紅はこべ 原作:バロネス・オルツィ(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : 紅はこべ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A
  • 分類 : 歴史時代(海外)
  • 初出 : 1994年1月24日~2月11日
  • 回数 : 全15回(各回15分)
  • 原作 : バロネス・オルツィ
  • 脚色 : 大橋泰彦
  • 演出 : 外山正恵、川口泰典
  • 主演 : 筧利夫

1789年のフランス革命から3年。
フランスは、国王の支配する絶対王政の国から、人民の支配する共和制の国へと変貌を遂げていた。
“人民の敵”となった貴族たちは次々と国外逃亡を画策。
一方の革命政府・人民委員会も必死の追及を続けたが、なぜか貴族たちは次々と亡命に成功した。
そう、亡命成功の陰には、イギリス人一味によって結成された秘密結社があったのだ。
彼らは巧緻を尽くし、機転を利かせ、恐怖に怯えるフランス貴族たちを秘密裏に脱出させ続けた。
そして、ことが成功した暁には、必ず人民委員会の誰かのポケットに、赤く小さな星型をした花のしるしを残した。
この印から、正体不明のその秘密結社はこう呼ばれた、“紅はこべ”と。



1990年代初頭のまだ始まって間もない頃の青春アドベンチャーでは、「世界名作シリーズ」と銘打って、昔の世界的に有名な小説を何作品もラジオドラマ化していました。
イギリスの作家バロネス・オルツィが1905年に発行した小説「紅はこべ」を原作とするこのラジオドラマも、その「世界名作シリーズ」の一作です。
ちなみに「世界名作シリーズ」の他の作品としては、「アドリア海の復讐」(ジュール・ヴェルヌ原作)、「ロビン・フッドの冒険」(ハワード・パイル原作)、「モンテ・クリスト伯」(アレクサンドル・デュマ原作、内野聖陽さん主演)などがあります。

パーシー=筧利夫

さて、本作品の一番の魅力は、何といっても主役のサー・パーシー・ブレイクニー(28歳)を演じる俳優の筧利夫さんでしょう。
イギリスきっての大富豪で、皇太子の無二の親友。
社交界の人気者で、ハンサムな顔立ちは言うに及ばず、並外れた背丈でパリ直輸入の奇抜な服をイギリス紳士特有の完璧な上品さで着こなす。
そんな色男でありながら、裏では変装して自ら好んで死地に飛び込んでいく、勇敢というより、根っからの冒険好き、スリル好きの好男子。
それがサー・パーシー・ブレイクニーであり、その彼をそこはかとない明るさで演じたのが筧利夫さんなのです。

筧利夫さんの経歴

大阪芸術大学の学生だった時代に劇団☆新感線に参加して役者の道歩み始めた筧さんですが、1992年にはTBSドラマ「ホームワーク」に出演し注目を浴び、同年には「寝取られ宗介」で第7回高崎映画祭の最優秀新人賞を受賞。
本作品放送時は鴻上尚史さん主宰の劇団第三舞台に参加していた時期でした。
さらに、その後「踊る大捜査線」の新城管理官役などでブレイクしたのは皆様ご存知のとおりです。
ちなみに年男だった1997年・1998年には年末恒例だった「年忘れ青春アドベンチャー・干支シリーズ」にも出演され、2018年には青春アドベンチャーでは久しぶりにちゃんとしたドラマ作品(火喰鳥 羽州ぼろ鳶組)にも出演されました。

色々な面でパーシー=筧利夫

さて、このパーシー、確かに伊達男で女性人気はあるのですが、普段は紅はこべとしての顔は隠している設定であり、作中でも「イギリスきっての昼行燈」などというひどい評価もされています。
つまりカッコいいだけの役ではないわけで、このナンパで脳天気な側面を含めて筧さんが何ともはまっているのです。
まさに筧さんのためのドラマといえるでしょう。

動機が不明だと深みが生まれない

ただちょっと気になったのが、このパーシーのフランス貴族を助ける原動力が何なのかを説明していないこと。
特に序盤の貴族たちの驕慢な発言を聞いていると、彼らの悲劇にどうしても共感できません。
パーシーの救出活動も、単なる退屈しのぎの愉快犯としてやっているのではないかと感じてしまいます。
まあ、そんなパーシーだからこそ筧さんの演技がぴったりはまっている面もあるのですけどね。

青春アドベンチャーのフランスもの

それにしても、せっかくのフランス革命という背景があるのだから、革命の栄光と蹉跌、歓喜と苦悩をうまく取り込んだ方が作品に深みが出ると思います。
これは説教臭い話にして欲しいということではなく、そうした方がエンターテイメント作品として一段、上質になるように感じます。
その点で、個人的には本作品より「スカラムーシュ」や「赤と黒」の方が好みではあります。
そういえば、青春アドベンチャー系のラジオドラマでは「二都物語」、「ベルサイユのばら外伝」、「スカラムーシュ」など、フランス革命絡みの作品を多く放送しているのですが、フランス革命自体を正面から取り扱った作品はないと思います。

フランス革命を正面から

最近、佐藤賢一さんの「小説フランス革命」を読み終えたからかもしれませんが、ここらで一度、ミラボーやダントン、デムーラン、ロベスピエールなどの物語を聞いてみたい気もします。
話が横道にそれましたが、それはそれとして本作品は筧さんの演技を聞いているだけでも楽しい作品ではあります。
期待して聴いて良い作品だと思います。

筧さん以外の出演者

筧さん以外の出演者としては、「ブラジルから来た少年」・「ダーク・ウィザード」などと同様に気持ちの悪い演技が印象的なショーヴラン役の海津義孝さん、パーシーの妻マルグリート役でやたらとモノローグが多い「こだま愛」さん、そしてナレーションの若葉ひとみさんなどが中心。
若葉さんといえば、本作品はほぼ毎回、冒頭の約2分間を使って定型の作品紹介が入る親切設計。
毎回15分のうち2分ですからかなりの割合をこれに使っています。
通常の青春アドベンチャー(10回連続)より多い15回連続の作品だからできる贅沢な時間の使い方です。

作品にあったテーマ曲

また、この冒頭の作品紹介からそのままつながる番組のテーマ曲がまた秀逸。
「抄話館 穏悠堂」さんのホームページ(リンク一覧をご覧ください)によれば、「ウルフガイ 狼の怨歌」というCD収録の「虎4のテーマ」というらしいのですが、作品にぴったりです。
選曲の伊藤守恵さん、いつもながらいい仕事しています。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。こちらをご覧ください。傑作がたくさんありますよ。



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