- 作品 : 赤と黒(第二部)
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AA+
- 分類 : 歴史時代(海外)
- 初出 : 2004年6月28日~7月16日
- 回数 : 全15回(各回15分)
- 原作 : スタンダール
- 脚色 : 横山玲子
- 演出 : 真銅健嗣
- 主演 : 高橋和也
19世紀のフランス。
学問での立身出世を目論む平民出身の青年ジュリアン・ソレルは、恩師ピラール神父の取り計らいにより、フランスを代表する大貴族ラ・モール侯爵の秘書となる。
金持ち達を征服すべき対象として嫌悪しながら、華やかな社交界にも馴染んでいくジュリアン。
ラ・モール侯爵の信頼も得て順風満帆と思えたが、侯爵の娘マチルドと親しくなったことにより、再び波乱が起き始める。
計画された「第二部」
本作品「赤と黒(第二部)」は、2004年2月に放送された「赤と黒(第一部)」の続編にして完結編です。
第一部のわずか4カ月後に放送されており、タイトルからもわかるとおり、分割して放送されただけで、当初から全30回で計画された作品だと思われます。
原作はいわずと知れた19世紀フランスを代表する名作、スタンダールの「赤と黒」。
青春アドベンチャーは、若者向けのエンターテイメント作品であれば、漫画やライトノベルといった最近の作品から、「吸血鬼ドラキュラ」・「三銃士」(1995年)、「モンテ・クリスト伯」(1996年)といった「古典」と呼ばれる作品まで、様々な題材を採用する悪食な番組です。
本作品の原作も「古典」と呼ばれる作品ですが、その中でもやや大人向けの作品です。
サスペンス成分多め
さて、ジュリアンとルイーズとの恋愛模様がその大部分を占めていた前作「赤と黒(第一部)」と比較すると、本作品の、特に前半は、恋愛話からやや離れ、ジュリアンが上流社会に食い込んでいく様が描かれます。
野心家の(でも結構、短気で正直者の)ジュリアンの出世物語は、前作とはまた違ったサスペンス的な魅力があり、意外と楽しめました。
また、実際にあった歴史的な状況を背景として、社会制度(と自らの我の強さ)に敗れて破滅していくジュリアンの姿から、本作品のこのブログでのジャンルは「歴史時代」としています。
結局ドロドロ
しかし、この第二部も後半は再び恋愛色が強くなります。
今回のヒロインは自分が特権階級の一員であることに並々ならぬプライドを持つお嬢様マチルド。
良くも悪くも純真だった前作のルイーズと比較して、とてもアクの強い女性で、演じる遠山景織子さんのいかにも高慢そうな演技が似合いすぎていることも影響し、何となく気持ちの悪さが残ります。
ジュリアンも前作の時ほど恋愛に対して誠実ではなく、何やら手練手管的な小細工まで弄し始めることも、後味が良くない原因となります。
そもそも恋愛話が合計30話も続くわけで、さすがに後半に若干、飽きが来てもおかしくないはずです。
最後はやはり高橋和也さん
しかし、終盤の急展開からエンディングへの流れ、そしてその過程で再びジュリアンを始めとする登場人物が純粋で透明な存在へと変わっていく様、そしてその結果としてのエンディングはとても印象的です。
これには、終始わがままではあるもの、苦しく辛い葛藤を続けたことも事実であるジュリアンを、渾身の力で演じきった高橋和也さんの貢献も大きいと思います。
さすが真銅健嗣さん
本作品、第一部・第二部をあわせても「美しく頭も良い野心家の青年が立身出世を夢見るものの、自らも制御できない自尊心と恋心に翻弄され挫折していく」といった感じの短い1文で全体を表せてしまうほど簡単なストーリーです。
その単純な話が、これだけドラマチックで視聴者を飽きさせることもない作品となったのは、原作の魅力もさることながら、出演者やスタッフの熱意あってのことと思います。
やはり真銅健嗣さん演出作品は侮れない。
なお、各回のサブタイトルは以下のとおりです。
- パリの栄光
- ラモール侯爵邸
- 社交界の華
- 決闘
- 乙女の憂鬱
- 王妃の愛人
- 危険な恋
- 梯子
- 天国と地獄
- 侯爵の陰謀
- 道徳的恋愛
- 手紙
- 再会
- 判決
- 青い空
津嘉山正種さんの美声
また、出演者といえば本作品で外してならないのは、ラ・モール侯爵を演じた津嘉山正種さんでしょう。
津嘉山さんといえば青春アドベンチャーの後の時間に放送していたクロスオーバー11のナビゲーターが思い出深いですが、青春アドベンチャーでも「プラハの春」などいくつかの作品に出演されています。
特に本作品は「脱獄山脈」と並び津嘉山さんが出ずっぱりの数少ない作品であり、この第二部全般で、その美声を堪能できます。
最近ではお年を召されたからか、少しだみ声の発声で悪役を担当されることも多いのですが、本作品を聴いているとやっぱりいい声だなあと痛感します。
その他の出演者
その他、本作品にも前作のヒロイン・ルイーズが出演するのですが、演じるのは前作の麻生祐未さんではなく、文学座の山像かおりさんです。
「ラジオキラー」で主演している山像さんですので演技に不満があるわけではないのですが、やはりキャストはそのままの方が良いのは確かだと思います(予算の都合?スケジュールの都合?)
その他、出演者紹介に丸尾聡さん主催の「プロジェクトM」の名前がコールされるのですが、例によって丸尾さんご自身も出演されています。
「世界でたった一人の子」、「バッテリー」など青春アドベンチャーでは脚色でご活躍されている丸尾さんですが、ご自身が脚色されていない作品を含めてかなりの数の作品で端役として出演されており、まるで「隠れキャラ」のようです。
暗黒時代?
さて、本作品が制作された2004年、青春アドベンチャーは新作がわずか9作品・100回しか制作されませんでした。
2005年、2008年、2009年と並ぶ少なさで、まさに暗黒時代ともいえます。
しかし、これらの年の中でも2004年は数こそ少ないものの、この「赤と黒」シリーズのほか、「スピリット・リング」や「しゃばけ2」などもあり、本ブログでの評価は必ずしも悪い年ではありません。
数が少ないからと言ってそう悲観したものでもないですね。
コメント
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ご無沙汰しております。
ついにこの記事がと思いコメントさせて頂きます。
私はHirokazu様の聴取歴にはとても及ばず
2000年前後以降しか聴いていないのですが、
その中でも本作と封神演義は
本格大作、なおかつ飽きさせない
名作として最も印象に残っています。
本作は最初聴いているこちらが恥ずかしくなる
シーンの連続でしたが、大変素晴らしかった。
文学史に残る名作だから当然かもしれませんが
だからこその制作全体の力の入れ方が感じられました。
ここまでの名作こそ再放送してほしいのですがあれ以来聴けないのが残念です。
封神演義も思い切って再放送してほしいのですが。。。。。無理なんでしょうねぇ。
宮部みゆきの数作品も最近全くです。
再放送リクエスト取ってみたら面白いかも知れませんね。聴いているだけでなく意見してみたら何か起こってくれるでしょうか。
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コメント、ありがとうございます。
「赤と黒」は、粗筋や概要紹介ではどうにも魅力が伝わらない作品ですが、ストーリー・演技・効果が一体となりとてもレベルの高い作品に仕上がっていると私も思います。
正直、第二部中盤では少し飽き気味でしたが、終盤が、またよくできており、良い印象で聴き終わることができました。
個人的には高橋和也さんの出演作品にはずれはないと思っています。
再放送については…
そうですねえ。
そもそも、本番組を盛り上げて再視聴の機会を増やしたい、というのが、本ブログの設立趣旨なので、ご趣旨は基本的に賛成なのですが、新作がなくなるのも困りもの。
リクエストも効果があるかもしれませんが、やはりネット配信または再放送専用枠の設定を望みたいものです。
でもなかなか実現は難しいかも。
とりあえず今、デアゴスティーニが新しい「週刊〇〇」のアイデアを募集しているようですので、「週刊青春アドベンチャー」の提案をしてみました。
これの方がよっぽど難しいかも知れませんが。
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コメントありがとうございます。
おっしゃる通りで、もちろん新作が基本ですので
新作と再放送の比率は今くらいでよいと思います。
ただ、これだけ歴史のある番組ですので
「一度聴いた面白くない」再放送よりは、
いっそ高評価の古い作品を流してほしいと個人的には思うのです。
聴いていなかった人にとっては「新作」にもなりますし、
「評価する声が多かった」ものであれば誰も文句は言わないように思うのですが。。。。。
折を見てNHKさんに意見してみようと思います。
「DINER」は色んな意味で刺激的だったので楽しみです。
「週刊青春アドベンチャー」いいですね~。私は買うと思いますが、部数は伸びないかもしれませんね~。
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ご意見ありがとうございます。
問題は再放送が増えると新作の枠が減ることにあると思います。
「評価する声が多かった」を客観的に判断することは難しいです。
例えば「赤と黒」や「封神演義」に対する評価は私と森さんで一致するものですが、正直「DINER」はパッとしない印象しかなく(ご気分を害されたらごめんなさい)、個人的には再放送するくらいなら新作を放送してほしいくらいです。
積極的に評価をNHKに伝える人はごくわずかでしょうし、その少数の人も継続的に意見を送り続けるとは思えない。
このブログのような個人のページはあくまで個人の意見ですし、某巨大掲示板も意見の極端な偏り方から見ると書き込んでいる人はごく少数なのではないかと思います。
かつて存在した公式掲示板も機能しなかったみたいですし。
NHKとしては、新作が減るとそれはそれで批判されるし、聞き逃した人への配慮も考えなければいけないので、数年前の作品を再放送する現在のスタイルは波風立たず受け入れやすいのは確かだと思います。
身勝手かもしれませんが、その作品のコアなファンほど音源をすでに持っており、再放送は必要ないという面もあると思います。
とはいえ、真のファンであれば良作を再放送してもらってファン層を広げてい欲しいと思っていると思います。
そのためには例えば、1年に1度アンケール月間をつくってその時期だけ大々的にリクエストを募って過去の良作を放送するというのはどうでしょうか。
あるいは日曜の深夜でも良いので、アンコール放送の枠を作るとか…難しいか。
「今日は一日青春アドベンチャー三昧」なんてのはもっと難しいかな。
いずれにせよ私も以上の線で意見を送ってみたいと思います。
何といってもアクションを起こすのが大切でしょうから。
そうそう一番実現性が低いのが「週刊青春アドベンチャー」だと思いますけど。