激レア!「原案者」がいる青春アドベンチャー作品の一覧

ゆるゆるつながり

【特集:青アド・ポーカー35】「原案」があるラジオドラマの一覧

2021年は多かった

NHK-FM青春アドベンチャーで放送されるラジオドラマは、大きく小説・漫画等の「原作」がある作品と、それがないオリジナル脚本の作品に分かれます。
前者は「原作:○○○○、脚色:○○○○」と原作者と脚本家の名前が並んで表示され、後者は「作:○○○○」と脚本家の名前のみ表記されるためすぐに見分けがつきます。
しかし、2021年11月現在、青春アドベンチャーの30年弱・400作品以上の歴史の中で8作品だけ、「原案」という方の名前が表記された作品があります(その後増えました)。
2021年、珍しくも3作品も「原案」作品があったことを記念してその一覧を記載します。

原案付き作品の一覧

光の島(2003年)

光の島 原作:尾瀬あきら(青春アドベンチャー)
照屋光(てるや・ひかる)は東京に住む海が大好きな男の子。小学校への入学を間近に控えた光のもとに、ある日、唄美島(うたみじま)に住む伯父の洋平が尋ねてきた。父の故郷でもある唄美島は、沖縄本島の南、八重山諸島の西表島からさらに南にある南国の孤島で、近年、急速に過疎化が進んだ結果、島の人口は40人しかいない。しかも、島でたった一人の小学生が転校することになり、島の小学校は廃校の危機にあった。光のもとを訪れた洋平は海の大好きな光に唄美島への移住を熱心に誘う。もちろん光の両親は大反対したが、最終的には子供を「島の宝」として待ち望む島の人々の強い思いと、なにより光自身の希望を受け入れて、唄美島に渡ることを認める。青い海と島の独特の文化、温かい島の大人達、そしてたった一人のクラスメートとともに過ごす光の唄美島での日々が始まった。

原案付き作品の中でももっともイレギュラーなのがこの「光の島」。
原作と原案がともにある珍しい作品です。
というのも直接の原作作品は尾瀬あきらさんによる漫画なのですが、この漫画にはさらに元になった森口豁さんによる「子乞い―沖縄孤島の歳月」というノンフェクションがあるための「原案」表記なのです。

タイムスリップシリーズ(2005年~2007年・2011年)

タイムスリップ源平合戦 原案:鯨統一郎、脚本:山本雄史(青春アドベンチャー)
「タイムスリップ明治維新」の事件で幕末にタイムスリップし、やっとの思いで現代へと帰ってきた女子高生・麓(ふもと)うらら。年齢・体型も元の女子高生に戻って再び高校生活を謳歌していたが、デートで訪れた鎌倉の由比ヶ浜で携帯カラオケを熱唱しているときに再び過去へとタイムスリップしてしまう。今回、目覚めた時代は平安末期、源平争乱の時代。今度もやはり何者かの手によって歴史が改変されており、源義経が挙兵していないなど微妙におかしい歴史になっている。うららは、今回も出会った25世紀人の剣崎薔薇之介(けんざき・ばらのすけ)や時間捜査官の石松とともに、歴史を正しい道に戻して、元の時代に帰るための奮闘を始めるのだが…
タイムスリップ戦国時代 原案:鯨統一郎、脚本:山本雄史(青春アドベンチャー)
リストラ対象になり自暴自棄になった時間捜査官・石松を追って、21世紀の女子高生・麓(ふもと)うららは戦国時代に飛ぶ。しかし、今回はいつもと違い3人組 -うらら、石松、そして元殺し屋の剣崎薔薇之介- の思惑はそれぞれ全く異なっていた。袂をわかった3人は、本能寺の変に向けて、それぞれの行動を開始するが…
タイムスリップ川中島 原案:鯨統一郎、脚本:山本雄史(青春アドベンチャー)
統一執行部の時間捜査官・石松は、1560年の川中島で旧知の女子高生・麓(ふもと)うららの名前を耳にする。うららは、石松と何度も一緒に時間旅行をした特異な経歴の持ち主だが、基本的には21世紀の一女子高生に過ぎないはずだ。うららが何か大きな事件に巻き込まれていることを察知した石松は、すぐさま、うららに決して1560年には来ないように警告を発する。しかし、突如、蛇型の殺人ロボットの襲撃を受けたうららは、さしたる理由もなく、警告を無視してノリと勢いで石松のいる1560年に向かってしまうのだった…
タイムスリップ大坂の陣 原案:鯨統一郎、脚本:山本雄史(青春アドベンチャー)
いつもどおり、脳天気にたこ焼き屋を探していた女子高生・麓(ふもと)うららのもとに、再び統一執行部のタイムトラベル管理官・石松が姿を現す。石松が言うには、豊臣方と徳川方が一触即発の状態にある1615年の大坂で再び歴史改変が行われつつあり、解決のためにうららの力が必要だという。前作「タイムスリップ川中島」での心の傷から立ち直っていないうららは、一旦は同行を拒否するものの、例によってなし崩し的にタイムトラベルすることになってしまう。そして、過去2回に亘りタイムトラベルしている戦国時代で、うららは意外な人物に再会することになる。

鯨統一郎さん「原案」のタイムスリップシリーズですが、実は2004年の第1弾「タイムスリップ明治維新」には原作小説があり、「原案」ではなく「原作」表記でした。
もともと「明治維新」の段階からオリジナルキャラが活躍する作品で、脚本家(山本雄史さん)の色の濃い作品でしたが、第2弾の「タイムスリップ源平合戦」から完全なオリジナルシナリオになり、「原案」表記に移行しました。

負け犬たちのミッドナイト・バス(2021年)

負け犬たちのミッドナイト・バス 原案:サレンダー橋本、脚本:蔭岡翔(青春アドベンチャー)
2年前のあの日、結局、一花を引き止めることはできなかった。そりゃそうだ、シンガーソングライター志望と言ったって所詮はプー太郎。それどころか母親が死んでからは単なる引きこもり。結婚して大阪に行く幼なじみを引き止めるようなめんどうくさいことができるはずない。でも、今、電話口で一花は泣いている。「私、もう無理かも」やっぱ、めんどくせえ。でも今度こそ何かしないといけないねえんじゃないか。居ても立ってもいられなくなった俺は大阪行きの夜行バスに飛び乗った。しかしこの深夜バス、何だか妙な雰囲気だ。乗客がやけに少ないし、運転手の顔は…ねずみ?!その運転手、もとい「運転チュ」が話し始めた。「たった一度の人生をしくじったお客様。もう取り返しのつかないお客様。恥に恥を重ねて、重ねた恥にまた恥を重ねて月まで届きそうなお客様。ルーザーラット高速バス、ギフトオブクリスマス、あっと驚くミッドナイトドリーミング号、出発します!」

「負け犬たちのミッドナイト・バス」で原案表記されているのは漫画家のサレンダー橋本さん。
どうも元ネタになる漫画があったようにも見えず、ちゃんと脚本家も「作」として蔭岡翔さんがついています。
本作品におけるサレンダー橋本さんの位置づけはいまひとつわかりません。
ご本人のTweetも「NHKオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の原案を担当しました。」というそっけないものだけですし。
謎だ。どなたかご存知の方いらっしゃいませんか?

人工心臓(2021年)

人工心臓 原案:小酒井不木、作:長谷川彩(青春アドベンチャー)
私、江戸川乱歩が探偵小説家として世に出ることができたのは小酒井不木の推薦によるところが大きい。しかし、不木の体が弱いこと知っていながら彼に創作を進め、しかも晩年ろくに彼に手紙を書く事すらしなかった。不義理をしたという負い目あればこそ、彼の全集の取りまとめに引き受けたのだが…やはり不木の妻・久枝は私に腹を立てているのだろうか、あのような奇妙なことを言い出すなんて。「人工心臓は実在致します…」

シナリオ自体は「作」の長谷川彩さんによるものと思われますが、明治・大正期の作家、小酒井不木さんによるわが国初のSF小説「人工心臓」(実在する小説)がストーリー上、重要な位置付けにあることからこのような表記になったものと思います。
江戸川乱歩や小酒井不木といった実在の人物と、博士やその妻・房子といった小説「人工心臓」の登場人物が交互に登場する不思議な作品です。

黒十字の魔女 ヴィクトリア朝怪奇冒険譚外伝(2021年)

黒十字の魔女 ヴィクトリア朝怪奇冒険譚外伝 原案:田中芳樹、脚本:菊地百恵(青春アドベンチャー)
1858年秋、大英帝国の首都ロンドン。クリミア戦争から帰還して2年、数々の怪奇事件に巻き込まれ多事多難な日々を送ってきたエドモンド・ニーダムとその姪のメープル・コンウェイにもようやく落ち着いた日々がやってきた。しかし、またしても死体が集団で移動するという怪しい噂を聞きつけてきてしまう。しかも、移動する死体の首には奇妙な形の痣のようなものがあったという。知り合った医師のグレイはそれは感染症の発疹ではないかという。確かにこの街の環境は相変わらず劣悪で感染症の危険とは常に隣り合わせ。コレラで家族を失っているニーダムとメープルには頷ける話ではある。しかし、やがてふたりはこの痣と同じ形を他でも見かけることになるのだった。

2017年にめでたく3部作(月蝕島の魔物髑髏城の花嫁水晶宮の死神)として完結したはずの田中芳樹さん原作の「ヴィクトリア朝怪奇冒険譚」がオリジナル脚本の「外伝」として復活。
本作では田中芳樹さんは「原案」扱いとなりました。
原作作品から原案作品へと続く流れは「タイムスリップシリーズ」以来だと思われます。
ひょっとしてこの後も続くでしょうか?

白銀騎士団 -高貴なる亡霊-(2025年)

白銀騎士団 -高貴なる亡霊- 原案:田中芳樹、脚本:菊地百恵(青春アドベンチャー)
エドワード7世治世下のイギリス・ロンドン。フィッツシモンズ家の当主ジョセフは、イギリス貴族社会の最下層・貧乏な準男爵ながら、知る人ぞ知る裏の顔を持っていた。それは白銀騎士団(シルバー・ナイツ)を率いて、日ごと夜ごと人ならざる敵を退治していること。大英帝国の闇の英雄サー・ジョセフ。その名は遠く東洋・日本まで鳴り響いている…かはともかく、実態はやはり貧乏な準男爵。たったふたりの従者に愚痴を言われ、勝気なメイドに小言を言われながら、逆玉を夢見つつ今日も奇妙な依頼を受けるのだか。

「黒十字の魔女」とまったく同じように「原作付き」(白銀騎士団 シルバー・ナイツ)→「オリジナル」(白銀騎士団 -高貴なる亡霊-)と進んだのがこの「白銀騎士団」。
原作者も同じ田中芳樹さん、脚本家も同じ菊地百恵さんです。

その他の作品

これらの作品の他、青春アドベンチャーで放送された作品ではないのですが、「ふたりの部屋」の「拝啓 名探偵殿 パート2 」(原案:藤原宰太郎さん)や、「エアメール・スペシャル」(原案:久保田早紀さん)などが、すでに紹介した作品における「原案」表記作品です。
また、2021年の「ピーチ・ガイ~ハリウッド・リメイク『桃太郎』~」は、書籍を原案に再構成のうえラジオドラマ化したものですが、原案の著者とラジオドラマ化の脚本家が同一人物のため、単に「作」とされており「原案」表記はありませんでした。


■シリーズ「青アドポーカー」
作品間の緩やかな繋がりを楽しむこの企画。
その他の記事の一覧はこちらです。



2021/10/20補足
この記事は元々2021年に原案作品が2作品(負け犬たちのミッドナイト・バス、人工心臓)もあったことから作成したのですが、なんとその後の11月に3作品目の原案作品が放送されることになり、3作品を前提に書き替えたものです。

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