ファイティング40、ママはチャンピオン 原作:鈴木一功(FMシアター)

格付:A
  • 作品 : ファイティング40、ママはチャンピオン
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : A
  • 分類 : スポーツ
  • 初出 : 2016年10月29日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 原作 : 鈴木一功
  • 脚色 : 藤井青銅
  • 音楽 : 四ツ辻イチゴ
  • 演出 : 真銅健嗣
  • 主演 : 佐藤B作

きっかけはママがボクの学校のPTA会長になったことだったんだ。
「プリティ(P)でタフな(T)あたしたち(A)」で知り合ったお母さんたちとボクシングジムに通うことになったママは、突然こう言い出したんだ。
「見つけたわ! これが私の道!」
七宝焼き、フラメンコ、コモンジョ(ってなんだ?)…
パパとふたりで、「またいつもどおりにすぐに飽きるさ」と言っていたんだけど、今回はちょっと違うみたい。
そのうちボクシングジムの会長さんまでうちにやってきて言い出したんだ。
「奥さまは100年に一人のイツザイです!」
「イツザイ」ってなんだ?



本ラジオドラマ「ファイティング40、ママはチャンピオン」は、俳優・鈴木一功さんが書かれた同名の小説をラジオドラマ化した作品で、FMシアターでは珍しく原作小説がある作品です。

実在のモデルあり

主役の「正和」を演じたのは俳優の佐藤B作さん、ママの「佳代子」を演じたのは女優(というより声優として有名な)の朴璐美(ぱく・ろみ)さんです。
原作小説における正和と佳代子は、鈴木一功さんご自身とその妻で女優の松坂わかこさんをモデルにしているらしいのですが、実はこのおふたりとも、このラジオドラマに別人の役で出演されています。
特に、鈴木一功さんは「河童屋」という結構出番の多い役です、

小説版からの設定変更

さて、さきほど「モデルにした」と書きましたが、松坂さんは単に性格造形においてモデルとなっただけではなく、実際にボクシングをやっているのだそうです。
ただ、松坂さんは女優としてボクサーの役を演じるために始めたそうで、原作小説はこの動機そのままの設定で描かれているそうですが、このラジオドラマ版では妻・佳代子が女優であるという設定はなく、彼女はボクササイズを目的としてボクシングを始めます。

50分に収める工夫

FMシアターは小説一冊を丸ごとラジオドラマにするにはかなり窮屈な50分枠の番組であり、例えば「レインツリーの国」などもかなり場面を整理したシンプルな構成に変更されていました。
本作品の原作小説も139ページありますので、脚本家・藤井青銅さんが色々と工夫をした結果の一つが、この設定変更なのだと思います。
ただ、藤井青銅さんは、「ボクササイズ目的で始める」という緩い設定にすることによって、敢えてコメディ色を強めたような気もします。
原作に「ヨーグルト納豆」は出てくるのかな?

主演は佐藤B作さん

さて、この記事の冒頭では、息子の「真一」(演:山崎智史さん)目線で作品内容を紹介したのですが、ラジオドラマ自体は夫の正和目線で展開します。
本来は佳代子が主役なのかも知れませんが、敢えて佐藤B作さんのモノローグで全体を構成することにより、何となく柔らかい雰囲気の作品になっています。

朴璐美さんのおばさん役

また、佳代子を演じる朴璐美さんも、青春アドベンチャーでの「太陽の簒奪者」、「レディ・パイレーツ」などの凜々しいイメージが強いのですが、本作品ではいい感じのおばさんぶりを発揮しています。
思えば、1999年(当時27歳)「∀ガンダム」の主人公ロアン・セアック役や2003年(当時31歳)「鋼の錬金術師」の主人公エドワード・エルリック役でブレイクした朴さんも、もう44歳。
母親役が似合うはずです。
ただ、朴さんの本領はやはり「強い女」(あるいは男)。
ボクシングに取り組むファイティング40は朴さんにぴったりの役でしょう。

意外と少ないボクシングもの

そういえばこのボクシング、ラジオドラマでありそうでなかなかない題材です。
FMシアターでの採用例はよくわからないのですが、よりエンターテイメント色の強い「青春アドベンチャー」ですらボクシングを題材にした作品はありません。
プロレス(「1985年のクラッシュ・ギャルズ」、「ハリーとアキラ」)やキックボクシング(「闘う女。」)はあるのですけどね。

ボクシングの演技

本作品のボクシングシーンは、正直言って「ウォー」というセリフや「フッフッ」という息づかい、それにバンバンというパンチの音などが目立つばかりで、あまり工夫が凝らされているようには感じないのですが、それなりに迫力があるシーンになっているのは、朴さんとクリスティーン・ライカを演じたリン・ホブディさんの好演があってこそでしょう。
それにこの作品、「ファイティング40」(佳代子40歳の1年間の情熱の向け先)がボクシングであっただけで、勝負の内容や結果自体が大きな意味がある作品ではありませんしね。

【藤井青銅原作・脚本・脚色の他の作品】
青春アドベンチャーの長い歴史において、最も多くの脚本と最も多くの笑いを提供しているのが脚本家・藤井青銅さんです。こちらに藤井青銅さん関連作の一覧を作成していますので、是非、ご覧ください。


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