1975年に生まれて 作:古川健(特集オーディオドラマ)

格付:A
  • 作品 : 1975年に生まれて
  • 番組 : 特集オーディオドラマ
  • 格付 : A
  • 分類 : 日常
  • 初出 : 2025年3月22日
  • 回数 : 全1回(60分)
  • 作  : 古川健
  • 演出 : 藤井靖
  • 主演 : 山口馬木也

深夜の高速道路。
いつも耳を傾けているラジオ番組が終わった。
もうすぐ午前4時、俺は浜名湖で見る朝焼けを夢想する。
お金では苦労しどおしの人生だったが、朝焼けを見ると疲れが吹き飛んでしまう。俺の王様の時間だ。
でも最近、娘の美緒のことを考えると心に影が差す。
苦労して大学に入れたのに就職活動をせずにボランティアに本腰を入れたいというのだから。
娘にはお金で苦労して欲しくないのに。

鬼平犯科帳 兇剣
池波正太郎原作、松本幸四郎主演。山口馬木也扮する平蔵の旧友・岸井左馬之助がふたたび登場するシリーズ第7弾。長谷川平蔵は同心・木村忠吾を伴い、父・宣雄の墓参のため16年ぶりに京都を訪れた。墓参を終えた平蔵と忠吾は宿に向かう道中、ならず者に追わ...

本作品「1975年に生まれて」はNHK-FMの「特集オーディオドラマ」(FMシアターの10分拡大版)で放送されたオーディオドラマで、脚本は劇作家・俳優の古川健さんです。

古川健さん脚本作品

古川さんの作品は青春アドベンチャー「ベルリン1989」(オリジナル)、「1492年のマリア」(脚色)を紹介済み。
いずれも外国を舞台にし(主人公は外国人)、歴史的な出来事を背景に個人の生き方を描き出す誠実な作品でした。

トラックドライバーが主人公

本作品の舞台は一転し、現代の日本。
主人公は娘との距離感に悩む普通のアラフィフおじさん(トラックドライバー)です。
タクシードライバーが主人公というと「飛ばせハイウェイ、飛ばせ人生」や「10トンドライバーのトパーズ」のように佳作が多い印象。
なんかね、夜の高速道路の様子が詩情豊かでオーディオドラマにあっているんですよね。

普通の家族の物語

さて、話を元に戻しますと(トラックドライバーの日常はサラリーマンとは少し違うとはいえ)本作品は現代日本の普通の日常を描いた作品。
いわゆる団塊ジュニア世代であることや彼の親世代が学生運動の世代だったことがストーリーの底流になっていますが、作中、これらがなんらかの現実の事件を引き起こすことはなく、普通の家族の物語に終始します。

父と娘

しかしあくまで誠実な語り口は過去作と同様。
父と娘の物語としては驚くほど正統的。
もちろんふたりが衝突するシーンもあるのですが、心の底ではお互いを信頼していることがわかる優しい話です。

山口馬木也さんのお父さん役

この作品の雰囲気を作り上げている最大の功労者はやはり主演の山口馬木也さんでしょう。
個人的にはやはり「羽州ぼろ鳶組」の武蔵(たけぞう)なのですが、正直、武蔵役よりも良いです。
今思えば武蔵役は少し若作りをしすぎていた気もします。
本作品の山口さんは本当に自然体で共感の持てる演技です。
まあ私自身が娘を持つ父親だからかもしれませんが。

他の出演者

他の出演者のみなさんもとても手慣れた感じで安心して聴ける。
ラジオ番組のパーソナリティ役の成河さんは「白狐魔記シリーズ」や「昼も夜も彷徨え」、「武揚伝」といったドマジメな役も嵌っているのですが、「もと天使松永」や「ウブヒメ」などの少し瓢げた役も巧みなんですよね。
また、彩乃かなみさんや野々すみ花さんといった宝塚の元トップ娘役の女優さんのオーラを感じられない演技もいっそお見事です。

田村芽実さん

そして娘の美緒役は田村芽実さん。
「ウブヒメ」では成河さんと共演されていましたね。
正義感が強くちょっと頑固な娘さんを声だけでよく表現されていると思います。
ただまあ正直なところ、この美緒さんについては、まずは食い扶持を稼げるようになってから理想を語ってほしいなあと、娘を持つ父親としては思いますけどね。
「現世を忘れぬ久遠の理想」ということで。

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