時めがね金沢うた絵巻 作:まきりか(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 時めがね金沢うた絵巻
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : タイムトラベル
  • 初出 : 2020年1月6日~1月17日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : まきりか
  • 音楽 : まきりか
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 内藤大希

僕の名前は坂上涼太。
金沢未来大学でVRの研究をする大学3年生。
生まれも育ちも横浜だけど、この分野の第一人者である深美教授に学ぶために金沢にやってきた。
好き好んで金沢に来た割には金沢の歴史を全然知らない、友人の美術学生・綾野さんにはよく言われるけど、最近はそうでもない。
教授に命じられて江戸時代初期の金沢の街をVRで再現するように言われ、そのためにすごく金沢の勉強をしているのだ。
でも本当は教授に言われたからではなく、綾野さんの生まれ育ったこの街のことを知りたかったからなのだけど。
そうして誕生した江戸時代の金沢を疑似体験できるVRゴーグル。
しかしその試用中に事件は起きた。
気を失って目が覚めると、そこは江戸時代の金沢だったのだ。


FM放送の特徴といえば、AM放送よりも音が良いこと。
その特徴を生かし、NHK-FMのラジオドラマでは昔から音楽を重視したラジオドラマがたくさん作られてきました。
当ブログでも、特に音楽にかかわりの深い作品を集めた特集記事も書いています。
ただ、登場人物たちが歌いだしちゃうミュージカル調の作品は意外と少なく、近年の青春アドベンチャーでがっつり歌が入った作品は2016年の「走れ歌鉄!」くらいでしょうか。
そういった数少ないラインナップに新しく加わったのがこの「時めがね金沢うた絵巻」です。

脚本家=音楽担当

しかも本作品は、脚本と音楽を同一人物(まきりかさん)が担当するという、青春アドベンチャーでは例のない試み。
本作品を演出されたのは近年ミュージカル俳優を多用している藤井靖さんです。
いずれ青春アドベンチャーでミュージカル的な作品をつくりたいとの藤井さんの発言を拝見した記憶があるのですが、井上芳雄さんや中川晃教さんのような有名ミュージカル俳優が出演している作品ではなく、本作品のようなローカル色が強い作品でそれを実現させたのは少し意外でした。

やっぱり最初は恥ずかしい

さて、正直、こういったミュージカル風の作品はどうしても聞く人を選びます。
本作品もまず一番最初のテーマ曲からいかにも、というミュージカル風。
そして、そのあとの本編最初の歌、主人公・涼太とその思い人の綾野さんの掛け合いの歌を聞いた瞬間、正直、ちょっとゾワッとしました。
やっぱりミュージカル慣れしていない身としては、聴いていて照れてしまいます。
「走れ歌鉄!」ではあまり感じなかったのですが、あれは登場人物が子供だったからなのかな。
その後も各回ごとに数曲ずつ歌が披露されます。
こりゃ作るの大変だろうなと思いつつ聴いているうちに、前半終了する第5回くらいにはいい加減、慣れてきました。

歴史改変とVRの融合

そして後半は前半のSF的な伏線を生かしつつもいかにもタイムスリップものらしい、歴史改変テーマへ。
ただ、正直、「タイムライダーズ」などと比較すると悪役のモチベーションというか真剣さが今一つ伝わってこず、少し物足りなく感じました。
また、前半存在感の大きかった前田利常が後半、空気になってしまったのも寂しかったかな。
でも、最終回・丸1回をエピローグに使う構成は好きですし、VRからタイムスリップへつながっていく流れも面白いと思います。
ちなみに最初「これってVR(仮想現実)ではなくAR(拡張現実)あるいはMR(複合現実)ではないの?」と思ったのですが、冒頭、VRゴーグルを使いながら現実世界を歩くと危険みたいな表現もあったので没入度や重ね合わせの弱さからはVRと称しても良いようにも感じました。

なぜかキリスト教がらみが多い

あと本作品のストーリーとは直接関係ないのですが、藤井靖さんの演出作品って、キリシタンとかキリスト教の信仰が絡む作品が妙に多いように感じます。
きりしたん算用記」とか「白狐魔記 天草の霧」とか「1492年のマリア」とか並木陽さんのオリジナル作とか。
題材として好きなのでしょうか。

内藤大希さんと石川由依さん

話を出演者に移しますと、まず主役の涼太を演じたのは俳優の内藤大希(ないとう・たいき)さん31歳。
若いですがアルゴ・ミュージカル出身で小学6年生の頃から舞台等で活動、2008年には「ミュージカル・テニスの王子様」に出演していたという筋金入りの舞台俳優です。
また、ヒロインの綾野さん/うめさんを演じているのは最近は声優としての活動が中心の石川由依さん。
でも石川さんも子役出身で舞台・ミュージカル経験は豊富。
特徴的な高い声が印象的で、青春アドベンチャーでは浮世離れした世界観の作品で起用されることが多いのですが、本作品では現代パートで演じる普通の大学生「綾野さん」がとてもキュートです。
そういえば本格的なミュージカル作品が少ない青春アドベンチャーのはずなのに、「風神秘抄」、「タランの白鳥」など、石川さんの「歌わせられる確率」はちょっと異常。
メープルポーリーンは歌わなかったので、いつもという訳ではないのですけど。
その他、深美教授/高山右近?役の岡幸二郎さん(青春アドベンチャーではなぜか織田信長役が多い)、前田利常役の鯨井康介さん、珠姫役の伶美うららさんなど、歌えるメンバーがそろった作品です。

なお、本作品の翌年にまきりかさん作・音楽による青春アドベンチャー第2弾のミュージカル作品「輪廻転Payうた絵巻」も制作されています。


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