- 作品 : 月蝕島の魔物
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : C+
- 分類 : 冒険(秘境漂流)
- 初出 : 2012年7月23日~8月3日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 田中芳樹
- 脚色 : 花房朋香
- 演出 : 藤井靖
- 主演 : 大内厚雄
ヴィクトリア朝のイギリスを舞台に、元出版社社員のニーダムとその姪のメープルが、文豪ディケンズやアンデルセンとともに月蝕島に流れ着いた氷山とそこに閉じ込められている帆船の謎を解き明かしていく…
有名作家の原作作品だが…
「銀河英雄伝説」で有名な田中芳樹さんの小説を原作とするラジオドラマです。
しかし、ヴィクトリア朝という舞台設定や、ディケンズ、アンデルセンといった実在の人物、クリミア戦争や貧富の格差等の社会問題も織り交ぜており、道具立ては十分に面白そうなのですが、申し訳ないのですがどういう訳か私は全く作品に入り込むことができませんでした。
そもそも「魔物」が出てくる必然性もよくわかりませんし。
ずれたのはどっちか
田中芳樹さんの作品は、初期の作品は随分読んでいたのですが、私の趣味が変わったのか、田中さんの作品の傾向が変わったのか、いつの頃から段々と読まなくなりました。
本作も原作を読んでいないので、原作があわなかったのか、それともラジオドラマの脚本・演出があわなかったのかわかりません。
「ヴィクトリア朝怪奇冒険譚(Victorian Horror Adventure)三部作の第1作」といわれても…うーん。
自由に書けるのが良いことか
これは個人的な意見なのですが、好きなものを好きなように書くことによって能力を発揮する作家さんと、作家さん自身が書きたいものと読者が望むものが必ずしも一致していない作家さんがいる気がします。
前者の例として思いつくのは、月蝕島の魔物と同じヴィクトリア朝を扱った漫画「エマ」を書いた森薫さんです。
森さんの作品は「乙嫁語り」を含めて「自分の好きなものを書いて飯が食っていけることに対する感謝」が線1本からもにじみ出ているように見え、趣味への愛着が作品の質を高めているように感じます。
あくまで個人的な思い入れ
銀河英雄伝説のヒットによって田中芳樹さんは(ある程度)好きなもの書ける立場を得たと思いますが、少なくとも私という一読者が希望する方向性からは離れてしまったのかもしれません。
勝手な思い込みですが。
不快になられた方はご容赦ください。
今回の評価は「銀河英雄伝説」やアドベンチャーロード版「西風の戦記」への私の思い入れの強さが逆に悪影響を与えている気もします。
しばらく時間をおいて再度、冷静に視聴してみれば評価は変わるかもしれません。
その期待を込めての”+”です。
アンデルセンやディケンズ
ところで、この作品には前述のとおりアンデルセンとディケンズという実在の有名作家が登場しますが、アンデルセンは「雪の女王」、ディケンズは「二都物語」(アドベンチャーロード時代)と「クリスマス・キャロル」が同じ青春アドベンチャー系列の番組でラジオドラマ化されています。
そちらの記事もぜひご参照ください。
<田中芳樹原作・原案の他の作品>
- 西風の戦記
- カルパチア綺想曲
- 夏の魔術
- 窓辺には夜の歌(「夏の魔術」続編)
- バルト海の復讐
- 髑髏城の花嫁(VHA2)
- 水晶宮の死神(VHA3)
- 黒十字の魔女(VHA外伝)
- 白銀騎士団 シルバー・ナイツ
※VHA=ヴィクトリア朝怪奇冒険譚
【パクス・ブリタニカの時代を舞台にした作品】
大英帝国の最盛期である19世紀から20世紀初頭にかけてのイギリスを舞台にした作品を整理しました。
ヴィクトリア朝から第1次世界大戦の勃発するジョージ5世時代まで。
あの作品とこの作品の設定年代の順番は?こちらをご覧ください。
(追記)
2013年に本作の続編「髑髏城の花嫁」が放送されました。
私がこのシリーズに慣れただけかも知れませんが、やや前言撤回でこの続編の方は本作より素直に楽しめました。
続編の記事もご覧ください。
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