髑髏城の花嫁 原作:田中芳樹(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 髑髏城の花嫁
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A
  • 分類 : 幻想(海外)
  • 初出 : 2013年1月21日~2月1日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 田中芳樹
  • 脚色 : 小林克彰
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 大内厚雄

19世紀の英国。
大手貸本屋である「ミューザー良書倶楽部」に勤めるエドモンド・ニーダムは、姪のメープル・コンウェイと共に社長から新しい仕事を任される。
代替わりしたばかりのフェアファクス伯爵家が、教養ある貴族の屋敷に相応しい図書館をつくることをミューザー良書倶楽部に依頼してきたというのだ。
緊張しつつ伯爵邸に赴くニーダムとメープル。
しかし、ニーダムは代替わりしたばかりのフェアファクス伯爵が旧知の人物であることを知り驚く。
ニーダムがクリミア戦争に出征していた時に、「クリミアの天使」ナイチンゲールに依頼され、戦友であるラットとともに髑髏城(どくろじょう)という奇怪な城に送り届けた病身のライオネル・クレアモント少尉がフェアファクス伯爵その人だったのだ。
これが切っ掛けとなりニーダムとメープルは伯爵の一族を巡る奇怪な冒険に巻き込まれていく。



ヴィクトリア朝怪奇冒険譚・第2弾

田中芳樹さん原作の「ヴィクトリア朝怪奇冒険譚」シリーズの一作であり、2012年に放送された「月蝕島の魔物」の続編です。
続編とはいっても「月蝕島の魔物」とは別の事件の話であり、主役二人(ニーダムとメープル)とミューザーの社長以外の登場人物は全員初登場のため、単独でも楽しめる作品になっています。
ちなみに田中芳樹さんは青春アドベンチャー系列の番組でたくさんの作品が原作として採用されている代表的な原作者さんです(原作者のベストテンについてはこちらの記事を参照して下さい)。

前作と比較すると…

個人的には前作の「月蝕島の魔物」がイマイチ楽しめなかったので、放送前から本作のできが気がかりだったのですが、前作よりは随分と楽しめた作品でした。
田中芳樹さん原作の青春アドベンチャーの中では「カルパチア綺想曲」と「夏の魔術」には及ばないものの、「窓辺には夜の歌」と「月蝕島の魔物」よりは気に入った作品です。
このシリーズ、「怪奇冒険譚」の名のとおり超常的な魔物がでてくるストーリーです。
前作は終盤に正体不明の前衛的な魔物が突然出てくるというびっくりな展開でしたが、本作の魔物は、ある種、伝統的な魔物であり、古い因習の残る欧州の辺境という物語の背景と上手くマッチしており不自然さはありません。
本作でも最後の方で怪物が大挙出てきてハチャメチャになりかけましたが、ニーダムとメープル、そしてウィッチャー警部がなかなか果敢に対処して、事件はそれなりにきちんとした結末を迎えます(とはいえ、泣けば許されるというのもどうかとは思いますが)。
その他、エピローグもなかなか気持ちの良いもので、締まったエンディングでした。

同じ傾向の作品

ちなみに「欧州の辺境」という意味で、本作は全体的に「カルパチア綺想曲」と同じ雰囲気もあります。
しかし、「カルパチア綺想曲」が主人公達が辺境まで出向いていく話であるのに対し、本作はあくまで英国内の話です。
また、「カルパチア綺想曲」が基本的には超常的な力が出てこない話であるのに対して、本作はあくまで超常的な要素が強い話です。
どちらが好きかは個人の趣味の問題かも知れません。

メープルが魅力的に

主役はニーダムとメープルのふたりで前作と変わりはありません。
特にメープルは前作では優等生的な言動に終始していましたが、今回はライバル?に対して感情的になる部分が多々あり、前作よりも好印象です。
また、前作はディケンズやアンデルセンと言った実在の人物が登場する場面が多すぎる印象でした。
本作でもフローレンス・ナイチンゲールやウィッチャー警部などの実在の人物が登場しますが、出番は前作よりも抑え気味であり、適度だと感じました。
このシリーズの原作は3部作だそうですが、前作を聞いたときには正直言って、続編はいらないかなとも思いました。
しかし、この2作目のレベルだったら次回作も歓迎です(偉そうですみません…といっていたら後日「水晶宮の死神」が制作されました)。

中川晃教さんに注目

主役コンビであるニーダムとメープルを演じるのは前作と同じ大内厚雄さんと石川由依さん。
演じる側も、そして聞いている私もすっかりふたりになれたからか、ぴったりの役だと感じました。
特に石川さんのメープルは文句なしに可愛い。
ピエタ」や「蒲生邸事件」の女の子達もそうでしたが、言葉遣いが丁寧なのも好印象です。
石川さんは2011年放送の「砂漠の歌姫」でも主演されていました。
その他、いかにもくせ者親父っぽいマイケル・ラット役の粟野史浩さん、神経質でエキセントリックなクレアモント少尉役の中川晃教さん、「姐さん」の呼び方がぴったりなナイチンゲール役の池田有希子さんも、なかなか雰囲気にあった役だったと思います。
特に中川晃教さんはミュージカルでも有名な歌手の方ですが、「1492年のマリア」に引き続き本作品でも好演。
この後、「また、桜の国で」、「ハプスブルクの宝剣」と大作に出演することになります。


【田中芳樹原作・原案の他の作品】

※VHA=ヴィクトリア朝怪奇冒険譚


【パクス・ブリタニカの時代を舞台にした作品】
大英帝国の最盛期である19世紀から20世紀初頭にかけてのイギリスを舞台にした作品を整理しました。
ヴィクトリア朝から第1次世界大戦の勃発するジョージ5世時代まで。
あの作品とこの作品の設定年代の順番は?こちらをご覧ください。


コメント

タイトルとURLをコピーしました