エイレーネーの瞳 シンドバッド23世の冒険 原作:小前亮(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : エイレーネーの瞳 シンドバッド23世の冒険
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B+
  • 分類 : 伝奇(海外)
  • 初出 : 2013年9月30日~10月11日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 小前亮
  • 脚色 : 佐藤ひろみ
  • 演出 : 木村明広
  • 主演 : 斎賀みつき

17世紀のイスタンブール。
女性ながら“シンドバッド”の称号を受け継ぐ冒険家セルマと、その弟子の少年マレクは、新しい冒険へと臨もうとしていた。
エイレーネーの瞳。
それは、ルビーとサファイアが一対になった指輪。
類まれな秘宝ではあるが、ふたつを同時に手に入れないと、国をも滅ぼすといわれている呪われた宝でもある。
そしてそれ以上にセルマにとっては、先代のシンドバット22世・アレクシオスが生涯を掛けて追い求め、そして消息を絶つに至ったという因縁の品であった。
セルマに取って今回の冒険はただの宝探しではない。
弟子であった自分に何も告げずに消息を絶った師匠の行方を捜し、過去の因縁との決着を付けるための旅でもあるのだ。



小前亮さん原作の小説をラジオドラマ化した作品です。
小前さんは、とても多くの作品が青春アドベンチャーの原作になっている(最多原作者特集はこちら)小説家・田中芳樹さんの権利管理会社である「らいとすたっふ」の方で、田中さんの勧めで小説を書き始めた方なのだそうです。
大学時代の専攻は中央アジア・イスラーム史らしいので、本作品は小前さんの専門を生かした作品だと思います。

「李世民」を読んでみた

ちなみに小前さんの処女作は「李世民」。
NHK-FMのラジオドラマで李世民といえば「西遊妖猿伝」なのですが、それはさておき、本作品が始まる前に折角なので、この「李世民」を読んでみました。
感想は…まあ、田中芳樹さんの中国ものと似たような感じですね。
登場人物がコスモポリタン過ぎるというか、日本人っぽいと言うか。
更に言うなら日本人の役者が中国人役をやっているような雰囲気というか。
昔、井上靖さん原作の「敦煌」の映画で、佐藤浩市さんや西田敏行さん、渡瀬恒彦さんなどが中国人の役をやっていたのですが、どうも落ち着かないというか、妙な違和感を感じたのを思い出します。
役者さんとしては皆さん大好きなんですけどね。

中東風ファンタジー

さて、「李世民」の話はこれくらいにして本作品の紹介に戻ります。
本作品の舞台は中世のイスタンブール。
中東又は中東風の世界を舞台とした青春アドベンチャー作品としては、「これは王国のかぎ」、「サマルカンド年代記」に次いで3作品目でしょうか。
「これは王国のかぎ」は完全な創作の世界、「サマルカンド年代記」は現実の歴史に基づいた作品でしたが、本作品は現実の歴史を下敷きにしつつ超常的な事柄も取り込んでおり、両作品の中間のような舞台設定です。
そのため、ジャンルは一応、「伝奇」としましたが、ランプの魔神や空飛ぶ絨毯、ミノタウロスなどが登場し、かなりファンタジー寄りの作品です。

舞台設定が生かされているか

細かい点を見ると、東ローマ帝国の残党が出てきたり、先代のシンドバッドがギリシア人だったり、歴史時代的な背景を取り込もうとする作者の意向は感じます。
しかし、先代アレクシオスがギリシャ人だったことが、特に伏線として生きてくるわけでもなく、結局はセルマが颯爽と活躍するだけのストーリーになっており、少なくともこのラジオドラマを聴いている限りでは、かなり子供向きの冒険物語だと感じました。
終盤、アレクシオスの冒険時のエピソードがでてくるあたりでは、自分の限界を知ったアレクシオスの諦観や、弟子たちを見守る視線など、大人っぽい雰囲気も感じられただけにちょっと残念でした。

斎賀みつきさん主演

出演は、主人公のシンドバッド23世こと、男装の麗人セルマの役を声優の斎賀みつきさんが演じています。
少年・青年役に声をあてることが多い方だそうですが、いかにもそれっぽい雰囲気の声ですね。
そしてセルマとチームを組んで宝を探す、弟子のマレク、情報屋のエンヴェル、ランプの魔神シャムリッシュを演じるのは、小林沙苗さん、斎藤せつじさん、櫻井章喜さんのお三方。
本作品はセルマとマレクが主役格ですが、この二人を、アニメに出演が多い専業声優さんが演じおり、青春アドベンチャーでは比較的少ないパターンの作品です。

サウザー?

ちなみに少年マレクはセルマに「お師さん」(おしさん)と呼びかけるのですが、「お師さん」といえばどうしても「北斗の拳」のサウザーを思い出してしまう…というと世代がわかってしまいますね。
全然違うキャラクターですし、声も全然違うのですけど、「お師さん」って普段は使わないので、何となく思い出してしまいました。

佐藤ひろみさんの脚色

一方、話をスタッフに移しますと、まず脚色をされたのは、青春アドベンチャーでは「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズで有名な佐藤ひとみさん。
正直、他の作品ではあまり気にならなかったのですが、この作品ではナレーションがかなり多い気がして、少し違和感を感じてしまいました。

アクションものはナレーションは控えめに

同じ佐藤さん脚色の「ピエタ」はナレーションが多い印象があまりないですし、おいコーシリーズもナレーションが多いものの主人公・ショーリのモノローグなのであまり気にならなかったのですけどね。
妖精作戦」の記事でも書きましたが、個人的にはラジオドラマ、特にアクションシーンが多い作品ではナレーションは最低限に抑えて欲しいと思っています。
移動都市」などでも感じたのですが、「○○は刀を振りかぶった!」みたいなナレーションは要らない気がしてなりません。
もちろんベテランの脚本家さんが十分に考えてのことなので、素人が口を出すことではないとは思いますが。



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