日本のヤバい女の子 原作:はらだ有彩(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : 日本のヤバい女の子
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B
  • 分類 : 伝奇(日本)
  • 初出 : 2019年3月4日~3月8日
  • 回数 : 全5回(各回15分)
  • 原作 : はらだ有彩
  • 脚色 : 中澤香織
  • 音楽 : 坂東邑真
  • 演出 : 木村明広
  • 主演 : 山田由梨

私は平成生まれ。
女だからこうしなさいと親に言われたことはなかったし、女だから損をしたと思うこともなかった。
だから、就職してみて初めて気がついた。
この国の女性に押しつけられている「女子」という役割に。
だから、どうしても知りたくなった。
現代でさえこんなに生きづらいのに、昔の女の子はどうしていたのかということを。
だから、会いに行くことにした。
昔話に登場するあの女の子たちに。



本作品「日本のヤバい少女たち」は、ファッションブランド「mon.you.moyo」の代表を務めるはらだ有彩(ありさ)さんによる小説?のラジオドラマ化作品です。
全体の構成は、上記粗筋のとおり、就職してみて日本の社会における女性のありように疑問を持った主人公「私」が、民話に登場する女の子たちに話を聞きに行く、というものなのですが、この流れはまさに原作者のはらださんが原作小説を執筆するにあたって辿った軌跡をなぞったものなのだそうです(外部サイト:はらだ有彩さんへのインタビュー)。

細かいことは言わないで。

もちろん原典の民話は時代設定が(恐らく)遙か過去ですし、そもそもフィクションですので、現代の女性が直接会いに行くことなんてできないはずなのですが、その辺は特段の説明なく、まるで昔の友人に久しぶりに会う、くらいの軽いノリで話を聞きに行ってしまいます。
回によってはターゲットの女性とスーパー銭湯で会ったり…
この辺の不条理さは気にしても仕方がないところですので、さっさと受け入れるのが吉、です。

強硬なフェミニズム的主張ではない

さて、冒頭の粗筋を読むと、この作品、かなり濃厚なジェンダー論が展開される作品なのではないかと思いませんか。
少なくとも、事前に公式ホームページの紹介を読んだ私はそう思いました。
特に冒頭が職場のシーンだったこともあり、「ガラスの天井」的な話題が続くのかと思い込んでいました。
ただ、実際に本編を聴いてみると、必ずしもジェンダーの観点から誰かを断罪するような居丈高な話ではありませんでした。
例えば第1回における他人のアイデアを盗む行為は男女関係なしにダメですし、第2回は女の子が自業自得と言われても仕方がない話だと思います。

中澤香織さんの自然な脚本

また、ほとんど全部がガールズトーク的に展開し、フェミニズム的な息苦しさは余り感じませんでした。
こういった会話のうまさはさすが中澤香織さんの脚本だなと思います。
リテイク・シックスティーン」、「王妃の帰還」、「さよなら、田中さん」、そして「ミラーボール」など、気負わない自然なガールズトークを書かせたら、中澤さんが今、青春アドベンチャーで一番だと思います(「ミラーボール」はFMシアターだけど)。

各回の内容紹介

さて、本作品の各回のタイトル(カッコ内は原作におけるタイトル)、主人公(カッコ内は題材)及びブログ主からの一言は以下のとおりです。

回数 タイトル(原作タイトル) 主人公(題材)
一言
1 捧げる女の子(献身とヤバい女の子) おかめ(おかめ伝説)
確かにモヤモヤする話ではあるが、他人の仕事に口を挟んだり、逆に他人のアイデアを盗んだりすることは、男女間の問題ではなくより普遍的に判断すべき問題なのでは。
2 いなくなる女の子(秘密とヤバい女の子) うぐいす女房(見るなの座敷)
「どんな秘密でも大丈夫」なんて約束する方もだが信じる方もどうかしている。それにしても「13番前の部屋だけ見ないでください」ってどんな大きな釣り針?
3 変身する女の子(変身とヤバい女の子) 清姫(安珍・清姫伝説)
高度に普遍化、一般化された民話について「本当はどうだったのか」と考えることに、妄想する楽しみ以上の益があるのだろうかと考えてしまった。楽しければいいのだけど。
4 ハッピーエンド女の子(顔とヤバい女の子) 鉢かづき姫
モンテ・クリスト伯」やシャア・アズナブル(笑)ではないが顔を隠すことにヒネた意図を感じてしまうのは私が性格が悪いからか。「生まれた時から変えられないものは?」という問に対する答えがその人のコンプレックスという考えにはハッとした。
5 永遠の女の子(命とヤバい女の子) 八百比丘尼
人魚の森」の元ネタ。ジェンダー論的な側面は特に感じられず、かといってアドベンチャー的な作品でもなく、大味なファンタジーといった印象。

ラジオドラマ化未了の話

なお、原作には20編の話が納められているため、15編がラジオドラマ化未了ということになります。
逆に言えば、すぐに続編が作れる状況でもありますね。
ちなみに、その15編の主人公は、女盗人(今昔物語)、虫愛づる姫君(堤中納言物語←「風の谷のナウシカ」の着想のものになったとか)、飯食わぬ嫁、鬼怒沼の機織姫、鬼神のお松、イザナミノミコト(日本書紀・古事記)、かぐや姫(竹取物語)、オシラサマ(馬娘婚姻譚)、お露(怪談 牡丹燈篭)、乙姫(浦島太郎伝説)、お菊(落語 皿屋敷)、ある末娘(猿婿入り)、織姫(七夕伝説)、トヨウケビメ(奈具の社)、女右大将/有明の女御(有明の別れ)になります。

出演者は3人だけ

さて、本作品の出演者は山田由梨さん、内田慈さん、奥田洋平さんの3人だけ。
基本的に山田さんが物語シーンのナレーションと、女子たちとの会話シーンのインタビュアー(「私」)役を務め、全体を進行します。
そして内田さんが各話の主人公である「女の子」の役を、奥田さんが各話の物語シーンにおける男性役を一手に引き受けています。
ただし第5回だけは例外で、最初から山田さんが物語の登場人物として出演し、「私」の出番はほとんどありません。
それにしても、女性を主人公したオムニバス形式の内容といい、場面設定の抽象度の高さとリリカルな雰囲気の混在といい、ごく少数の出演者だけで進行する作り方といい、なんとなく既視感が…

ふたりの部屋の雰囲気

よく考えてみると、「女たちの15の伝説」や「10人のシンデレラ」、「赤糸で縫いとじられた物語」、「15の星座の物語」といった1980年代に「ふたりの部屋」や「カフェテラスのふたり」で放送された作品との類似性が感じられます。
1990年代初頭に「無印OL物語」を放送した「サウンド夢工房」の雰囲気も。
現在放送されている「青春アドベンチャー」という番組は、その名のとおり1980年代に放送されていた「FMアドベンチャー」や「アドベンチャーロード」の系譜を直系で継ぐ番組ではあるのですが、対象作品のジャンルという意味では「ふたりの部屋」や「カフェテラスのふたり」の影響もあるのかも知れません。

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