アクア・ライフ 作:芳崎洋子ほか(青春アドベンチャー)

格付:C
  • 作品 : アクア・ライフ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : C+
  • 分類 : 多ジャンル(競作)
  • 初出 : 2005年11月14日~11月25日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : (下表参照)
  • 演出 : 江澤俊彦
  • 主演 : 大路恵美、内田健介

2003年から2012年にかけて全5作品が制作された「ライフシリーズ」。(注:追記参照)
「ライフシリーズ」は、各作品ごとにお題が設定され、それにそって10人の脚本家さんが1回15分の短編ラジオドラマを競作する企画でした。
本作品「アクア・ライフ」はその2番目に制作された作品で、お題は「水」です。
このブログでは、第3作の「ボディ・ライフ」、第4作の「ナンバー・ライフ」、最終作の「カラー・ライフ」をすでに紹介済みで、本作品の紹介により、紹介していない作品は第1作の「インテリア・ライフ」を残すのみとなります(注:その後紹介しました)。

各オムニバスの特徴

このライフシリーズは、「不思議屋シリーズ」や「名古屋脚本家競作シリーズ」と並ぶ、青春アドベンチャーにおける代表的なオリジナル短編集企画です。
「不思議屋シリーズ」は若手の脚本家を起用して比較的軽めでファンタジックな作品を指向するシリーズであり、一方で「名古屋脚本家競作シリーズ」はひたすら暗くて難解という特徴があります。
それに対して、この「ライフシリーズ」には際だった特徴はありません。

大阪局制作

敢えて言えば、「名古屋脚本家競作シリーズ」がNHK名古屋方局の、「不思議屋シリーズ」がNHK本局の制作であるのに対して、この「ライフシリーズ」は主としてNHK大阪局の制作であることが挙げられます。
そのため、本「アクア・ライフ」の脚本も、BKラジオドラマ脚本賞の入賞者と、関西在住の脚本家が参加しています。
ライフシリーズの参加脚本家は、陣容を一新した「カラー・ライフ」以外はだいたい似たような顔ぶれが並んでいました。

各話の概要

さて、本作品は前に述べたとおり “水(=アクア)”がテーマであり、各話のタイトル、脚本家、ジャンル、格付け、概要及び一言は以下のとおりです。
この10人の脚本家のうち、オリジナルの長編の実績があるのはオカモト國ヒコさん(泥の子と狭い家の物語)だけですが、山本雄史さんもタイムスリップシリーズの2作目(タイムスリップ源平合戦)以降は事実上、オリジナル作品です。
その他、棚瀬美幸さん(らせん階段神去なあなあ日常など)や横山玲子さん(赤と黒旅猫リポートなど)など、原作付き作品の脚色を担当された実績のある方はたくさんいらっしゃいます。

◆第1話 「貯水率」 (芳崎洋子)

分類 : 職業
格付 : B-
障害者施設に勤める女。就職後、数年を経て目的を見失いかけている彼女に訪れる奇跡。


超常現象が起きたのかも知れないが、全て女の頭の中の出来事と解釈し「職業」に分類。

◆第2話 「水をくれ」 (山本雄史)

分類 : ホラー
格付 : C+
のどが渇いて駆け込んだ店。店員の女は私のことを知っているというのだが。


いわゆるファンタジーかと思ったら終盤ホラーに。でもあまり怖くはない。

◆第3話 「密売屋」 (山本むつみ)

分類 : SF(日本)
格付 : B
世界的水不足の時代、水の密売屋の女は、浄水装置を作る研究者の男と出会うが。


いわゆるディストピアもの。出来はいたって普通でオチも読めてしまった。

◆第4話 「水槽の中で」 (天野夏樹)

分類 : 幻想(日本)
格付 : B+
体を壊しかねないほど仕事が忙しい男は、病気になると思ったら金魚になってしまった。


カフカの「変身」的なモチーフ。突然終わるが、何とも言い難い妙な余韻が残るのが印象的。

◆第5話 「滝」 (吉田秀和)

分類 : ホラー
格付 : C+
ふたり暮らしの姉妹。妹は姉に対してなぜか反発してしまうのだが。


愛憎入り混じった狂気の話のようだが、妹の心情がよくわからず安易に感じられる。

◆第6話 「洗面器である父に」 (小野田俊樹)

分類 : 日常
格付 : C+
都合が悪くなると物に姿を変えてしまう父。今回も家出と思いきや洗面器になっていた。


ファンタジーかと思いきや意外と地に足の着いた話。でもだからどうしたという内容。

◆第7話 「フィッシュハート、ウォーターハート」 (田中浩司)

分類 : 幻想(日本)
格付 : C
閉館が決定している図書館に、アルバイト志望の女性が現れたのだが、彼女は…


鶴の恩返しならぬ…申し訳ないが、真剣なテーマを扱うには余りに安易な物語。

◆第8話 「ゆるんだ蛇口」 (棚瀬美幸)

分類 : 日常
格付 : C+
事実婚の夫婦。すれ違う生活の中で女は不思議な水音を聞くようになる。


女は悪くないとは思うが、脚本が女性目線なので…基本的には犬も食わない話。

◆第9話 「母さんの香水」 (横山玲子)

分類 : 日常
格付 : C
夫を看取り、息子を育て上げた母の一生。しかし母には数カ月だけ別の人生があった。


致し方ないこともあると思うが、いくらなんでも女性の言い訳が多すぎる脚本。

◆第10話 「夕立のテレパス」 (オカモト國ヒコ)

分類 : SF(日本)
格付 : C+
水を伝って他人の考えを読むことができる女。ついに同じ力を持つ人間を見つけたが。


携帯を持っていないのが伏線。でもそれ以外は平凡な展開でオチも読めた。

オムニバスの使い方

なお、本作品は初出以降、現在(2014年8月)までに、2回再放送されているのですが、2009年の再放送の際は上記10話のうち、「水槽の中で」と「滝」の2話しか再放送されていません。
要は年末の日程調整に使われたのですが、短編集にはこういう使い方もあるのですね。

大阪放送劇団

さて、本作品のメインの出演者は女優の大路恵美さんと、俳優になる前から青春アドベンチャーのファンだった(詳しくはこちら)という内田健介さん。
第1話のように完全にお二人しかご出演されない回もありますが、第2話の端田宏三さんの様に他の方が出演される場合もあります。
ちなみにこの端田宏三さん、大阪放送劇団の代表者をされているそうです。
「○○放送劇団」といえばNHKの各地放送局が、NHK専属で持っていた劇団。
黒柳徹子さんの出身母体として有名な東京放送劇団を始めとして全国の放送劇団は1990年に解散したわけですが、大阪は民間の劇団に衣替えして残っているようです。
アドベンチャーロード時代の川久保潔さん、八木光生さんなどの東京放送劇団所属の方の名演に酔いしれた私としては何となく嬉しいものです。

【ライフシリーズ作品一覧】
NHK大阪局主導のオリジナル脚本の短編作品集シリーズ、ライフシリーズの作品一覧はこちらです。
是非、他の作品の記事もご覧ください。


(※)2015/5/22追記
3年の沈黙ののちに最新作「フラワー・ライフ」をもってシリーズが再開されることになりました。

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