- 作品 : 夢の木
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : A-
- 分類 : 幻想(日本/ライト)
- 初出 : 1993年4月5日~4月16日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 木根尚登
- 脚色 : 岡本螢
- 演出 : 千葉守
- 主演 : 玉置篤規
小諸市立第三中学校の寛一、悦子、猛の3人組が神沼にやってきたのは、修学旅行の夜の怪談が沼の話に及んだときに、担任の島崎先生がなぜか不自然に口ごもったからだ。
何か秘密が隠されていると感じた3人は、怪談話の延長という軽い気持ちでやってきたのだが、岸部の大きな木の元で実際に不思議な出来事を体験してしまう。
しかもそれ以降、普段から3人の身の回りで少しずつ不思議なことが起きるようになってしまった。
心配した3人は、原因を探るために新月の夜に再び大木のもとに向かうのだが…
TM NETWORKのギタリスト木根直登さんが執筆した3作目の小説「夢の木」を原作とするラジオドラマです。
木根尚登さん原作作品群
NHK-FMにおける木根さん原作作品は、1991年1月の「キャロル」(全2回)に始まり、同年4月に「サウンド夢工房」で放送された「ユンカース・カム・ヒア」と8月に放送された「ユンカース・カム・ヒア2」、1993年に青春アドベンチャーで放送された本作品と「武蔵野蹴球団」と、集中してラジオドラマ化されました。
このブログではすでに青春アドベンチャーでラジオドラマ化された「P」を紹介済みです。
舞台は信州小諸
それにしても木根さんはなぜ長野県小諸市を舞台にしたのでしょうか。
本作品の時代設定は1973年であり、概ね1957年生まれの木根さんの少年時代に合わせた時代設定になっています。
しかし、木根さんは東京都立川市のご出身のハズですので、子供時代に過ごした土地を舞台にしたわけでもないようです。
私などは小山田いくさんの漫画「すくらっぷ・ブック」の影響で、小諸というだけで特別な印象があるのですが、まさかそんな理由でもないでしょう。
島崎藤村リスペクト?
一つ考えられるのは、小説家・島崎藤村の影響です。
小諸は藤村のゆかりの地でもあります。
具体的には、藤村は代表作「破戒」を書く少し前の時期に英語教師として小諸に赴任しており、「小諸なる古城のほとり」は後に歌曲の詩として大変に有名になりました。
この「夢の木」の先生が「島崎先生」であることから考えるとこっちが本命かもしれませんね。
日常ファンタジー
さて、本作品、冒頭の紹介のとおり、中学生3人組が、ある木のもとで不思議な体験をするのですが、このように書くと最近の青春アドベンチャーに多い「日常生活にちょっと不思議な要素が混じる」系の作品と思われるかもしれません。
しかし、第2話の最後で話は急展開。
何と舞台は英仏百年戦争の時代(すなわちジャンヌ・ダルクの時代)へ。
「これはタイムトラベルものなのか?」と思う間もなく、第4話以降も1話ごとに舞台は大きく変わっていきます。
この様々な舞台も(ネタバレを避けるため詳細説明は省略しますが)なかなかバリエーションに富んでおり楽しめる作品でした、
岡本螢さんらしい
また、舞台はいったいどこなのか?
現実世界の原沢教頭が役どころを変えて随所に現れるあたり(このパターンは「二分間の冒険」にもありましたね)で、何となく想像はできるのですが、ただ単に「不思議な世界」で終わらせず、最後はユング的な説明まで持ちだしてきれいに着地させるあたりも、なかなか好感が持てます。
全般的に子供だましのファンタジーものといえばそれまでですが、島崎先生の過去が絡む世界あたりから意外と大人っぽい話にもなり、大人の鑑賞にも耐える作品だと思います。
この辺、脚本家の岡本螢さんの本領発揮と言ったところでしょうか。
中学生3人組+宮川一朗太さん
さて、メインの出演者は、主役である寛一を演じる玉置篤規さんと、ヒロインの悦子を演じる皆口裕子さん、そして猛を演じる藤田一夫の3人。
この中学生役3人に、島崎先生を演じるNHK-FMではおなじみの宮川一朗太さんを併せた4人がメインキャストになります。
意外とアニメ声優色が強い
3人組のうち玉置さんと藤田さんは恐らく子役の方なのではないかと思いますが、「夢源氏剣祭文」や「14歳のエンゲージ」にも出演されている皆口さんはアニメ「YAWARA!」に主演された歴とした声優さん。
このほか終盤で冬馬由美さん(世界でたったひとりの子、魔弾の射手)や永井一郎さん(不思議屋シリーズ、夏の魔術)なども登場し、意外とアニメ色の濃い配役でもあります。
長谷さん…
ちなみに私は気づかなかったのですが、NHKクロニクルを拝見すると「妖精作戦」で主演された長谷有洋さんも出演しているようです。
長谷さんが亡くなられたのは本作品放送から約3年後の31歳の時。
悲しい話ですね。
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