佐藤賢一(その他)

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特集【お勧め作品④】佐藤賢一(その他)


検索等でいきなりこの記事を読まれている方へ
このブログはラジオドラマの紹介を主とするブログです(こちら参照)。
本記事はなぜか小説のことばかり書いていますが、そのわけはこちらをご覧ください。


さて、恒例の「前回の記事ではお勧めにはしなかったけど好きな作品(佐藤賢一版)」の簡単紹介です。

二人のガスコン

「二人のガスコン」はブルボン王朝期のフランスが舞台の青年の成長物語です。
この時代の作品が多い青春アドベンチャーにはまさにドンピシャの作品。


主人公はアレクサンドル・デュマの「三銃士」で有名なダルタニアンと、エドモン・ロスタンの戯曲「シラノ」で有名なシラノの「二人のガスコン」(ガスコーニュ出身者)です。
両人とも実在のモデルがいますが、本作でのふたりは歴史上の人物というより上記の文学作品で脚色された創作上の人物を「本歌取り」しているようです。

日本の伝統にしてお家芸「二次創作」

別にパクッている訳ではなく、言ってみれば「二次創作」です。
パロディ、パスティーシュ、オマージュ、リスペクトなど様々な用語がありますが、文芸の世界ではよくあるやり方だと思います。
特に日本は「本歌取り」の伝統があるからか、源義経、武蔵坊弁慶、真田幸村、大石内蔵助、最近では水戸光圀や坂本龍馬など、二次創作によりもはや実在の人物というより物語上の人物のイメージが強くなっている方が一杯います。
現代日本において同人活動が盛んなのも、案外、この辺にルーツがあるのかも知れません。
青春アドベンチャーでも北村想さんの「怪人二十面相・伝」がこれに近いスタイルの作品です(二十面相はもともと架空の人物ですが)。

もはや少年ではない

「二人のガスコン」で取り上げられている時代は「三銃士」の時代とその続編である「二十年後」の間の時期です。
もはや少年ではなく勇気と力だけでは世の中にはどうしようもないこともあることを知ってしまった、それでも夢を諦めるわけにはいかないダルタニアンの姿が、日々仕事の壁を前にもがいている20代後半以降のサラリーマンに受ける作品だと思います。
これを読むともう少しがんばろうかなという気になります。

フランスもの大杉問題

この作品、青春アドベンチャーの原作として考えると前回書いたように少し大作過ぎるため、かなり長い放送枠が必要になるのが欠点だと思います。
また、この「主として中世・近世のフランスを舞台とし、剣劇と陰謀劇が主体の冒険活劇」というジャンルの作品は、「ベルサイユのばら外伝」、「仮想の騎士」、「スカラムーシュ」、「紅はこべ」など、なぜか青春アドベンチャーでかなり頻繁に取り上げられており、食傷気味の感もあります。
「二人のガスコン」の元ネタの「三銃士」も青春アドベンチャーになっています。
「二人のガスコン」は内容的にこれらの他の作品とは全く違うので作る価値があるとは思いますが。

オクシタニア

もう一つの「オクシタニア」は13世紀初頭、フランス南部で栄えたキリスト教の一派、カタリ派の興亡を巡る群像劇です。
現世の快楽と宗教上の理想との間で揺れ動く人間の心を描いた作品ですが、アルビジョア十字軍が絡む話でもあり、単なる精神的な小説ではなく歴史小説の性格もある作品です。


「異端の聖地モンセギュール」というフレーズだけでも心を引かれるものはありませんか。
佐藤さんの作品で宗教を絡めて人間の生き方を描いた作品としては他に「カルチェ・ラタン」などがあるのですが、こちらは狭い地域、限られた登場人物による、どちらかというと内向的な話ですので、歴史小説的な色彩の強い「オクシタニア」の方が私は好みです。

読者の皆様(及びNHKのスタッフの皆様)よかったら参考にしてみて下さい。


次の特集は少し趣向を変えてお送りします。
次のお勧め作品は再びSF作品をご紹介したいと思います。


「青春アドベンチャーにしたら」面白いのではないか!と思う記事の一覧はこちらです。
私やリスナーの皆さんが自信を持ってお勧めする作品たち。
小説や漫画など色々な作品があります。
是非ご覧ください。


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