超能力はワインの香り 原作:藤井青銅(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 超能力はワインの香り
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A
  • 分類 : SF(日本)
  • 初出 : 1992年7月20日~7月31日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 藤井青銅
  • 脚色 : 藤井青銅
  • 演出 : 佐藤譲
  • 主演 : 坂上かおり

旭ヶ丘西高校1年の赤坂紫(あかさか・ゆかり)はアルコールで酔っぱらうと超能力を発揮するという、不謹慎で、法律違反で、教育上好ましくなく、ファジーで、掟破りで、行き当たりばったりな超能力者だ。
「少年タイタニック」という常識を疑うネーミングの漫画雑誌で漫画原作を書いている父親と、ふたりで明るい父子家庭を築いている。
紫自身は超能力などには全く興味がなく、普通の学園生活を送って、普通に恋をして、普通にお嫁さんにいくことが目標だ。
しかし、そんな紫の周りはどこかおかしい人ばかり。
「超能力戦士・アボガドロマン」、「明朗少年温泉漫画・流し場さんちゃん」、「ゲートボールにかける虹」などという珍妙な漫画ばかりをつくっている父親、その父親と昼間から酒ばかり飲んでいる担当編集者の滑川、ところ構わず短歌で自分の気持ちを歌いだす母親(両親の離婚による生別)、エリート新聞記者のはずなのに超能力戦士・アボガドロマンを愛読する隆一郎、物理や化学に妙なプライドを持つ物理部員や化学者たち…
当然、紫のまわりでは、次々とおかしな事件が起こってしまうのだ。



藤井青銅さん特集は(取りあえず)今回で最終回です。
藤井さんは青春アドベンチャー向きに多くの作品を書きおろしていますが、本作は藤井さんが自身の原作小説を自ら脚本化した作品です。
同様の企画としては「サウンド夢工房」時代にラジオドラマ化された「愛と青春のサンバイマン」があります。

スラップスティックSF

さて、本作品は超能力が話のキーになっているので「SF系」に分類していますが特別に小難しい理屈や思想があるわけではなく、突然エスパーになってしまった女子高生が様々な事件に巻き込まれるドタバタ劇であり、古典的・典型的なライトSFだと思います。
原作者自身によるラジオドラマ化なので、いくつもの小さいエピソードが無理なく盛り込まれています(最後は少し駆け足ですが)。

酔っ払いふたりが最高

もちろん藤井さんの作品なので、全編コミカルな味付けです。
特に楽しいのは、父親と滑川(この漢字で正しいかは不明)の酔っぱらいふたりのしょうもない会話。
父親役の屋良有作さんと、滑川役の亀山助清さんの快演(怪演?)のお蔭で、グダグダ感満載の素晴らしいシーンになっています。

主役の紫にも好感が持てる

主役の紫役の坂上かおり(坂上香織)さんも軽快に演じており、父子家庭ながら真っ直ぐな心とさばけた性格を持った紫にとても好感が持てます。
ちなみにこの「坂上香織」さん、もともとはアイドル歌手として有名だった方ですが、1991年に「坂上かおり」に芸名を変更。
結局、1993年にはもとの「坂上香織」に戻したうえで「週刊プレイボーイ」にヌードを掲載するなどし、本格的に女優に転身していくことになります。
つまり、本作品は坂上さんが路線変更を模索していた「坂上かおり」期の貴重な作品であったということになります。

超高校生級

総括すると、本作品は、全般的にストレスなく気軽に聞ける楽しい作品です。
是非、深く考えずに楽しく聞いていただきたいのですが、それにしても、個人的には作品中にあだ名しか登場しない「超高校生級の物理部員、通称、黒潮のドップラー」という高校生がどんな人物かが気になって仕方がありません…
現実世界でも高校生を対象にした「国際物理オリンピック」にような行事もありますので、案外、このようなあだ名の高校生は実在するのかもしれませんね。

【藤井青銅原作・脚本・脚色の他の作品】
青春アドベンチャーの長い歴史において、最も多くの脚本と最も多くの笑いを提供しているのが脚本家・藤井青銅さんです。
こちらに藤井青銅さん関連作の一覧を作成していますので、是非、ご覧ください。

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