「音楽」に深い関わりのあるラジオドラマ

ゆるゆるつながり

【特集:青アド・ポーカー20】「音楽」に深い関わりのあるラジオドラマ

このブログでは、「青春アドベンチャー」などで放送されたNHK-FMのラジオドラマの紹介をしていますが、紹介に当たっては、この記事の区分により、各作品ごとに「ジャンル」を設定しています。
このジャンル区分は、紹介した作品数の増加とともに、少しずつ細分化していき、現在で、「スポーツ」や「グルメ」などかなり細かいジャンルもできました。

ジャンル「音楽」?

実は、そのジャンル分けの過程では「音楽」というジャンルもつくることも検討したのですが、まだそれに至っていません。
その理由としては、一口に「音楽」を切り口とするとしても、作品内容自体が音楽をテーマにしている作品を集めるべきか、ミュージカル風など作品制作上、音楽が凝っている作品を集めるべきか、どちらを選ぶかが難しいということが第1点。
また、音楽が重要な要素であったとしても、他の切り口でのジャンル分けとどちらが妥当か迷う作品、例えば「音楽をテーマにした異世界ファンタジー」(ジャンルを「異世界」とすべきか「音楽」とすべきか)が多いこともその理由でした。
更に、そもそも音楽重視の作品がそれほど多くないこともあります。

特集「音楽」

ただ、「音楽」が、ひとつの面白い切り口であることも確かです。
そのため、この、作品間の緩やかなつながりを紹介する「青アドポーカー」のコーナーで、各ジャンルを横断して「音楽」でつながっている作品をまとめてみることにしました。

SF(その他)

少年漂流伝(1998年)

少年漂流伝 作:松本雄吉(青春アドベンチャー)
2199年のオオサカシティ。荒廃したスラム街で生きる少年タケルは、ある日、モンゴル人の少年・テムジンの心の声を聞く。中国マフィアに誘拐されたテムジンを助けることを決意したタケルと仲間たちは、タケルとテムジンとの間のテレパシーを頼りに彼の姿を探し始めるが…

この作品の場合、「音楽」と言ってしまってよいものか…
NHKと劇団維新派がコラボして作った青春アドベンチャー史上に残る怪作品が、この「少年漂流伝」です。
全編が、劇団維新派の特徴である「ヂャンヂャン☆オペラ」スタイルで作られ、ミュージカル風というか、ラップ風というか、ちんどん屋風というか…
とにかく他に例を見ない独特の雰囲気の作品です。

マージナル(1988年)

マージナル 原作:萩尾望都(サウンド・ファンタジードラマ)
2999年。D因子の蔓延により地球に住む人々の遺伝子は汚染され、女性が生まれなくなっていた。月のカンパニーの支配の下、たった一人の女性「マザ」のほかは男ばかりの世界。しかも、そのマザも年老いて十分に子供を供給できなくなっていた。存続しているのがやっとのギリギリの(マージナルな)世界。新しいマザの出現を促すために、年老いたマザを暗殺したグリンジャは、逃走する途中で、行き倒れている美しい少年に出会う。少年は「キラ」という謎の言葉をつぶやくのだが…

萩尾望都さんの漫画を原作とする作品。
何と音楽を担当したは、元Y.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)の細野晴臣さんでした。
ちなみにこの作品はドラマ本編がCD化されるとともに、関連した音楽CDが2種類発売されています。
さすが細野晴臣さん。
なお、この作品に主演したのは、当時、トレンディドラマ俳優として人気絶頂だった石田純一さんでした。
NHK-FMも思い切った作品を作ったものです。

世界から歌が消える前に(2021年)

世界から歌が消える前に 作:今井雅子(青春アドベンチャー)
私の名前はペイトン・ジョイス。かつては100万人のフォロワーがいる歌い手だったけど、ライブ配信の度に視聴者数が減っていくプレッシャーに耐え切れず活動を停止。今は、私を追い落としたデゼール・プロジェクのデリバリースタッフとして働いている。私だけじゃない。食事や歌、映画から何から何まで、今はデゼール・プロジェクのプロダクツが世界を席巻している。合い言葉は「もう迷わない、悩まない」「みんなと同じなら間違えない」。でも、歌を口ずさんでいる私を見て、ある子どもが発した言葉に私は衝撃を受けた。「ねえ、それなあに?今のが歌?人間も歌うの?」

今井雅子さん脚本の「走れ歌鉄!」に続く歌もの第2弾。
元乃木坂46の井上小百合さんを始め、声優の入野自由さんや歌手の夏木マリさんといった歌える出演者を並べて、実際、歌の比重が大きい作品になっています。

タイムトラベル

時めがね金沢うた絵巻(2020年)

時めがね金沢うた絵巻 作:まきりか(青春アドベンチャー)
僕の名前は坂上涼太。金沢未来大学でVRの研究をする大学3年生。生まれも育ちも横浜だけど、この分野の第一人者である深美教授に学ぶために金沢にやってきた。好き好んで金沢に来た割には金沢の歴史を全然知らない、友人の美術学生・綾野さんにはよく言われるけど、最近はそうでもない。教授に命じられて江戸時代初期の金沢の街をVRで再現するように言われ、そのためにすごく金沢の勉強をしているのだ。でも本当は教授に言われたからではなく、綾野さんの生まれ育ったこの街のことを知りたかったからなのだけど。そうして誕生した江戸時代の金沢を疑似体験できるVRゴーグル。しかしその試用中に事件は起きた。気を失って目が覚めると、そこは江戸時代の金沢だったのだ。

ミュージカル作家「まきりか」さんが脚本と音楽の両方を担当した意欲作で、作中、登場人物が突然歌いだすミュージカル風のつくり。
いきなり歌から入るので初見(初聴)の方はご注意ください。

歴史時代(海外)

ピエタ(2012年)

ピエタ 原作:大島真寿美(青春アドベンチャー)
18世紀、斜陽期を迎えているヴェネツィア共和国に、ピエタ慈善院はあった。ピエタに引き取られた孤児の娘たちは、名作曲家ヴィヴァルディの指導のもと音楽を学び、特に優れた者は慈善院付属の「合唱・合奏の娘たち」として日の当たる人生を歩むことができた。エミーリアも「合唱・合奏の娘たち」の一員であったが、大きな名声を得ることは遂になく、今はピエタの事務を担当している。そのエミーリアのもとに恩師ヴィヴァルディが外国で死去したとの知らせが届く。同時にピエタもまた次第に運営が苦しくなりつつあった。エミーリアはピエタへの支援を求めて行動を始め、古い友人で裕福な貴族の娘であるヴェロニカから、ある古い譜面を探すことを条件に支援の約束を取り付ける。ヴェロニカの譜面を探す試みは、エミーリアが知らなかった恩師ヴィヴァルディの姿と、エミーリア自身の過去の探索につながっていくのだった。

18世紀ヴェネツィアにあった「ピエタ慈善院」を舞台にした作品。
慈善院に引き取られた孤児の娘たちは慈善院附属の「合唱・合奏の娘たち」として懸命に生きていた…
静かな感動を呼ぶ傑作です。

マドモアゼル・モーツァルト(1992年)

マドモアゼル・モーツァルト 原作:福山庸治(青春アドベンチャー)
高校で音楽教師をしている裕子のもとに、先輩の勤が、200年前のアメリカで音楽教師をしていたエリザベスという女性が書いたというオペラの譜面を持って現れた。オペラのタイトルは「マドモアゼル・モーツァルト」。それは、モーツァルトが女性であったという驚くべき物語だった。少女エリーザはなぜウォルフガング・アマデウス・モーツァルトと名乗ることとなるのか、どのような気持ちで音楽を作り、そしてどのような恋をしたのか。物語はこのオペラで語られている彼女の人生へと移っていく。

「ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトは実は女性だった」という内容の、福山庸治さん原作のコミックをもとにしたラジオドラマです。
このラジオドラマの前に音楽座ミュージカルでミュージカルになっており、そのミュージカルの主要キャストや小室哲哉さん作曲の音楽をそのままNHKのラジオドラマに移植するという思い切ったやり方で制作された作品でした。
そういう出自もあり、作品中で主役のエリーゼを演じる土井裕子さんがエリーゼの心情を歌で歌うミュージカル風の演出をしていたのも特徴です。

推理

赤川次郎の冬の旅人(1988年)

赤川次郎の冬の旅人 (ドラマ/FMシアター)
今世紀を代表するバリトン歌手、ディートリッヒ・F=D(エフ・デー)。来日8回目の東京。楽屋で公演の開始を待っている彼のもとに不審な電話がかかってきた。曰く「『冬の旅人』をうたうと人が死ぬ。」そしてその“予言”は実現してしまう。公演が終わって楽屋に戻った彼の前に死体が横たわっていたのだ。関係者として公演後も日本に残り捜査に協力することを要請されるF=D。要請に応えることにした彼だが、しかし事件はこれだけでは終わらないのだった。

バス歌手の岡村喬生さんが、主役のバリトン歌手・ディートリヒ・F=Dを演じます。
一応、推理ものではありますが、放送時間の半分程度がクラシックの曲が流れているという音楽色の強い作品でした。

異世界

砂漠の歌姫(2011年)

砂漠の歌姫 原作:村山早紀(青春アドベンチャー)
砂漠の街・エスタの音楽堂で音楽を習う少女ユンは、他の生徒達がうらやむほどの歌の才能の持ち主。しかし、ただ一人の肉親である母を砂漠を放浪中に失い、歌の才能を見込んだ金貸しに育てられたユンにとって、歌は生きていくための手段に過ぎなかった。ある日、ユンは砂漠で倒れている銀髪の少女リーヤを助ける。視覚と記憶を失っていたリーヤだが、ユンの美しい歌声に慰められる。そして、ユンもリーヤにより人のために歌うことの尊さを知る。少しずつ親しくなっていくふたり。しかし、ある日、リーヤを狙う蛇遣いの男達があらわれ、ふたりと周りの人たちは、伝説の「魔法水晶」を巡る争いに巻き込まれていくのだった。

孤児が学ぶ音楽堂、という設定は「ピエタ」を連想しますが、こちらは架空の世界が舞台の「異世界ファンタジー」。
何とスクエアのゲーム「クロノトリガー」の音楽をつくられた光田康典さんによるオリジナルの劇伴が提供された作品です。
主役のユンを演じたのは後に声優として有名になる石川由依さんでした。

伝奇(日本)

風神秘抄(2006年)

風神秘抄 原作:荻原規子(青春アドベンチャー)
平治元年(西暦1160年)。源氏と平家は決戦の時を迎えていた。いわゆる「平治の乱」である。この戦いに臨む源氏の棟梁の長男、”悪源太”義平の旗下に、初陣の坂東武者がいた。名を草十郎(そうじゅうろう)という。草十郎は剣もよく使うが、笛も名手であった。そして、始まった戦い。源氏方は善戦するものの、結局、義平は刑死し、草十郎もまた混乱の中で盗賊・正蔵に捕縛されてしまう。草十郎に戦いの無意味さと武士であることの空しさを諭し、武士の身分を捨てることを求める正蔵。動揺する草十郎だが、正蔵に連れられて赴いた京の都で、糸世(いとせ)という名の白拍子の少女に出会う。糸世の舞と草十郎の笛の出会いにより、歴史はその動きを大きく変えていく。

笛の得意な主人公の少年と、踊りを職業とするヒロインの少女の物語。
当然、音楽が重要な要素となり、ヒロインの糸世を演じる石川由依さんが歌う場面も多々盛り込まれています。
そして、山下康介さんによる本作品オリジナルの劇中曲がイイ!
「ピエタ」も担当している山下さんですが、「泥の子と狭い家の物語」など山下さんの関連作品にははずれがありません。

人魚の森(1989年)

人魚の森 原作:高橋留美子(ミュージカルファンタジー)
ついに“人魚の里”を見つけた。400年かかった。長い長い時間だった。その間に多くの人間の生き死にに立ち会った。多くの人間の欲望と悲しみを見てきた。今度こそ終わらせる。今度こそ人間に戻る方法が見つけるのだ。

高橋留美子さんのマンガを原作とする作品。
主演は野口五郎さんで、ヒロイン・真魚(まな)を演じたのは当時ミュージカル俳優として脚光浴びつつあった島田歌穂さん。
「ミュージカルファンタジー」と銘打ってつくられたことが示す通りかなり濃厚にミュージカル的な作りの作品です。

幻想(日本/ライト)

輪廻転Payうた絵巻(2021年)

輪廻転Payうた絵巻 作:まきりか(青春アドベンチャー)
篠原七海@東央大学政経学部3年。今年の学長賞受賞者、SNSのフォロワー数60万人。時代の先を行く経営者の話を聞くことが好き。常に目標に向かっている人が好き。フィンテックの寵児・別所ユウヤに会ってみたい。生産性の低いことには興味がありません。企業の意思決定に関わる重要な仕事がしたくて色々な企業のインターンに参加しています。何から何まで完璧な人生の勝ち組、女医の姉に憧れています。最近「輪廻転Pay」というスマホアプリを始めました。#意識高い人と繋がりたい #焼肉は西麻布が最高 #体にいいこと続けています

タイムトラベルに分類した「時めがね金沢うた絵巻」に続き「うた絵巻シリーズ」?第2弾で、やはりこちらもかなり強烈なミュージカル調の作品。
ストーリーラインは概ね「クリスマス・キャロル」。

サウンドミュージカル 雪色オルゴール(2019年)

サウンドミュージカル 雪色オルゴール 作:まきりか(特集オーディオドラマ)
アスカは自分に自信が持てない高校2年生。アスカにとって、世界的なジュエリーデザイナーである母ユリもコンプレックスの対象でしかなかった。しかし、そんなキラキラした母にも一点、影が差すことがある。自分の出身地、北海道・室蘭の話を一切しないのだ。それにもまた自分のルーツを否定されたように感じてしまうアスカは、ある日小遣いを叩いて室蘭に母のルーツを探す旅に出る。そこで待っていたのは鉱物の精霊たちとともに過去をめぐる不思議な旅だった。

うた絵巻シリーズの前に特集オーディオドラマ枠で放送された最初のまきりかさんによるミュージカルオーディオドラマ。
一見ファンタジー風だが内容はかなり昭和風味の人情もの。

幻想(海外)

オルガニスト(1999年)

オルガニスト 原作:山之口洋(青春アドベンチャー)
ベルリンの壁が崩壊した直後のドイツ、ニュールンベルク。念願だった名門音楽大学に入学したテオこと、テオドール・ヴェルナーは、おんぼろの学生寮でヨーゼフ・エルンストと同室となる。ヨーゼフは、伝説的な盲目のオルガニスト・ラインベルガー教授が自分の後継者として期待を寄せる若き天才オルガニストだった。テオとヨーゼフ、そして女学生マリーアの3人は、この大学でかけがえのない青春の日々を送ることになる。しかし、彼らの前には、ある残酷な運命が待ち構えているのだった…

ドイツの音楽大学で学ぶ若者たちの青春群像…と思いきや、中盤からがらっと変わったファンタジックな展開を見せる本作品。
そのあまりの方向転換ぶりに賛否両論はあったようですが、私にとってはとても印象に残る良作でした。
特に印象的なのは作品のテーマ曲だったバッハの「ヨハネ受難曲 第15曲 コラール」。
他の方にも印象的だったようで、2015年9月23日に放送された「今日は一日ラジオドラマ三昧」でもこの曲がリクエストされていました。

キャロル(1991年)

キャロル 原作:木根尚登(サラウンド・ファンタジー)
イギリスに住む少女キャロルの周りでは、人気バンド「ガボール・スクリーン」の新曲「ソング・オブ・プカラ」が今までにない酷い出来だと話題になっていた。そんな、ある日、ロンドン・ビックベンの鐘の音が突然聞こえなくなるという不思議な事件が起き世間は騒然となる。同時に、ロンドンフィルハーモニーでチェロを演奏しているキャロルの父親も、自分のチェロから音が出ていないようだと言い出したキャロルは、この違う場所で違う人間に起こった3つの出来事がいずれも「音」に関係することに気がつく。父を助けるために、キャロルは「ソング・オブ・プカラ」を学校の複合芸術科目で使用している機械で分析することを思い立つのだが、それがキャロルが異世界ラ・パス・ル・パスに迷い込んむ切っ掛けとなってしまったのだった。

TMネットワークの木根尚登さん原作の小説をラジオドラマ化した作品で、TMネットワークのアルバム「CAROL」とも連動した作品です。
そのため、作中でもTMネットワークの曲が沢山使われています。

幻想(その他)

タランの白鳥(2015年)

タランの白鳥 原作:神沢利子(青春アドベンチャー)
「お前さんは、どこから来なさった?」オホーツク海に浮かぶ北の島。雪吹を避けるために寄させてもらった炉端で老婆が語り始める。「何か話をしてあげよう。この村に伝わる話。オルドンの息子モコトルの物語。モコトルは神と戦い、白鳥に愛された…」

アイヌあるいはその他の北方民族を思わせる独特の世界観。
本作品でも「砂漠の歌姫」や「風神秘抄」と同様に石川由依さんの歌声が聴けます。
演出の藤井靖さんは石川さんの歌声が好きなんだろうなあと感じさせられる作品。
ちなみに本作品では主演の海宝直人さんも歌います。

コメディ

ゴー・ゴー!チキンズ、ゴー・ゴー!チキンズ パート2(2009年・2010年)

ゴー・ゴー!チキンズ 作:藤井青銅(青春アドベンチャー)
「サージェント・ワサビーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド」は、主人公のこうちゃん、リーダー、フランツ、とらぞうの4人のアマチュアバンド。「いつかは東京ドーム」を合言葉に、日々、バイトとライブの毎日だ。ある日ついにインディーズレーベルの社長からデビューの声がかかる。狂喜する4人。しかし、バンド名が唐突に「チキンズ」へ変更されたことから始まり、4人に次々と試練?が襲い掛かる。メジャーへの道は一筋縄ではいかないのだ。
ゴー・ゴー!チキンズ パート2 作:藤井青銅(青春アドベンチャー)
前作の最後で何とかメジャーへの第一歩を歩み始めたはずのロックバンド・チキンズ。目標はこのままの勢いで東京ドーム公演!ヨーロッパツアー!!凱旋帰国!!!しかし、現実はそんなに甘いものではなかった。人気は再び下火になり今日は奥多摩の遊園地で営業である。このままでいけない!そうだ、ツインボーカルにしよう!チキンズの迷走の日々が再び始まる。

怪しい芸能事務所の社長に声を掛けられ、「チキンズ」としてインディーズデビューをすることになった、こうちゃんたち4人のサクセスストーリー(?)
藤井青銅さん作らしい爆笑のコメディ作品で、本物の歌手・芸人が何人も出演されているのも特徴です。
好評だったのかパート2まで制作されました。
青春アドベンチャーで、オリジナル長編で続編が制作されたのは本作品だけだと思います。

愛と青春のサンバイマン(1991年)

愛と青春のサンバイマン 原作:藤井青銅(サウンド夢工房)
志濃田はジパングアニメーションというアニメ制作会社に所属するプロデューサー。今度の仕事は「タワーメカ合体ロボ・フラッシュマン」という巨大ロボットアニメの制作だ。もう第1話の脚本もあがっている。しかし広告代理店の山崎から、スポンサーが「フラッシュマン」ではなくB企画の「MAHJONG合体ロボ・サンバイマン」の方をいたく気に入っているとの連絡が届く。34種類136機のロボットの中から14機が合体するという登場ロボット数の多さに、おもちゃ会社であるスポンサーが飛びついたのだ。「136機の中から14機」?そう、サンバイマンはMAHJONGすなわち麻雀と巨大ロボを組み合わせたやっつけのダミー企画だったのだ。フラッシュマンの当て馬として15分でつくった企画であり、子供も見るロボットアニメの企画としては、教育上、許されるはずもない作品だ。しかし、そんな志濃田の思いもむなしく、欲に駆られたスポンサーのごり押しでサンバイマンの放送が始まってしまう。初回の視聴率こそよかったものの、やはり早々に教育上の配慮をしなければいけなくなった制作陣。検討の結果、ギャンブル色を薄めるために「麻雀+巨大ロボ」に「昔話」のテイストを加えるというという前代未聞の路線変更がなされる。しかしそれはサンバイマンをめぐる迷走の第一歩でしかなかった…

これも藤井青銅さん原作の作品。
内容はアニメ制作会社の迷走を描いたハチャメチャコメディで、別段、音楽をテーマにしてはいないのですが、作中で替え歌が多用されているのが特徴。
むしろ替え歌こそがこの作品の一番の聴きどころです。

メゾン・ド・関ケ原(2018年)

メゾン・ド・関ケ原 作:西村有加(青春アドベンチャー)
「関ケ原」駅至近で売り出し中の新築分譲マンション「メゾン・ド・関ケ原」。駅至近といっても1日あたりの乗車人数はわずかに1,002人(2015年)、しかも日中の普通列車は毎時2本という歴としたローカル駅。そこに13階建(←不吉?)の建物が建っているだけでも十分場違いだが、白いロココ調の外装も明らかに悪目立ちしている。こんな問題物件を売ることは、昨日まで引きこもりだった自分じゃなくても無理だよ、と思ったけど、売れないのにはどうも別の理由もあるみたいだ。近所の噂によれば、この物件、新築なのに「出る」らしいのだ。

小早川秀秋をラッパーにしてしまった怪作。
ラジオドラマにラップを取り入れた意欲作、ではあるのですがちょっと中途半端。
名古屋局制作でラップ音楽はAViAさんが担当。

あたふたオペラ「からめん」(2022年)

あたふたオペラ「からめん」 作:萩田頌豊与(青春アドベンチャー)
巡査の保瀬(ほせ)は最近、人の声が歌になって聞こえるようになった。感情が高ぶった話し相手がオペラを歌い出すように見えるのだ。診察した毛利医師は保瀬の症状を「突発性歌劇幻聴症候群」と断言。この病気に「あたふたオペラ症候群」というふざけた通称を付け、悪のりしつつ治療に乗り出した。毎日診察室で毛利医師に経過を報告する保瀬。どうやら保瀬は辛麺(からめん)という辛いラーメンを巡る騒動に巻き込まれているようなのだが、この騒動は「あたふたオペラ症候群」の発症と関係あるのだろうか。

主演の又吉秀樹さんを初めてとしてプロの声楽家が多数出演し、オペラ「カルメン」の替え歌を歌い上げる不思議な作品。
普通の会話部分もきちんとコメディとして面白いのが素晴らしいです。
ただオペラ部分のパロディネタは素人にはちょっと難しすぎます。

あたふたオペラ からふる物語(2023年)

あたふたオペラ からふる物語 作:萩田頌豊与(青春アドベンチャー)
月曜日から金曜日、毎日放送されるラジオ番組「おとなのためのトークショー・じゃこもかしこも」の今週のゲストは、劇団「盗んだだるま」を主催する劇作家で演出家の唐富士夫(から・ふじお)。司会の久子と唐との会話は全く嚙み合わないが、唐の特技「25文字で名著」や、唐の学生時代の恋愛話でなんとか番組は進行していく。しかし、4日目にして番組は緊急事態を迎えてしまう。そして唐の恋愛話に登場した人たちが次々とスタジオに現れて…

「あたふたオペラ」シリーズの第2弾。こちらはプッチーニのオペラ4作品をフィーチャー。
前作以上にボリュームのある替え歌と、ボケとツッコミが続く芝居部分がなんともいえない雰囲気を醸し出している。

あたふたオペラ きんつば姫とオリゴ糖(2024年)

あたふたオペラ きんつば姫とリゴレ糖 作:萩田頌豊与(青春アドベンチャー)
江戸の和菓子屋・富嶺堂(ふれいどう)の若旦那は店の唯一の商品である「きんつば」の売れ行きを占うために占い師のもとを訪れる。占い師の指示により、怪しい甘味料・リゴレ糖をきんつばの原料に使うとともに、きんつばを宣伝してもらうために人気芸妓・美折太夫(びおれたゆう)のもとを訪れる富嶺堂の若旦那。しかし、美折太夫はすでに別の和菓子屋・鳥羽万の宣伝担当であり、自分の店「吉原」に鳥羽万の最中を供していたのだ。

「あたふたオペラ」シリーズの第3弾。
採用楽曲はベルディのオペラ曲だがなんと時代劇仕立て。
もう訳が分からない!

少年(中高)

青春デンデケデケデケ(1991年)

青春デンデケデケデケ 原作:芦原すなお(サウンド夢工房)
時は1960年代。香川県観音寺市に住む高校生・藤原竹良(ふじわら・たけよし、通称「ちっくん」)は、ラジオから流れてきたベンチャーズの「パイプライン」に衝撃を受け、ロックバンドを結成することを決意する。ギターの弾ける清一(せいいち)、坊主の息子で世慣れた富士男(ふじお)、ブラスバンドで大太鼓を叩くつもりだった巧(たくみ)を仲間に引き入れ、まんまとロックバンド「ロッキング・ホースメン」の結成に成功する竹良。まずは楽器を調達するために、夏休みに全員でバイトに励み始めるが…仲間、恋、そしてロック。彼らのかけがえのない青春の日々が始まった。

青春アドベンチャーの前番組である「サウンド夢工房」で放送された作品で、原作は芦原すなおさんの直木賞受賞小説
これも「ゴー・ゴー!チキンズ」と同じ、いわゆる「バンドもの」ですが、実際にバンド活動を行っていた人気声優4人組「スラップスティック」(古川登志夫さん、古谷徹さん、鈴置洋孝さん、曽我部和恭さん)が出演しています。
サウンド夢工房時代を代表する名作だと思います。

翼はいつまでも(2002年)

翼はいつまでも 原作:川上健一(青春アドベンチャー)
神山久志。中学2年生、野球部。意地悪な先輩と高圧的な顧問の教師に玉拾いをさせられる日々。しかし、そんなつまらない毎日に突然、風穴があいた。米軍のラジオを聴いていたときにラジオで流れてきた曲。ビートルズという聞いたことのないバンドの「プリーズ・プリーズ・ミー」。勇気をだして一歩踏み出そうよ、やりたいようにやろうぜ…いい青春だったのかどうか。けれど、目いっぱいの悔いのない青春であったことは間違いないのだ。

「青春デンデケデケデケ」とは違って主人が自ら音楽をやるわけではありませんが、この「翼はいつまでも」も特定のミュージシャンをフューチャーした作品です。
「青春デンデケデケデケ」がベンチャーズであるのに対して、「翼はいつまでも」がビートルズ。
ビートルズサウンドに乗せて、60年代のやるせなくも甘酸っぱい青春物語が繰り広げられる良作です。

少年(幼小)

走れ歌鉄!(2016年)

走れ歌鉄! 作:今井雅子(青春アドベンチャー)
戦争に負けた国は悲惨だ。戦争孤児のような弱い立場の人間にとっては尚更だ。「絶対に戦争には負けない」と言っていた大人達は、さっさと現状を受け入れて新しい生活を営んでいるが、戦争孤児達の日常は相変わらず戦いなのだ。でも占領国には媚びない。占領軍の軍人の靴を磨くときには下を向くが、心は常に前向きだ。だから「東の都」に行くのだ。行って、「少年少女歌合戦」で一等を取ってどん底から脱出するのだ。東の都まで行くお金がない?でも、軍需工場の焼け跡には、豆蒸気機関車が残っているらしい。あれさえ動かせれば、東の都にだって行けるはずだ。

青春アドベンチャー随一の「ミュージカル風」ラジオドラマ。
というか、適度に抽象化された舞台設定といい、実際の少年少女が演じていることといい、子供が演じるこんなミュージカルが本当にあってもおかしくないと感じさせられる作品。
登場人物がいきなり歌いだすミュージカル展開は人を選ぶかもしれないが、全体的に嫌味にならない程度にうまく抑えています。

多ジャンル(競作)

サウンド・ドライブ(2003年)

サウンド・ドライブ 作:さわだみきお他(青春アドベンチャー)
NHK名古屋局が制作する脚本家競作のオリジナル短編ラジオドラマ集作品、通称「10人作家シリーズ」。本作品「サウンド・ドライブ」はその1作であり、2003年に放送されました。なお、作品名は「サウンド・ドライブ」であり「サウンド・ライフ」ではありません。そのため、当然ながら大阪局で制作している類似企画の「ライフシリーズ」の一作ではありません。

「音」をキーワードにした、1話15分完結の短編作品集でした。
NHK名古屋局制作らしい、抽象的でアンニュイな雰囲気が特徴です。
BANANAさんが担当された音楽も、脳天気な「ロスト・タイム」とは全く違うものでした。

その他にも…

例えば、「ネムコとポトトと白い子馬」、「悲しみの時計少女」、「おしまいの日」など谷山浩子さんが原作・主演している作品では谷山さんの楽曲が効果的に使われるのが常でしたし、主演したマナカナさんの曲を毎回必ずかけた「マナカナの大阪LOVERS」、「マナカナの大阪WORKERS」など独特な工夫をしている作品もありました。

それにしても、こうしてまとめてみて気が付いたのですが、良作の何と多いこと!
ラジオドラマにとって音楽がいかに重要かがわかるような気がします。


■シリーズ「青アドポーカー」
作品間の緩やかな繋がりを楽しむこの企画。
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