【なんでもベストテン⑥】最も採用されている原作者(その2)
ラジオドラマ番組である「青春アドベンチャー」において、原作として採用された数が多い作家をランキング形式で発表するこのシリーズ。
前回に引き続きまして、今回はいよいよ3作品以上採用されている方の発表です。
この方々は同率で12位となりますが、実は18人もいらっしゃいます。
今回もアイウエオ順、敬称略での紹介です。
(注:番組名の略称は、SA=青春アドベンチャー、SY=サウンド夢工房、AR=アドベンチャーロード、FA=FMアドベンチャー、CH=カフェテラスのふたり、HH=ふたりの部屋です。)
◆第12位(タイ) 3作品
今回のランキングではやや古めの作家さんが多いのですが、伊坂さんは数少ない、今まさに旬の人気作家さんです。
放送時期も皆、比較的最近です。
井上ひさし
戦後を代表する名劇作家にして小説家、井上ひさしさんについては、1979年「ふたりの部屋」時代に「十二人の手紙」の採用例があるのですが、その後長らく採用されていませんでした。
それがなぜか令和の世の中に2作品も採用。
令和の2作品は両方とも吉田浩樹ディレクターの作品で、主演も両方とも加藤諒さんです。
でも技巧に飛んだ「十二人の手紙」のすばらしさを超えることはなかなかできないかな。
江戸川乱歩
- 妖怪博士と少年探偵団ほか【シリーズ】(1986年~・AR)
- 元祖江戸川乱歩の奇妙な物語(1991年・SY)
- 黒蜥蜴ほか【シリーズ】(2009年~・SA)
広川太一郎さんが明智を演じる子供向けのシリーズ(いわゆる「少年探偵団シリーズ」)と、篠井英介さんが明智を演じる大人向けのシリーズがあります。
前者は「最多放送回数シリーズ」特集の記事でも取り上げた超長篇シリーズです。
後者のうち「魔術師」と「黒蜥蜴」をすでに紹介済みです。
放送時期に20年以上の幅があるのが凄いのですが、これ以前からAMでは頻繁にラジオドラマ化されていました。
やはりラジオドラマにおいて江戸川乱歩は永遠のスタンダードなのでしょう。
荻原規子
主として和風ファンタジーの作家さんです。
「空色勾玉」は日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
「空色勾玉」と「風神秘抄」は設定上、ごく少しだけつながりがあるようです。
「これは王国のかぎ」のみ舞台がアラビアンナイト風です。
荻原浩
2007年に「僕たちの戦争」と「押入れのちよ」が取り上げられた荻原浩さん。
2016年に直木賞を受賞されたあとの2017年に「金魚姫」で故郷?に錦を飾りました。
加納一朗
- ホック氏の異郷の冒険(1986年・AR)
- 開化殺人帖シリーズ(1987年・AR)
- 浅草ロック殺人事件(1988年・AR)
主として日本の近代を舞台とした探偵ものの作品群です。
開化殺人帖シリーズは1987年の「にごりえ殺人事件」と「帝都誘拐団」の2作品です。
全て1980年代(アドベンチャーロード時代)の作品です。
喜多嶋隆
アメリカ西海岸やバブルのイメージが強い喜多嶋さん。
爽快なCFギャングシリーズ(CF愚連隊、ロンリー・ランナー)は結構お気に入り。
ギャビン・ライアル
- もっとも危険なゲーム(1984年・FA)
- 裏切りの国(1985年・AR)
- 深夜プラス1(2023年・SA)
1960年代以降に冒険小説で有名だったイギリスの作家。
NHK-FMでも1980年代に続けてオーディオドラマ化されたが、何とそれから40年近く後の2023年に3作品目がオーディオドラマ化されることになった。
佐々木譲
「獅子の城塞」と「天下城」には緩やかなつながりがあるのですが、主人公と舞台が別なので別作品としました。
佐々木譲さんは長年の実績のある作家さんですが、採用されたのはなぜか(というか単に藤井靖プロデューサー/ディレクターの意向でしょうが)2014年以降に集中しています。
宗田理
- ぼくらの七日間戦争(1985年・AR)
- ぼくら落ちこぼれ探偵団(1989年・AR)
- 春休み少年探偵団(1993年・SA)
主として若者を登場人物とした推理ものです。
「ぼくらの七日間戦争」は実写映画化もされた作品で、実写版のヒロインの宮沢りえは可愛かった。
高千穂遥
- 夏・風・ライダー(1985年・FA)
- 黄金のアポロ(1986年・AR)
- 銀河番外地、運び屋サム(1988年・AR)
FMアドベンチャーからアドベンチャーロード期の作品。
バイクレースもの、SF格闘もの、スペースオペラと多彩な顔ぶれです。
「運び屋サム」はアドベンチャーロード中期の名作。
故・沖田浩之さんが好演しています。
谷山浩子
- ネムコとポトトと白い子馬(1990年・SY)
- 谷山浩子の電報配達人がやってくる(1991年・SY)
- 谷山浩子の”悲しみの時計少女”(1992年・SY)
全てがサウンド夢工房時代の作品です。
全て不思議系の作品で、理屈っぽい人にはお勧めできないかも知れません(私のこと?)。
津村記久子
- エヴリシング・フロウズ(2017年・SA)
- ディス・イズ・ザ・デイ(2019年・SA)
- 浮遊霊ブラジル(2021年・SA)
2009年、「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞を受賞している津村記久子さん。
「エヴリシング・フロウズ」が若者を主人公にした長編、「ディス・イズ・ザ・デイ」が色々な世代の人物を主人公にした短編オムニバスでしたが、3作品目は初めてファンタジー要素のある「浮遊霊ブラジル」が採用されました。
ドナルド・E・ウェストレイク
上位に入った数少ない外国人原作者さんです。
コメディ色の強いサスペンス作品の作家さんです。
1990年代に川口泰典さんが集中的に採用しました。
長野まゆみ
- 少年アリス(1989年・AR)
- テレヴィジョン・シティ(1996年・SA)
- 天体議会~プラネット・ブルー~(1996年・SA)
幻想的なファンタジーの作家さんです。
少年アリスはなんとなんと、あの内舘牧子さんの脚本です。
藤井青銅
- 愛と青春のサンバイマン(1991年・SY)
- 超能力はワインの香り(1992年・SA)
- 笑う20世紀(1994年・SA)
前回の記事で書いたように藤井青銅さんは非常の多くのオリジナル脚本を青春アドベンチャー向けに書き下ろされているのですが、この3作品はラジオドラマに先行した原作があるため、ここでは原作者として取り上げました(その他も含めた藤井青銅さんの関連作一覧はこちら)。
なお、「笑う20世紀」はpart5まで制作されたショートショート作品ですが、藤井さんのHP(外部リンク)を拝見したところ、第1作のみ原作本がありという扱いのようなので、2015/1/11に当該部分を追記いたしました。
また、「ピーチ・ガイ~ハリウッドリメイク”桃太郎”」も原作に準じる出版物があるのですが、公式HPが「作」扱いであることに加え、かなり内容を膨らませたオーディオドラマ化なのでここでは数えていません。
藤本ひとみ
西洋歴史小説を書かれている藤本ひとみさん。
青春アドベンチャーでは、番組名が「サウンド夢工房」から変わった直後に2作品がラジオドラマ化され、その後音沙汰がなかったのですが、なぜか2020年に3作品目の「ハプスブルクの宝剣」が制作されました。
森詠
- さらばサンメル(1985年・AR)
- 真夜中の東側(1986年・AR)
- さらばアフリカの女王(1987年・AR)
全てアドベンチャーロード時代の作品です。
正当な冒険物語の「さらばアフリカの女王」が印象深いです。
連城三紀彦
- 子守歌では眠らない(1980年・HH)
- 日曜日と九つの短編(1986年・CH)
- 黄昏のベルリン(1989年・AR)
連城さんは田中芳樹さんと同じ幻影城出身の推理作家で、1984年には「恋文」で直木賞も受賞されています。
「黄昏のベルリン」は一種のサスペンスですがトリックも効いており推理作家らしい作品です。
スミマセン。第2回で終わりませんでした。
思った以上に3作品採用作家が多い。
ここに一つの壁があるみたいです。
残りの上位の発表は次回に続きます。
(その3)に続きます。
■なんでもベストテン
出演者、作品ジャンル、音楽、PV…
青春アドベンチャー又は本ブログの記事に関して、様々な角度からベストテンを調べてみました。
その一覧はこちらからご覧ください。
(※)2022/7/30
2013年2月の記事アップ後、随時修正をしてきましたが、2022年7月に「ふたりの部屋」、「カフェテラスのふたり」を範囲に含めるための大幅加筆をしました。
コメント