吸血鬼 原作:江戸川乱歩(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 吸血鬼
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A+
  • 分類 : 推理
  • 初出 : 2015年4月27日~5月8日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 江戸川乱歩
  • 脚色 : 成田匡希
  • 演出 : 江澤俊彦
  • 主演 : 篠井英介

昭和初期、ふたりの男がひとりの女を巡って決闘をした。
敗れた男は強い恨みを飲んで立ち去り、翌日、がけ下で顔がぐちゃぐちゃになった死体として発見された。
しかし、それからである。
決闘の目的となった女、巨額の資産を相続した若き美貌の未亡人・畑柳倭文子の周りに、奇怪な姿の男が現れるようになったのは。
自殺したとされた男、岡田道彦は、実は生きているのではないか。
疑心暗鬼が募る中、奇怪な男は、次々と世にも恐ろしい犯罪を実行し始める。
名探偵・明智小五郎は彼の犯罪を止めることができるのか。
奇怪な男の正体とは。




江戸川乱歩さんの名探偵明智小五郎のシリーズの一作をラジオドラマ化した作品です。
NHKラジオで明智小五郎役といえば故・広川太一郎さんですが、青春アドベンチャーでは近年、篠井英介さんを明智小五郎に据えてシリーズ展開をしています。
本作品は、「黒蜥蜴」(2009年)、「黄金仮面」(2010年)、「魔術師」(2012年)に続いたこのシリーズの第4弾です。
このシリーズも青春アドベンチャーを代表するシリーズになってきました。

陰惨な展開

さて、明智小五郎といえば、少年向けの少年探偵団シリーズ(「魔人復活 青銅の魔人」など)にも登場しますが、このシリーズは猟奇的で耽美的な大人向けのシリーズに属する作品です。
特に本作品は4作の中でも屈指の陰惨さで、「黄金仮面」で見られたような爽快さはひとかけらもありません。
「石膏の像の中に人間の○○が…」とか「生きたまま棺桶に入れられて火葬場へ…」など、いかにも江戸川乱歩さんらしい猟奇的な展開です。
おまけに例によって明智は後手後手に回り、前半はほぼ犯人の後追いに終わります。
この辺、完全に「推理もの」というより「探偵もの」の展開ですが、終盤になって一応謎解きの場面もありますので、推理はとても本格的なものとは言えませんが、一応、本ブログでのジャンルは「推理」としました。

感情的な明智

さて、先ほど述べたとおり名探偵明智小五郎を演じるのは篠井英介さん。
中性的で感情的な独特の明智像ですが、すっかり慣れたというか、このような陰惨なシリーズにはとても良くあっています(ほめています)。

明智ファミリー集合

また、前作「魔術師」で初登場した、後の明智夫人である文代さん(本作時点ではまだ単なる?助手)は前作に引き続き粟田麗さんが演じられています。
そして本作では明智の助手として有名な小林芳雄(いわゆる「小林少年」)が上村祐翔さんの演技で初登場しており、いよいよ明智ファミリーが勢ぞろいしたことになります。

正蔵というよりこぶ平?

そして、本作品のキャストで特筆すべきは、「語り」(ナレーション)を担当した林家正蔵さんでしょう。
昔の林家こぶ平さん、といった方がよくわかる人もまだ多いと思います。
ちなみに弟の2代目林家三平さんは、林家いっ平と名乗っていた1999年に「しゃべれどもしゃべれども」で青春アドベンチャー出演を果たしており、これで兄弟そろって青春アドベンチャーへ出演されたことになります。
それにしてもこのご兄弟、名前逆だった方が良かったのではないかと思うのは素人の浅はかさでしょうか。

序盤、微妙にたどたどしいが…

ところで、林家正蔵さんは、こぶ平時代にアニメ「タッチ」の松平という主要キャストで声優をしていた経験もあり、ナレーションも手慣れたもの…といいたいところなのですが…
はっきり言って序盤、特に1話目などは、噛んじゃう寸前のたどたどしさが垣間見えています。
確かに少し古めかしいセリフですし、テンポをよくするために早口にせざるを得ないこともあり難しいとは思うのですが…
ただ、その後は固さが取れたのかなりリズムが良くなります。
良くなってみるとさすがに雰囲気のある語り口です。
本作品の舞台は昭和初期ですので、その雰囲気を如何にだすかが重要だと思いますが、おどろおどろしめの音楽とともに、正蔵さんの語りは確かに作品にあっており、これまでの4作で一番雰囲気が出ている作品だと思います。

ドラキュラじゃありません

ところで本作品は「吸血鬼」というタイトルですが、これは、本作品で犯人が被害者をいたぶるように執拗に追い詰めていくさまを、被害者を少しずつ弱らせていく「吸血鬼」に例えてのタイトルです。
終盤になって正体を暴かれるや、その変質的な性格をあらわにする*田*明*さん(ネタバレ防止のため涙をのんで伏字)の演技もなかなかのききどころですが、なにはともあれ本作品にはモンスターであるヴァンパイアは登場しません。

リアル吸血鬼はこちら

青春アドベンチャーにはブラム・ストーカーの本家「吸血鬼ドラキュラ」や、SF風に味付けした柴田よしきさんの「レッド・レイン」などのヴァンパイアものもありますので、ヴァンパイアものをご所望の方はそちらをお聞きください。
あと、漫画ですが、機会がありましたら小室孝太郎さんの「ワースト」も是非(どちらかといえばゾンビものですが)。
それにしても「吸血鬼」だけだとわかりづらいですよね。
90年代の青春アドベンチャーだったら「江戸川乱歩の吸血鬼」という形で「原作者名+原作名」という形の作品名にしたかもしれませんね。

【篠井版・明智小五郎シリーズ】

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