- 作品 : ミヨリの森
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B+
- 分類 : 幻想(日本/シリアス)
- 初出 : 2004年11月15日~11月26日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 小田ひで次
- 脚色 : 黒沼美佳子
- 演出 : 真銅健嗣
- 主演 : 星野聖良
ミヨリは小学6年生の女の子。
母親が愛人を作って家を出てしまったために、山奥にある父親の実家に引っ越すこととなった。
住み慣れた東京から引きはがされ、母親のみならず父親からも捨てられたと感じるミヨリ。
しかし、祖母に勧められて新しい家の近くの森へと行ったミヨリは、自分が森の精霊達の声を聞き、姿を見ることができることに気がつく。
そして、森で精霊達と過ごし、ミヨリを暖かく向かい入れてくれた人たちと交流するなかで、次第にミヨリの心も解きほぐされていく。
やがて祖母はミヨリを自分の後継者と認め、祖母の森はミヨリの森へとなっていく…
漫画家・小田ひで次さん原作の作品です。
小田さんといえばやはり「拡散」。
私は拡散を掲載されていた頃の月刊アフタヌーンは隅から隅まで読んでおり拡散も読んだ覚えがあるのですが、正直、小田さんの印象は芸術性の高い難しい作品を書く人だなあという程度のものでした。
当時のアフタヌーンは拡散のような実験的な作品が多く、「良質な同人誌」などという褒めているのか何だか分からない呼ばれ方をされていた記憶があります。
マジックリアリズム
さて本作品は、生意気でひねくれた小学生が、不思議な世界と交流することにより再生していく話で、奇妙な精霊達が多数登場することもあり、どちらかというとファンタジー調の作品です。
少年少女が主人公であること、全般的にノスタルジックな雰囲気が漂っていること、終盤にある事件が起こることなどは、既に紹介済みの「光」(2013年放送)と少しだけ似ています。
ただし、「光」とは違って超常現象がベースあること、ダム開発などの社会的な問題を取り扱っていることが本作の大きく相違点です。
実はちょっと苦手
ところで、本作のような日本を舞台にしたファンタジー調の作品は本ブログでは「幻想(日本)」というジャンル(ジャンル分けはこの記事を参照)に分類していますが、私は青春アドベンチャーでは一番苦手なジャンルです。
主人公が子供というのも苦手なパターン
傷ついた少女が自然の中で癒されていくというコテコテの展開もちょっと苦手。
大人がダメすぎる
さらに、本作は登場する大人にダメな人間が多いのも特徴。
特にミヨリの母親であるナナミと、彼女の愛人である塾講師がクズ過ぎて、聴いていて辛い部分も多くあります。
ちなみにナナミについては作品の終盤でゆがんだ人格となるのもやむを得ない事情があったことが明らかになりますが、それを聴いても仕方がないとはとても思えない程のクズっぷり。
私の中ではナナミは「ぼくは勉強ができない」の母親(仁子)と並んで、「青春アドベンチャーに登場するどうしょうもない母親」の二大巨頭です(仁子のファンの皆様、気分を害されたらすみません)。
でも意外と楽しめたのは…
以上のとおり、私の趣味嗜好の面から見るとかなりの悪条件が重なっている本作。
しかし、意外ですが、結構楽しく聴くことができました。
その理由としては、原作の良さに加え、出演陣の熱演とスタッフの力が影響しているのではないかと感じました。
このうちまず出演に光を当てると、主役のミヨリを演じたのは星野聖良(せいら)さん。
少し斜に構えたミヨリの役に良くあっている声だと感じました。
ちなみに星野さん、ネットで検索しても該当しそうな方が見当たりません。
一応、同名の作家さんが出てきますが、別人でしょうか?
ご存知の方がいらっしゃいましたら教えて下さい。
存在感があるのに浮いていない
そして本作に不思議なリアリティーを与えているのが精霊の役を担当している西村淳二さんや田の中勇さんといったベテランの出演陣の方々。
精霊なので当然ながら非日常的な台詞ばかりなのですが、なぜかあまり浮いた感じがありません。
田の中さんといえば「ゲゲゲの鬼太郎」の「目玉おやじ」役があまりにも有名。
本作の配役はそんな田の中さんにぴったりの配役です。
田の中さんは青春アドベンチャー系の他の作品でも「封神演義」の雲中子役、「妖精作戦」の真田佐助役など、強烈で個性的な役を多く演じています。
いずれも持ち味の甲高い声で熱演されていますが、特殊な声なのに作品に溶け込んでいるのが不思議です。
漫画をラジオドラマ化する際の秘策かも
個人的な意見ですが、以前、書いたように(この記事をご参照ください)漫画のラジオドラマ化は難しく、青春アドベンチャーでも漫画原作の作品で傑作といえる作品は少ないと思います。
しかし、本作品で、ラジオドラマではどうしても欠けてしまう映像を補うくらいに芸達者な声優さんの演技を聞いていると、特徴のある声優さんの起用は漫画原作作品を傑作にするための突破口かもしれないとも感じました。
「やけっぱちのマリア」のように滑っちゃうこともある(ファンの皆様ごめんなさい)と思うので諸刃の剣であることも確かなので、難しいところだとは思います。
なお、本作品は後に民放でテレビアニメにもなっているようですが、ネットで検索するとあまり評判が良くない様子。
特にアニメ版は出演陣の評判が…
その点、このラジオドラマ版は出演者には問題ありません。
やはり出演者はとてもとても大切ですね。
脚色は黒沼美佳子さん
また、スタッフは脚色が黒沼美佳子さん、演出が真銅健嗣さんのコンビ。
黒沼さんは青春アドベンチャーで長編を脚色されたのは恐らく本作だけだと思います。
他には不思議屋不動産のうちの1作を担当されているくらいでどういう経歴の方か良くわかりませんでした。
真銅さんの演出作品は毎回ドキドキ
一方の演出の真銅さんは個人的には作品によって極端に気に入るものとそうでないものに分かれる印象のある方。
真銅さんの担当作品には単純に明るく楽しいという作品は比較的少なく、「封神演義」「妖異金瓶梅」「赤と黒」「ドラマ古事記」「光の島」「蜩ノ記」など、超大作だったり、社会派の内容だったり、とんがった企画が目立ちます。
「海辺の王国」や「ごくらくちんみ」などもあまり気分の良くない感じを受けましたが、聴かせる内容であったのも事実。
個人的には青春アドベンチャーの常連演出家の中で、今、一番楽しみにしている演出家さんです。
「穴(HOLES)」だけはどうにも良さが理解できませんでしたが。
やはり幻想系だといって食わず嫌いは良くないと感じた作品でした。
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