星の感触 原作:薄井ゆうじ(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 星の感触
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 幻想(日本/シリアス)
  • 初出 : 1997年5月19日~5月30日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 薄井ゆうじ
  • 脚色 : じんのひろあき
  • 演出 : 松浦禎久
  • 主演 : 古澤徹

テープ起こしを職業とする良治は、自分が録音テープから起こした台本を届けに行った際に、身長2m67㎝の俳優、猫田研一と出会う。
それまでの人生も性格も職業もそして身長も、すべてが違う二人だが、不思議と気が合い、良治は研一の求めに応じて、研一の人生を記録する係となることを決める。
その後、研一は定期的に不思議な長期睡眠に入ることを繰り返し、その度に一段と身長が伸び続ける。
世間からどんどん逸脱した存在になっていく研一。
彼の生き方は、良治をはじめ、研一の恋人・妹といった周囲の人々の生き方を大きく変えていくことになる。



薄井ゆうじさん原作の小説のラジオドラマです。
薄井さん原作の作品はすでに「青の時間」を紹介しています。

物語は日常的にスタートする

青の時間」もとてもジャンル分けが難しい不思議な作品ですが、本作品はそれ以上に説明の難しい作品です。
舞台はあくまで現代の日本であり、少なくとも中盤までは、研一の身長がひたすら伸び続けること以外には不思議な出来事は起きません。

しかし研一の身長と共に…

しかし研一の身長が3m、4mと明らかに常識を逸脱し始めるにつれ、作品は不思議な雰囲気をまとい始めます。
そして研一が長期睡眠の度に見る不思議な夢の世界との二重の展開がはじまるに及び、一気に作品世界が全体に靄がかったような不思議な雰囲気になっていきます。

隠されたメッセージ

この作品は「青の時間」と同じように明確なメッセージを持った作品だと思います。
本作品の印象的なフレーズである「誰の心の中にも巨人は眠っている。その目覚めを望まないものは誰もいない。」から推測すると、本作品のテーマは「逸脱や変化こそ成長であり、それを恐れるな」といったところでしょうか。
しかし「青の時間」と同様に、そのメッセージが作品中で詳らかに提示されることはありません。
これが薄井さん独特の語り口なのでしょう。
正直、私はこのようなテーマがボンヤリとしていて不思議な展開が続く作品は苦手です。
しかし、薄井さんのストーリー展開が巧みであるのと、例によって無駄をそぎ落とした「じんのひろあき」さんの脚本が巧みであったからか、最後まで興味深く聞くことができました。

独特な雰囲気

子供が主人公のファンタスティックな作品はいくらでもあると思います。
しかし、地に足をつけて人生を生きているごく普通の成人男性を主人公にして、これだけの独特な雰囲気をつくっている薄井作品は、青春アドベンチャーの中でもやはり特異な作品群だと思います。
本作品中でも、巨大化しつつある研一が、自家製の自転車で汐留を疾走するシーンは他ではちょっと考えらえない不思議なシーンです。

古澤徹さんと松重豊さん

出演は、語り手にして主人公である波田野良治役を、青春アドベンチャーではお馴染の古澤徹さんが演じています。
青の時間」でも同じような立ち位置の主人公を演じていらっしゃいました。
また、もう一方の主役である猫田研一役は、“井之頭五郎”こと松重豊さん。
2013年8月現在、初の主演作品である「孤独のグルメ」が、無事に第3シリーズに突入しています。
こちらも「バッテリー」や「バイオレンス・ジャック」にもご出演されている常連出演者さんでした。
そういえば「バイオレンス・ジャック」でも巨人の役でしたね。
あの茫洋とした風貌とお声が巨人のイメージに合うのでしょうか。
その他、海津義孝さん(ジュラシック・パークなど)や中島朋子さん、小川範子さん(二の悲劇モー、いいかげんにして!など)など、脇役が意外と充実しているのも本作品の特徴です。


【じんのひろあき脚本の他の作品】
スピーディーな展開、的を絞った見せ場。
青春アドベンチャー初期の名脚色家・じんのひろあきさんの担当作品一覧はこちらです。


【30周年記念全作品アンケート】
2022年に当ブログが独自に実施した青春アドベンチャー30周年記念・全466作品アンケートの出演者編において、本作品に出演している古澤徹さんが5票を獲得し8位になりました。
リスナーの感想等の詳細はこちらをご覧ください。


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