- 作品 : オペレーション太陽(ソル)
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B
- 分類 : SF(日本)
- 初出 : 1998年4月13日~4月24日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 小池潤
- 脚色 : 富永智紀
- 音楽 : 田頭勉
- 演出 : 保科義久
- 主演 : 西翔平
飛行船・太陽号。
全長250m、太陽光により動力を得て地磁気を利用して推進するその巨大飛行船は、大勢の見物人に見守られて、世界平和をアピールする世界一周旅行に旅立った。
ふとした偶然から太陽号に乗りあわせた少年・時夫は、乗組員の一員としてフライトに同行することとなる。
しかし太陽号のフライトには「オペレーション・ソル」と呼ばれている真の計画が隠されていた。
「オペレーション・ソル」を実施しようとする飛行船の人々とそれを力尽くでも阻止しようとする人々の戦いが始まった。
小池潤さんの小説を原作とするラジオドラマです。
原作は1994年に理論社の「ファンタジーの冒険」というシリーズから発刊されており、一応、児童文学の範疇に入る作品だと思います。
ライトノベルではなく児童文学
1994年というとアスキー・メディアワークスが電撃文庫を創刊してから1年後の時期であり、いわゆるライトノベルの草創期にあたります。
本作品も、少年が主人公であること、SF的な要素が意外と濃厚であること、後半に結構激しい戦闘シーンがあるなど、ライトノベル的な要素もあります。
特に中盤、ラヴェルの名曲・ボレロに乗せて、いってみれば「精神攻撃」を仕掛けるシーンはなかなかの迫力です。
しかし、ライトノベルというには、いかんせんテーマが真面目(説教臭いともいいますが)過ぎます。
また、帰国子女で日本の学校に馴染めずにいた時夫が、最後には自ら行動を起こすようなっていく、という本作品の顛末は、児童文学の王道ストーリーだと思います
納得できない
さて、本作品の内容についてですが、どうしても気になったのが、やはり「オペレーション・ソル」の扱い。
「オペレーション・ソル」を実行しようとする主人公側の人たちに対して、作中でも「ファシスト」や「テロリスト」などの指摘があるのですが、やっぱりあれって立派にテロ行為ではないでしょうかね。
もちろん、戦争を自分達の欲望を達成するための手段として利用しようとしている敵対組織側の論理は論外だと思いますし、作中で語られている飛行船の人たちの動機も尤もだと思います。
しかし、目の前の平和を長引かせるための地道な努力を放棄して、短絡的に人に恐怖感を与えることによって自らの意思を強制するという行為は、例えそれが物理的な暴力でなかったとしても、立派なテロ行為だと思います。
テロ行為は問題解決のための地道な努力を投げ捨てるということであり、結局、投げたらいかん、ということにつきるのだと思うのですよ。
そういえば
昔、近鉄の鈴木啓示投手がACのTV広告(いじめ問題でしたでしょうか)で、「投げたらアカン!」って言っていましたね。
それを見るたび「貴方は投げるのが仕事でしょう!」と子供心に突っ込んでいたのを思い出しました。
…訳の分からない話になってしまったので、ちょっとだけ話を戻しますと、実は作中でも堀博士は自分の矛盾に気がついており、内心、忸怩たる思い持ちながら計画を実行したのではないかと感じます。
つまり作者自身もわかっていながら児童文学という性格上、あくまで単純化した正義を示したのではないかと感じました。
ちなみに、青春アドベンチャー系の作品で、過激な環境保護団体が登場する作品としては他に「遠い海から来たCOO」や「氷山の南」があります。
彼らの主張の当否は聴いた方がそれぞれ判断することだと思いますが、個人的には胡散臭さを感じざるを得ません。
西翔平さんってどんな方?
さて話は変わりまして、本作の出演陣についてです。
主役の少年・時夫役を演じるのは西翔平さん…なのですが、この方がどんな方か今ひとつわかりません。
俳優(当時は子役?)の方のようなのですが…
青春アドベンチャーでは子供の役は、女性の声優さんではなく実際に子供である俳優さん(子役)が演じることが多いのです。
しかし、子役で有名な方は限られているので、その後、その子役さんが俳優としてよほど大成しないと、どのような方なのか、さっぱりわからなくなってしまいます。
以前紹介した作品だと「ミヨリの森」もそんな感じでした。
ベテランコンビ
その他、本作品の出演者で特筆すべきは日下(くさか)武史さん(堀博士役)と矢島正明さん(ナレーション)の大ベテランコンビでしょう。
実質的な主人公である堀博士役を演じる日下さんは1931年生まれで、劇団四季の創設者の一人である俳優さん。
洋画吹き替えの声優やナレーションでも有名で、「アマデウス」のサリオリの吹き替えが有名なようです。
ちなみに青春アドベンチャーでサリオリといえば「マドモアゼル・モーツァルト」の磯部勉さん。こちらもなかなかでした。
クイズ・ターイムショック
一方の矢島正明さんは1932年生まれで、専業声優の草分けのような方です。
やはり洋画の吹き替えやナレーションで活躍された方です。
ちなみに2013年現在、日下さんも矢島さんもご存命のようです。
矢島さんの吹き替えでは「スタートレック」のカーク船長が有名ですが、一般的にはクイズタイムショックの出題担当、といった方がわかりやすいでしょうか。
何とタイムショックの出題担当を40年以上続けていらっしゃいます。
あくまで記憶にある範囲なのですが、声が全然、劣化していない気がします。凄い。
矢追純一UFOスペシャル
しかし個人的に矢島さんの声で一番印象的なのは、何と言っても「木曜スペシャル・矢追純一UFOシリーズ」のナレーション!
当時を覚えておいでの方なら言うまでもないことですが、流行ったんですよ、矢追純一。
毎回、「今回こそ衝撃の真実が分かった!」という勢いで番組はスタートするのですが、引っ張って引っ張った末に、最後はいつも「~なのかもしれない」という曖昧な結論で終わるのが、黄金のマンネリパターンでした。
幼いながらちょっと胡散臭く思ってはいましたが、それでも子供心にすり込まれた印象は強烈で、今でも「米軍は実は墜落したUFOをどこかに隠しているのではないか」と心のどこかで思っているような気がします。
少なくとも「ロズウェル事件」とか「マジェスティック12(トゥエルブ)」とかの胡散臭い用語は一生忘れないでしょう。
その記憶があるからこそ石垣ゆうきさんの漫画「MMRマガジンミステリー調査班」なども楽しめたのだと思います。
そういえば青春アドベンチャーでも「ロズウェルなんか知らない」という作品がありましたね。
この作品の原作者の篠田さんも矢追純一UFOシリーズに頭をやられてしまった世代なのでしょうか。
スピリチュアルとかより全然まし
公共の電波や雑誌でUFOのようなインチキ番組をやるな、という意見もあるでしょうが、スピリチュアルとか、パワースポットとかの胡散臭い番組に比べたら、UFO番組の方がずっと娯楽性が高かったと思います。
それにしても、テレビ局の方々、スピリチュアル番組とかをゴールデンタイムで放送して、本当に信じちゃう人がいたらどうするんでしょうね。
UFOを信じさせちゃうことよりずっと罪深い気がするのですが。
…だいぶ脱線しましたが、そういう訳で私は矢島さんのナレーションを聴くだけでドキドキしてしまう、パブロフの犬状態なのです。
でも、そういった事情を除くとしても、ベテランの矢島さんのナレーションがこの作品に独特の雰囲気を与えているのは確かだと思います。
丸尾聡さんご出演?
出演者に関して最後にもうひとつ。
出演者に丸尾聡さんのお名前があるのですが、これは脚本家の丸尾さんなのでしょうか。
丸尾さんは青春アドベンチャーでは「バッテリー」、「精霊の守り人」、「闇の守り人」、「世界でたったひとりの子」など多くの作品を脚色されており、この番組と縁があるのは確かです。
そもそも劇作家ご自身が役者として舞台に立たれることも往々にしてあることのようですので、同一人物と言うことも大いにあり得ると思います。
ちょっと気になります。
(追記:丸尾聡さんに関してコメントを頂きました。コメント欄もご参照ください。)
【保科義久さん演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。
コメント
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脚色の劇作家・丸尾聡さん自身が出演しています。あの甲高いハスキーボイスは間違いなく丸尾聡さんです。
ちなみにNHKの公式サイトの記念撮影で、サングラスの金髪の小太りの中年が丸尾聡さん本人です。かなり自信あります。
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ザンジバルさん
コメント、ありがとうございます。
丸尾さんのお声をご存じとは詳しいですね!
そういえば「怪人二十面相・伝」で北村想さんご自身がご出演されていたり、逆に一時期の常連出演者だった前田悠衣さんが脚色している作品もあったりしますね。
私は演劇界に関して素人なのですが、やはり同じ演劇を志す方々なので、結構、こういうことは多いのでしょうね。