ロスト・タイム 作:佃典彦(アドベンチャーロード)

格付:A
  • 作品 : ロスト・タイム
  • 番組 : アドベンチャーロード
  • 格付 : A+
  • 分類 : 冒険(秘境漂流)
  • 初出 : 1990年2月5日~2月16日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : 佃典彦
  • 音楽 : BANANA
  • 演出 : 吉川孝司
  • 主演 : 神谷尚吾

航海日誌1990 byネズミ
「アホな少年5人とともに漂流すること今日で四日目。
唯一の食料である缶詰も残り少なくなったのだった。
彼らを襲う不安と焦燥。
我輩はこっそり焼き鳥の缶詰を食ったのだ。美味かった。」

夏合宿恒例の肝試し大会の会場を探して幽霊船フラ・フープ号に潜りこんだイサムとグズは、船内で思いもかけず中学時代のサッカー部の友人であるイワナガ、ゴロー、ハカセと出会う。
しかし再会を喜ぶのもつかの間、幽霊船フラ・フープ号は5人とネズミ1匹を乗せたまま、なぜか勝手に漂流を始めてしまう。
いつ終わるとも知れぬ漂流。
5人は食料を節約するため、しりとり合戦による見苦しい缶詰争奪戦を繰り広げる。
それにしても、中学時代のサッカー部のメンバーが乗り合わせたのは偶然か、はたまた神のいたずらか。
実は神のいたずらなのだった…


名古屋の劇団B級遊撃隊を主宰する佃典彦さん脚本のオリジナルのラジオドラマです。
2013年2月に放送された脚本家競作の短編シリーズ「新・動物園物語」で、佃さんが第3話(第4回と第5回)を担当されていた関係で取り上げてみました。

数少ないオリジナル脚本

こちらの記事でまとめたように、青春アドベンチャー系の番組では小説等を原作とする作品が主体です。
特にアドベンチャーロード時代はオリジナル脚本の作品は非常に少なく、アドベンチャーロード全106作品のうち、現時点で私が明確な原作を確認できていない作品は本作以外には以下の3作だけです。

  • ステレオ歌謡ファンタジー黒いドレスの女-”ワインレッドの心”より(1986年・佐々木守さん作)
  • サハラの涙(1988年・山崎晴哉さん作)【追記③】
  • 21世紀のユリシーズ(1987年・横光晃さん作)【追記①】

アドベンチャーロード晩期の作品

ちなみに本作の放送時期は何と「新・動物園物語」が放送された2013年から23年前の1990年。
アドベンチャーロード105作の歴史の中では最後から2作目の作品になります。
アドベンチャーロードで最後に制作されたのは中津文彦さん原作の「ラバウルの秘宝」でした。
「ラバウルの秘宝」の放送後に、荻原規子さん原作の「空色勾玉」及び三浦浩さん原作の「ブルータスは死なず」の再放送があり、アドベンチャーロードとしての放送が終了。
このあと、特別番組である諸星大二郎さん原作「続・西遊妖猿伝」を挟んで、「サウンド夢工房」に衣替えでした。
う~ん、懐かしい。

あくまでコミカル

さて、本作の内容は、中学時代のサッカー部の出来事に思いを残したままバラバラになってしまった5人が、再び協力してその心残りに向かい合っていくさまを描いています。
しかし、能天気なネズミを語り部にしており、全然重くない雰囲気で話は進行します。
BANANAさんによるオリジナル音楽もあくまでお気楽な感じ。
特に序盤の「しりとり合戦」のシーンは、イサムの不甲斐なさとイワナガの強引さ、そしてその他の3人の無責任さが爆笑を誘う名(迷?)シーンです。
途中で怪物に襲われたり、女神が出てきたりする荒唐無稽で軽い調子の話ですが、最後は少しだけシリアスになり、とても楽しく聞ける話でした。

隠れた名作?

本作品の放送後に早々に番組(アドベンチャーロード)が終了したこともあり、恐らく再放送はされていないのではないかと思いますし、そもそも著名な原作が付いている作品でもありません。
そのため、青春アドベンチャー系の番組の長い歴史の中ではほぼ無名に近い作品だと思います。
確かに息をつめて真剣に聞くような大作ではありませんが、気軽に聞くにはとても良い佳作だったと思います。

劇団B級遊撃隊

主役のイサム役は劇団B級遊撃隊の結成メンバーである神谷尚吾さん。
脚本の佃さんと主役の神谷さんは劇団B級遊撃隊のコンビということになります。
劇団B級遊撃隊は1986年の旗揚げだそうですので、本作が放送されたのは旗揚げからまだ間もない頃だったことになります。

↓外部リンク(劇団B級遊撃隊ホームページ)
http://www.bkyuyugekitai.com/
https://bkyuyugekitai.wixsite.com/bkyuyugekitai

よしかわこうじさんの謎

それと本作で謎なのは演出の「よしかわこうじ」さん。
私の知る範囲で(かなり漏れの多い範囲ですが)、青春アドベンチャー系列の作品でご担当されているのはこの1作だけだと思います。
上記のとおりこの作品、劇団B級遊撃隊のコンビで制作されているので、その関係者の方なのかもしれません。
一方、ネットで検索するとアニメの演出家で吉川浩司(よしかわこうじ)さんという方がいらっしゃるようです。
当時23歳くらいなので可能性が低いと思いますが、仮に吉川浩司さんだとすると名作「ジャイアントロボ THE ANIMATION-地球が静止する日」で演出助手をされる数年前ということになります。
ご本人にメールで聞いて見ようかとも思ったのですが、ネットで調べても連絡先となりそうなところはみあたりません。
そもそも演出家という職業の方がどのような形で仕事の仕方をしているのかも私は良く知りません。
会社には雇用されずにフリーでやるのが通常なのでしょうか?
そもそもアニメの演出家の方がラジオドラマの演出を担当するなどということがありえるものなのでしょうか?
やはり単なる名前の一致で別人なのでしょうか。
どなたかご存知に方がいらしゃいましたらご教示ください。(その後の状況を【追記②】に書いています)


【追記①】13.12.23
「21世紀のユリシーズ」の記載を追加

【追記②】14.8.18
本作品の音楽を担当されたBANANAさんのホームページによれば、本作品の演出の「よしかわこうじ」さんは「吉川孝司」さんとのこと。
(外部リンク)http://www.banana.gr.jp/pages/radio/nhk_fm01.html
本文で書いた推測はやはり全くの間違いのようで、「よしかわこうじ」さんはどうもNHKの方のようです。
これに従い、冒頭の作品紹介のところは「吉川孝司」と修正しました。
これにて一件落着...という形で無事に解決したと思ったのですが、検索してみると、NHKには「吉川幸司」さんという方もいらっしゃるようです。
「吉川幸司」さんは大河ドラマ『新選組!』チーフプロデューサーなどをされている方のようです。
「吉川孝司」さんと「吉川幸司」さんは単なる間違いなのか、それともお二人いらっしゃるのか。
謎はむしろ深まってしまいました...

【追記③】15.1.18
サハラの涙」の記事を書くにあたり、原作小説が存在することを確認しました。

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