「音楽」に深い関わりのあるラジオドラマ

ゆるゆるつながり

【特集:青アド・ポーカー20】「音楽」に深い関わりのあるラジオドラマ

このブログでは、「青春アドベンチャー」などで放送されたNHK-FMのラジオドラマの紹介をしていますが、紹介に当たっては、この記事の区分により、各作品ごとに「ジャンル」を設定しています。
このジャンル区分は、紹介した作品数の増加とともに、少しずつ細分化していき、現在で、「スポーツ」や「グルメ」などかなり細かいジャンルもできました。

ジャンル「音楽」?

実は、そのジャンル分けの過程では「音楽」というジャンルもつくることも検討したのですが、まだそれに至っていません。
その理由としては、一口に「音楽」を切り口とするとしても、作品内容自体が音楽をテーマにしている作品を集めるべきか、ミュージカル風など作品制作上、音楽が凝っている作品を集めるべきか、どちらを選ぶかが難しいということが第1点。
また、音楽が重要な要素であったとしても、他の切り口でのジャンル分けとどちらが妥当か迷う作品、例えば「音楽をテーマにした異世界ファンタジー」(ジャンルを「異世界」とすべきか「音楽」とすべきか)が多いこともその理由でした。
更に、そもそも音楽重視の作品がそれほど多くないこともあります。

特集「音楽」

ただ、「音楽」が、ひとつの面白い切り口であることも確かです。
そのため、この、作品間の緩やかなつながりを紹介する「青アドポーカー」のコーナーで、各ジャンルを横断して「音楽」でつながっている作品をまとめてみることにしました。

SF(その他)

  • 少年漂流伝(1998年)
    この作品の場合、「音楽」と言ってしまってよいものか…
    NHKと劇団維新派がコラボして作った青春アドベンチャー史上に残る怪作品が、この「少年漂流伝」です。
    全編が、劇団維新派の特徴である「ヂャンヂャン☆オペラ」スタイルで作られ、ミュージカル風というか、ラップ風というか、ちんどん屋風というか…
    とにかく他に例を見ない独特の雰囲気の作品です。
  • マージナル(1988年)
    萩尾望都さんの漫画を原作とする作品。
    何と音楽を担当したは、元Y.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)の細野晴臣さんでした。
    ちなみにこの作品はドラマ本編がCD化されるとともに、関連した音楽CDが2種類発売されています。
    さすが細野晴臣さん。
    なお、この作品に主演したのは、当時、トレンディドラマ俳優として人気絶頂だった石田純一さんでした。
    NHK-FMも思い切った作品を作ったものです。
  • 世界から歌が消える前に(2021年)
    今井雅子さん脚本の「走れ歌鉄!」に続く歌もの第2弾。
    元乃木坂46の井上小百合さんを始め、声優の入野自由さんや歌手の夏木マリさんといった歌える出演者を並べて、実際、歌の比重が大きい作品になっています。

タイムトラベル

  • 時めがね金沢うた絵巻(2020年)
    ミュージカル作家「まきりか」さんが脚本と音楽の両方を担当した意欲作で、作中、登場人物が突然歌いだすミュージカル風のつくり。
    当ブログでは紹介していないけど、まきりかさんは2019年1月放送の特集オーディオドラマ「サウンドミュージカル 雪色オルゴール」も担当されています。

歴史時代(海外)

  • ピエタ(2012年)
    18世紀ヴェネツィアにあった「ピエタ慈善院」を舞台にした作品。
    慈善院に引き取られた孤児の娘たちは慈善院附属の「合唱・合奏の娘たち」として懸命に生きていた…
    静かな感動を呼ぶ傑作です。
  • マドモアゼル・モーツァルト(1992年)
    「ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトは実は女性だった」という内容の、福山庸治さん原作のコミックをもとにしたラジオドラマです。
    このラジオドラマの前に音楽座ミュージカルでミュージカルになっており、そのミュージカルの主要キャストや小室哲哉さん作曲の音楽をそのままNHKのラジオドラマに移植するという思い切ったやり方で制作された作品でした。
    そういう出自もあり、作品中で主役のエリーゼを演じる土井裕子さんがエリーゼの心情を歌で歌うミュージカル風の演出をしていたのも特徴です。

推理

  • 赤川次郎の冬の旅人(1988年)
    バス歌手の岡村喬生さんが、主役のバリトン歌手・ディートリヒ・F=Dを演じます。
    一応、推理ものではありますが、放送時間の半分程度がクラシックの曲が流れているという音楽色の強い作品でした。

異世界

  • 砂漠の歌姫(2011年)
    孤児が学ぶ音楽堂、という設定は「ピエタ」を連想しますが、こちらは架空の世界が舞台の「異世界ファンタジー」。
    何とスクエアのゲーム「クロノトリガー」の音楽をつくられた光田康典さんによるオリジナルの劇伴が提供された作品です。
    主役のユンを演じたのは後に声優として有名になる石川由依さんでした。

伝奇(日本)

  • 風神秘抄(2006年)
    笛の得意な主人公の少年と、踊りを職業とするヒロインの少女の物語。
    当然、音楽が重要な要素となり、ヒロインの糸世を演じる石川由依さんが歌う場面も多々盛り込まれています。
    そして、山下康介さんによる本作品オリジナルの劇中曲がイイ!
    「ピエタ」も担当している山下さんですが、「泥の子と狭い家の物語」など山下さんの関連作品にははずれがありません。
  • 人魚の森(1989年)
    高橋留美子さんのマンガを原作とする作品。
    主演は野口五郎さんで、ヒロイン・真魚(まな)を演じたのは当時ミュージカル俳優として脚光浴びつつあった島田歌穂さん。
    「ミュージカルファンタジー」と銘打ってつくられたことが示す通りかなり濃厚にミュージカル的な作りの作品です。

幻想(日本/ライト)

  • 輪廻転Payうた絵巻(2021年)
    タイムトラベルに分類した「時めがね金沢うた絵巻」に続き「うた絵巻シリーズ」?第2弾で、やはりこちらもかなり強烈なミュージカル調の作品。
    ストーリーラインは概ね「クリスマス・キャロル」。

幻想(海外)

  • オルガニスト(1999年)
    ドイツの音楽大学で学ぶ若者たちの青春群像…と思いきや、中盤からがらっと変わったファンタジックな展開を見せる本作品。
    そのあまりの方向転換ぶりに賛否両論はあったようですが、私にとってはとても印象に残る良作でした。
    特に印象的なのは作品のテーマ曲だったバッハの「ヨハネ受難曲 第15曲 コラール」。
    他の方にも印象的だったようで、2015年9月23日に放送された「今日は一日ラジオドラマ三昧」でもこの曲がリクエストされていました。
  • キャロル(1991年)
    TMネットワークの木根尚登さん原作の小説をラジオドラマ化した作品で、TMネットワークのアルバム「CAROL」とも連動した作品です。
    そのため、作中でもTMネットワークの曲が沢山使われています。

幻想(その他)

  • タランの白鳥(2015年)
    アイヌあるいはその他の北方民族を思わせる独特の世界観。
    本作品でも「砂漠の歌姫」や「風神秘抄」と同様に石川由依さんの歌声が聴けます。
    演出の藤井靖さんは石川さんの歌声が好きなんだろうなあと感じさせられる作品。
    ちなみに本作品では主演の海宝直人さんも歌います。

コメディ

    • ゴー・ゴー!チキンズ、「ゴー・ゴー!チキンズ パート2(2009年・2010年)
      怪しい芸能事務所の社長に声を掛けられ、「チキンズ」としてインディーズデビューをすることになった、こうちゃんたち4人のサクセスストーリー(?)
      藤井青銅さん作らしい爆笑のコメディ作品で、本物の歌手・芸人が何人も出演されているのも特徴です。
      好評だったのかパート2まで制作されました。
      青春アドベンチャーで、オリジナル長編で続編が制作されたのは本作品だけだと思います。
    • 愛と青春のサンバイマン(1991年)
      これも藤井青銅さん原作の作品。
      内容はアニメ制作会社の迷走を描いたハチャメチャコメディで、別段、音楽をテーマにしてはいないのですが、作中で替え歌が多用されているのが特徴。
      むしろ替え歌こそがこの作品の一番の聴きどころです。
    • メゾン・ド・関ケ原(2018年)
      小早川秀秋をラッパーにしてしまった怪作。
      ラジオドラマにラップを取り入れた意欲作、ではあるのですがちょっと中途半端。
      名古屋局制作でラップ音楽はAViAさんが担当。
    • あたふたオペラ「からめん」(2022年)
      主演の又吉秀樹さんを初めてとしてプロの声楽家が多数出演し、オペラ「カルメン」の替え歌を歌い上げる不思議な作品。
      普通の会話部分もきちんとコメディとして面白いのが素晴らしいです。
      ただオペラ部分のパロディネタは素人にはちょっと難しすぎます。
    • あたふたオペラ からふる物語(2023年)

「あたふたオペラ」シリーズの第2弾。こちらはプッチーニのオペラ4作品をフィーチャー。
前作以上にボリュームのある替え歌と、ボケとツッコミが続く芝居部分がなんともいえない雰囲気を醸し出している。

少年(中高)

  • 青春デンデケデケデケ(1991年)
    青春アドベンチャーの前番組である「サウンド夢工房」で放送された作品で、原作は芦原すなおさんの直木賞受賞小説
    これも「ゴー・ゴー!チキンズ」と同じ、いわゆる「バンドもの」ですが、実際にバンド活動を行っていた人気声優4人組「スラップスティック」(古川登志夫さん、古谷徹さん、鈴置洋孝さん、曽我部和恭さん)が出演しています。
    サウンド夢工房時代を代表する名作だと思います。
  • 翼はいつまでも(2002年)
    「青春デンデケデケデケ」とは違って主人が自ら音楽をやるわけではありませんが、この「翼はいつまでも」も特定のミュージシャンをフューチャーした作品です。
    「青春デンデケデケデケ」がベンチャーズであるのに対して、「翼はいつまでも」がビートルズ。
    ビートルズサウンドに乗せて、60年代のやるせなくも甘酸っぱい青春物語が繰り広げられる良作です。

少年(幼小)

  • 走れ歌鉄!(2016年)
    青春アドベンチャー随一の「ミュージカル風」ラジオドラマ。
    というか、適度に抽象化された舞台設定といい、実際の少年少女が演じていることといい、子供が演じるこんなミュージカルが本当にあってもおかしくないと感じさせられる作品。
    登場人物がいきなり歌いだすミュージカル展開は人を選ぶかもしれないが、全体的に嫌味にならない程度にうまく抑えています。

多ジャンル(競作)

  • サウンド・ドライブ(2003年)
    「音」をキーワードにした、1話15分完結の短編作品集でした。
    NHK名古屋局制作らしい、抽象的でアンニュイな雰囲気が特徴です。
    BANANAさんが担当された音楽も、脳天気な「ロスト・タイム」とは全く違うものでした。

その他にも…

例えば、「ネムコとポトトと白い子馬」、「悲しみの時計少女」、「おしまいの日」など谷山浩子さんが原作・主演している作品では谷山さんの楽曲が効果的に使われるのが常でしたし、主演したマナカナさんの曲を毎回必ずかけた「マナカナの大阪LOVERS」、「マナカナの大阪WORKERS」など独特な工夫をしている作品もありました。

それにしても、こうしてまとめてみて気が付いたのですが、良作の何と多いこと!
ラジオドラマにとって音楽がいかに重要かがわかるような気がします。


■シリーズ「青アドポーカー」
作品間の緩やかな繋がりを楽しむこの企画。
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