嘘と餃子と設計図 作:今井雅子(FMシアター)

格付:A
  • 作品 : 嘘と餃子と設計図
  • 番組 : FMシアター
  • 格付 : 職業
  • 分類 : A-
  • 初出 : 2022年4月23日
  • 回数 : 全1回(50分)
  • 作  : 今井雅子
  • 音楽 : 菅野由弘
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 野々すみ花

念願かなってハウスメーカーで設計の仕事に就いた私。
でも、うどんのトッピング感覚でプラン変更を要求してくる見込み客のわがままに振り回されて疲れ果ててしまった。
しかも、私の都合などお構いなしに電話を掛けてくる母親の相手で疲れは倍増。
なんでも疲れて弱気になった父が家業の餃子屋をたたむと言っているとか。
もともと跡取り娘だった母にとって60そこそこで店を閉めるなんて想定外。お父さんを元気づけないといけないと偉い剣幕だ。
どうでもいいと思いつつ、跡継ぎを断った負い目のある私は仕方なく母の話に付き合っていたが、話しているうちに父を再起させるための、ある作戦に巻き込まれてしまった。



本作品「嘘と餃子と設計図」は脚本家・今井雅子さんのオリジナルシナリオによるオーディオドラマです。
制作はNHKの本局ですが、今井さんが大阪府堺市出身だからか基本的に関西弁で展開される作品。
そういえば主要キャストのうち、野々すみ花さんと山西惇さんが京都府出身。
その他、みやなおこさんと原田樹里さんが大阪府、上口耕平さんが和歌山県出身と関西出身者でキャストが固められています。

家族もの?いやいや…

さて、冒頭の粗筋紹介を読んでどのような作品だと思われましたか?
家族の関係性をテーマにした、いわゆる家族ものだと思いませんでしたか?
実はその要素も強く家族ものに分類しても違和感は全くないのですが、本ブログではあえて職業ものに分類してみました。

お仕事要素

というのも、主人公・南海子(なみこ)の仕事上での苦労から始まって、仕事への新しい向き合い方で終わる全体的な構成もそうですし、途中挟まる父(こうすけ)の餃子屋への思い、同級生の不動産屋・富岡の街づくりへの熱意などから、仕事ものに分類する価値があると思ったからです。
家族もの特有のジメジメした感情の発露が押さえ目で、仕事に着地する気持ちの良い結末を迎えることも理由でした。
まあ関西モノだからかコテコテのファミリーコメディ的な要素はあるのですけどね(コメディ要素は爆笑まではもうひと頑張りという感じでした)。

再開発

また、本作品は街の活性化や再開発という経済活動をストーリー展開の小道具として使っており、それをポジティブに捉えている点もジャンルを職業にした理由のひとつです。
本作品は本格的に再開発を扱っている訳ではないので、ここからは盛大な脱線になりますので、ご興味のない方は飛ばしてください。


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ステロタイプ

そのそもこのようなフィクションにおいて再開発というものはとかく悪役にされがちだと思います。
「街やコミュニティーを破壊する」とか「弱者が終の棲家を追われる」的なステロタイプな描き方。
確かにそういった一面もありますし、今の日本において現実の再開発事業はあまりにもデベロッパー主導になり過ぎているとは思います。
ただ、現場を見てみると街の将来を考えている人達は確かに存在しますし、再生する手法としてもっと積極的に評価されてもいいはずです。
大体、ノルタルジーに浸って衰退を傍観していても何も始まらないじゃないですか。
その面では脚本家さんにもう少し取材を頑張って頂きたいなあと思うことも多いです(「不思議屋不動産」など不動産業を全然わかっていない作品が多かった)。

容積率アップ

それでは、本作品のディテールはどうかというと…
まず容積率が400%というのは良いとして、容積アップが+200%というあたりは、資金に余裕がない権利者も含めて合意を取っていくためにはもう少し上乗せが欲しい気がします。
+200%に留まるのは駅近とはいえ結構、郊外部なのかもしれません。

地価水準

一方、地価は路線価が坪330万で再開発だから1.5倍くらい出せると言っていますが、路線価(一般的には相続税路線価を言うことが多い)が公示価格の80%ですので、実際には時価の1.2倍くらいでしょうか。
それでも最近の工事費高騰で事業性が厳しい再開発事情を前提とすれば結構頑張った提示だと思います。
いずれにしろ提示額は20坪で1億円ですので、坪500万・㎡150万。
1種当たり(デベロッパーが良く使う表現で容積率100%あたり)も坪125万ですので、今の建築工事費を考えるとマンションの販売価格に換算すると税込みで坪300万円台前半(ファミリータイプで総額6500~7000万円くらい)かな。

リアリティはあるか

非東京圏の郊外で駅からもちょっとあると考えると…どうでしょう、若干高いかな。
まあこの餃子屋さんが地区内でもよい立地で地区平均の地価はもっと安いと考えると一応リアリティはありそうです。
その他、再開発の実現には結局デベロッパーを動かさないといけないこと、地区の中心となる熱意となる人が必要なことなどは、悪くない展開だと思いました。
ただ、郊外部だと採算性確保のため分譲マンションで容積を使うことが必須だと思いますので、地元の熱心な商業者や地元自治体が望む姿と現実の施設計画が一致するかな?
この辺は地元の熱意とコンサルタントの腕の見せ所かもしれません。


…以上、脱線はここまでにします。
改めて書きますが本作品は本格的な再開発がスタートする前段階が舞台ですので上記の分析に全く意味はありません。
私の悪乗りです。ご容赦ください。

出演者紹介

さて、主人公の南海子を演じたのは元宝塚トップ娘役の野々すみ花さん。
NHK-FMでは、青春アドベンチャーの歴史ものでの女王様・お嬢様役(帝冠の恋ハプスブルクの宝剣レディ・トラベラー1920軽業師タチアナと大帝の娘など)の印象が強いのですが、実は最初の出演作は現代日本を舞台にした「雨にもまけず粗茶一服」でした。
声に特徴があり聴いているとすぐに野々さんだとわかるので、こういった日常舞台でもとても印象的です。
また、父(こうへい)を演じた山西惇さんも昔からのNHK-FMのラジオドラマの常連。
実は1980年代の「FMアドベンチャー」の時代から出演しており、以前、Twitterでやり取りさせていただいた折には川口泰典さん(演出)のことを懐かしく話されていました。
ウブヒメ」の渡辺いっけいさんなどもそうですが、経験を積まれてまた戻ってきていただけるのは嬉しいことですね。

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