- 作品 : 予言村の転校生
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B+
- 分類 : 幻想(日本/ライト)
- 初出 : 2015年1月5日~1月16日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 堀川アサコ
- 脚色 : さわだみきお
- 演出 : 佐々木正之
- 主演 : 葵わかな
湯木奈央(ゆぎ・なお)は、市役所に勤める気の弱い父を持つ普通の女子中学生だ。
ある日、父が隣村の村長選挙に立候補するために市役所を退職してしまった。
立候補する理由を父は「決まっていたことだから」という。
そう、父が村長選に立候補する「こよみ村」は、「予言歴」(よげんれき)なる予言の書どおりに全ての事柄を進めることを旨とする不思議な村だったのだ。
父親の村長就任とともに、こよむ村の中学校に転校することになった奈央には、不思議な出来事が待っているのだった。
本ラジオドラマ「予言村の転校生」は、2012年に同じ青春アドベンチャーでラジオドラマ化された「幻想郵便局」と同じ堀川アサコさん(日本ファンタジーノベル大賞出身)原作のラジオドラマです。
ちなみに本作品と「幻想郵便局」は、原作者のみならず、脚本のさわだみきおさん、演出の佐々木正之さんも同じです。
ここまでいけば主演の朝倉あきさんも…といいたいところですが、残念ながら朝倉さんは2014年3月をもって芸能活動を休止しているので、それは望めません…
朝倉あきさん復帰するの?
と思っていたのですが、何と!本作品のふたつ後に放送予定の「ニコイナ食堂」のキャストに朝倉さんの名前があるじゃないですか?
どうなっているのでしょうか?
詳細をご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教示ください。
突然の放送スケジュール変更
さて、本作品は冒頭の紹介のとおり村長選挙のエピソードからスタートします。
実は本作品は当初、2014年12月に放送が予定されていたのですが、なぜか急に2015年1月に放送スケジュールが変更になりました。
ひょっとしたら2014年12月に本当の選挙(衆議院議員選挙)が行われたため、選挙ネタを回避したのかな?とも思いましたが、実際に聞いてみると選挙ネタはほぼ2回で終わってしまう程度の分量しかありません。
選挙の話自体も、立候補者が気弱でトホホ感満点の父親ですので、全くシリアスなものではなく、日常系の雰囲気の強い導入部でした。
ファンタジーからホラー寄りに
しかし、その後、徐々にマジックリアリズムの書き手である堀川さん原作らしいファンタジックな雰囲気になっていきます。
このまま「幻想郵便局」のような、ほのぼの(ちょっぴりホラー)ファンタジーになっていくのかと思ったのですが、期待は良い方に裏切られました。
第3話からどことなく不気味な雰囲気も加わりだしホラーぽい雰囲気となっていったのです。
さらに、村の秘密を探る新聞記者、一昔前に村の特殊性を指摘していた学者、催眠術とも思われる不思議な術を使う謎の覆面の男、村の伝統芸能の子供歌舞伎(歌舞伎というと「闇の中の子供」を思い出しますがそれほど本格的なものではありません)などの要素が絡み合い、サスペンスともいえる展開になります。
さらに、前半最後(5話ラスト)には再度、「100年1組」なるファンタジックな要素がでてきたうえで、後半に入っても新たな展開が続きます。
綺麗な結末
正直、様々な要素がありすぎて、これらを駆け足で消化するのに手いっぱいで、全10回では畳み切れていない印象でした。
ただし、これについては、本記事のジャンルを「幻想(日本)」としていることからもわかるとおり、本作品はもともと筋が通っていたり、すべての謎が論理的に説明されることが魅力の作品ではないでしょう。
また、終盤には奈央をホームズ役としたミステリー的な謎解きの場面もあり(奈央ちゃんは意外と素直で頭が良い娘ですな)、一応、ひととおりの伏線は回収したは綺麗なエンディングになっており、物語的なまとまりを重視するリスナーも一応満足できる形にはなっていると思います。
若手有望株
話は変わりまして、本作品の主役・奈央を演じるのは16歳の女優・葵わかなさんです。
すでにNHK-FMのもう一つのラジオドラマ番組「FMシアター」の「同じ空の下」(2014年11月)で主演されています。
葵さん、特に上手い!とは感じないのですが、聴いていて嫌味のない声であるのは、ラジオドラマに出演を始めたころの朝倉あきさんや石川由依さん(風神秘抄、しゃばけ、月蝕島の魔物など)と似た雰囲気を感じます。
朝倉さんがどうなるかも気になりますが、葵さんにも、青春アドベンチャーの時代を担うエースに成長して欲しいものです。
…などと書いていたら、後日、葵わかなさんがNHK朝の連続テレビ小説(朝ドラ)「わろてんか」の主演に抜擢されたとのニュースを耳にしました。
本作品放送から2年ちょっと後のことですが、随分と出世したものです。
余談はこのくらいにして記事に戻ります…
また、他の配役に関していうと、「昭和のアイドル・溝江アンナ」役に、実際の昭和のアイドル(とはちょっと違うか)の田中美奈子さんを起用しているのも青春アドベンチャーらしい遊び心。
最近では、田中さんは、お昼のドラマ「幸せの時間」での大胆な演技で話題となったようですが、このような方をさらりと起用するところが憎いですね。
オリジナル音楽?
なお、青春アドベンチャーは(恐らく予算とスケジュールの都合から)、各作品ごとのオリジナルの音楽は作らず、既存音楽を「選曲」してテーマ曲やBGMとすることが通例です。
本作品も青春アドベンチャーで最近、多くの作品を担当されている黒田賢一さんが選曲されているのですが、番組上のコールでは「選曲・作曲 黒田賢一」となっておっています。
どの部分がオリジナル曲なんだろうと思いながら聞いていたのですが、エンディング部分でハッと思いました。
作曲って「初恋ドキン」ですな!
そういえば黒田さんって「93番目のキミ」でも同じように劇中歌を書かれていたように思います。
この「初恋ドキン」って作中ではごく一部のフレーズしか出てこないのですが、終盤で最後まで流れて、そのままエンディングを迎えます。
先ほども書きましたが、このエンディングの気持ちよさで、評価は星半個分くらいアップしたように思います。なかなか作品の雰囲気に合った曲です。
ステレオが効いている気がする
また、本作品は、技術が若林政人さん、林晃広さん、音響効果が久保光男さんが担当されていますが、BGM、会話とも何となくステレオ効果が良く効いているように感じます。
ただ、私が一番、ステレオ効果を感じたのは、3人のおばさん(=おばあさん)が会話しているという、ある意味がっかりなシーンだったりするのが笑えるところではありましたが。
最後に原作者・堀川アサコさんのブログのURLを紹介します。
やはり「初恋ドキン」の曲は好評みたいですね。
(外部リンク)
http://blog.goo.ne.jp/a-horikawa_2006/e/d59a4e0435bb7f58c786e8bbf36687a3
http://blog.goo.ne.jp/a-horikawa_2006/e/a65395131fe5f6b7bcc53e621da07093
コメント