- 作品 : タイガーにしなさい!
- 番組 : 青春アドベンチャー(特集・年忘れ青春アドベンチャー)
- 格付 : B-
- 分類 : コント
- 初出 : 1997年12月15日~12月19日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 作 : 藤井青銅
- 演出 : 松浦禎久
- 主演 : 小川範子、筧利夫
「銀河系のお荷物」あるいは「太陽系の暴れん坊」と呼ばれるこの星。
わたしは、銀河連邦の監視員として、この「地球人」というやっかいな連中を1年間監視してきた。
今日はその最終日。
地球人に見つからないように虎(寅)に化けた後任の監視員がやってきたようだ。
彼も気の毒に。
これからの引継ぎで「この1年にこの国で起こった出来事」を聞いたら、あまりの成長のなさに監視員を引きうけたことを後悔してしまうかもしれない…
この星はいつになったら銀河連邦に加盟できるくらい成熟してくれるのだろうか。
本作品「タイガーにしなさい!」は、長い間、NHK-FM「青春アドベンチャー」の年末の恒例特番だった「干支シリーズ」の一作であり、1997年末に放送されました。
ラジオドラマ?コント?
青春アドベンチャーは基本的にはラジオドラマを放送する番組です。
本作品も、冒頭の粗筋のとおり、一応、銀河連邦の監視員による年間報告という体裁をとっているので、作品全体としてはラジオドラマになっていると言えなくもありません。
ただし、この干支シリーズは、その1年間に起きた出来事を、風刺を効かせてコント仕立てで振りかえる内容であり、特にこの「タイガーにしなさい!」では、主役のふたりが作品中で「丑役の小川範子です」、「寅役の筧利夫です」ときっちり自己紹介してしまっており、やはりコントとしか言いようがない作りになっています。
ちなみに本作品の名称はNHKの公式資料では「タイガーにしなさい!」ですが、実際の放送上の表現としては「モ~たいがいにしなさい!」と発音されています。
「モ~」の部分は、前年の「モー!いいかげんにして!」からウシ役の小川範子さんが引き継いでいます。
小川範子さん→筧利夫さん
さて、本作品の主演は、ウシ役の小川範子さんとトラ役の筧利夫さん。
例によって前年の監視員役である小川さんが進行・説明役で、新しい監視員役である筧さんが突っ込み役です(翌年の「「卯」の音も出ない!」では筧さんが説明役に回る)。
考えてみると、当時、アイドル歌手でもあった小川範子さんと、当時劇団「第三舞台」の主力俳優でTVドラマ「ホームワーク」出演以降はお茶の間でも人気になった筧利夫さんという、干支シリーズの長い歴史の中でも出演者が有数にキャッチーな組み合わせの作品でした。
おふたりとも主演経験あり
ただ、このおふたりは、小川さんについては「星虫」(1992年)、筧さんについては「紅はこべ」(1994年)ですでに青春アドベンチャーで主演経験があります(後の2018年に「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」で再度主演)ので、納得のキャスティングではあります。
それにしても筧さんは声がでかい。
勢いがある演技をする、という意味ではまさに青春アドベンチャー向きです。
小川さんも、どこか素人臭いしゃべり方がかえって好印象につながるのは得しているなあと思います。
各回の概要
さて、この「タイガーにしなさい!」の各回で取り上げられたネタは以下のとおりです、
第1回:経済
「消費税アップ」「火だるま行政改革」「香港が中国に返還」
消費税は商品ではないので、「消費税の値上げ」って言葉としておかしいと思う。
「行政改革」ネタでは藤井青銅さんお得意の替え歌がさく裂。
「どんなに行革しても足りないくらい、あ~また邪魔してくれた、すべて転んでしまった、まるで火だるまでした」(Le Couple の「ひだまりの詩」の替え歌)
第2回:スポーツ
「サッカーW杯初出場」「伊良部大リーグへ」「大阪五輪招致運動」
前年の「モーいいかげんにして!」で放送された清原ネタの続きで伊良部ネタを作っている。
なお、筧さんは小学生のころサッカー部だったらしい。
第3回:芸能
「安室奈美恵結婚」「声優志願者増加」「萬屋錦之助・勝新太郎死去」「もののけ姫大ヒット」
芸能人はたいてい離婚するので、結婚ネタは後で振りかえると微妙な気分になることが多い。
声優人気は前年のエヴァンゲリオン人気と結び付けて紹介しており、エヴァンゲリオンについて「今までのアニメと大差なく見える」と辛口。
個人的にも庵野秀明監督であれば「トップをねらえ!」や「ふしぎの海のナディア」の方が良かったと思う。
第4回:(社会的な出来事?)
「拓銀・山一破たん」「ナホトカ号石油流出事故」
金融不祥事、証券不祥事が相次いだこの年。
北海道拓殖銀行と山一證券の破たんは衝撃的でした。
しかしNHKだからか「ばくぎん、らばいち、やぎはん、めんようシティ銀行」などと言い換えられると、途端に脱力系になってしまう。
第5回:文化的なこと
「たまごっち大ブーム」「失楽園大ヒット」「インターネットの普及」
たまごっちもNHKらしく商品名はださないけど、作中で連発される駄洒落でほぼバレバレ。
なお「育てげーのブームは現実からの逃避」というのはいくらなんでも言いがかりではないか。
風刺を旨とする作品なので毒は必要だが、上から目線と感じられるようでは、風刺としても失敗していると思う。
12年前のヒット曲
例年どおり各回のエンディング曲として、12年前の寅年にヒットした曲を流しています。
この年に使われたのは以下の5曲です。
- 石井明美「CHA-CHA-CHA」
- 少年隊「仮面舞踏会」
- 国生さゆり「バレンタイン・キッス」
- TUBE「シーズン・イン・ザ・サン」
- 渡辺美里「My Revolution」
また、この年も前年と同様にお二人以外の出演者が豊富。
しかも、吉田鋼太郎さん、橋本潤さん、八嶋智人さんなど結構豪華です。
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