うまでは。
事件の衝撃で精神に破綻を来した彼女は、治療の過程で、テロを首謀した銀河解放戦線に対する憎悪を植え込まれることでようやく精神の安定を取り戻した。
彼女の生きる目的はただひとつ。銀河解放戦線に復讐すること。
しかし、全てを犠牲にして復讐へと突き進む彼女の道程は、銀河解放戦線のみならず、彼女自身、そして世界をも崩壊させる危機を招くことになるのだった。
梶尾真治さん原作の日本SF大賞を受賞したSF小説を原作とするラジオドラマです(原作が日本SF大賞を受賞している青春アドベンチャー作品はこちら)。
本作が最初に放送された時期は番組名が「サウンド夢工房」だった時期ですが、厳密には「特集スペース・アドベンチャー」と銘打たれて放送され、サウンド夢工房の番組ではありませんでした。
しかし、実質的にサウンド夢工房の枠で放送されましたので、本ブログではその一部として紹介しています。
サウンド夢工房期のオンリーワン作品
サウンド夢工房の放送時期は1990年から1992年までの約2年間。
その前後の「アドベンチャーロード」(1984年~1990年)と「青春アドベンチャー」(1992年~現在)が長寿番組であったのと比較すると、短期間で終わってしまった番組です(詳細はこちらの記事参照)。
誤解を恐れずいえば「アドベンチャーロード」は男性のみ、それも主として青年層に的を絞った番組でしたが、「サウンド夢工房」は女性や幅広い年齢を狙った番組だったように思えます。
そのため、この時期はハードなSFや冒険ものはほとんどありませんでした。
その中でほとんど唯一といってよい例外がこの作品です。
癖の強い登場人物たち
何といってもSFですし、復讐ものです。
そして悲劇でもあります(実は、それにとどまらず、純愛ものでもあります)。
登場人物たちも、平凡な主婦であった主人公の神鷹静香は別として、静香に思いを寄せる惑星条約機構の契約軍人・夏目郁南(なつめ・いくなん)も、元銀河解放戦線のテロリストである巨大な女戦士・ドゥルガーもひと癖もふた癖もある、アクの強いキャラクターです。
もちろん敵側もア・ウンやガスマンなど強烈なキャラクターで「サウンド夢工房」という雰囲気はみじんもありません。
悲劇のヒロイン
一方、主人公の静香にはあまり強い個性が感じられず、昔、聴いたときは「ふ~ん」と聞き流していた作品でした。
しかし、長い時間をおいて聞きなおしてみると、夫と子供を失った静香の悲しみが実感を持って分かる気がしたり、当時は気持ち悪い印象の方が強かった(実際、作中で彼自身が「邪な思い」と言っていますが)夏目の思いの悲劇性に気が付いたり、色々と発見の多い作品でした。
なお、悲劇、悲劇と散々書いてしまいましたが、本作品のラストは必ずしも救いのないものではありません。
その辺は、安心して聴いていただきたいと思います。
西島大介さん想い出の作品
ちなみに「世界の終りの魔法使い」の記事でも紹介しましたが、本作品は「世界の終わりの魔法使い」の原作者である西島大介さんが昔、聞いたことがある作品だそうです。
当時同じように小さいラジオに齧りついていたかと思うと、大変僭越ながら、感慨深いものがあります。
(外部リンク)http://mag.kawade.co.jp/sekamaho/archives/2013/06/post_151.html
塩田さんの大人ぽさ
さて、出演者についてです。
主役の神鷹静香役は文学座所属の女優の塩田朋子さんが演じていらっしゃいます。
塩田さんは声優としては主に洋画の吹き替えを中心に活躍されている方のようです。
確かに聞いたことがある声のような気がします。
このようなハードな作品にあった配役だとは思いますが、24歳という静香の年齢設定にしては少し大人ぽすぎる声のような気もしました。
塩沢兼人さん熱演
そして、静香とチームを組んで銀河解放戦線と戦う、夏目、ドゥルガー、ラッツォ、グレム老人をそれぞれ、塩沢兼人さん、杉浦悦子さん、松田洋治さん、北見治一さんが演じていらっしゃいます。
塩沢さんは「機動戦士ガンダム」のマ・クベ役(機動戦士ガンダム声優の青春アドベンチャーへの出演についてはこちら)や「北斗の拳」のレイ役などで知られる名声優さんで、この時期のNHK-FMのラジオドラマには頻繁に出演されていました。
「少女探偵に明日はない」、「妖精作戦」、「マージナル」、「西遊妖猿伝」、「夏の魔術」、「顔に降りかかる雨」など神経質な美青年といった役が多かった印象です。
2000年5月に若くして亡くなられたため、珍しく主演された「オルガニスト」(1999年12月)が青春アドベンチャーにおける遺作になりました。
松田洋治さんはちょい役?
また、松田さんも「風の谷のナウシカ」のアスベル役や「もののけ姫」のアシタカ役で有名な方で、NHK-FMでも宮崎駿さん原作の「シュナの旅」で主演をされていました。
青春アドベンチャーになって以降では、「オルガニスト」で塩沢さん競演されているほか、「ふたつの剣」で主演されています。
その他の出演陣も多彩
青年座所属、杉浦さんのドゥルガーの怪演、文学座の名脇役(当時70歳!)の北見さんの演技なども聴き所です。
また、ナレーターの堀秀行さん(サハラの涙、Megなど)のほか、他の作品でも活躍されている方々、例えば、堀勝之祐さん(イカロスの誕生日、成層圏ファイターなど)、平泉成さん(ゴー・ゴー!チキンズなど)、早瀬優香子さん(五つの魔法の物語)、千葉繁さん(これは王国のかぎ、アルバイト探偵など)が脇役、というよりちょい役で出演されており、豪華な出演陣です。
また、八木光生さん、三田松五郎さん、関根信昭さん、川久保潔さんといった東京放送劇団(こちらの記事参照)の方が揃い踏みで出演されているのもこの頃が最後のような気がします。
色々と懐かしい作品です。
コメント