- 作品 : 鬼煙管 羽州ぼろ鳶組
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : AA+
- 分類 : 歴史時代(日本)
- 初出 : 2020年10月19日~10月30日
- 回数 : 全10回(各回15分)
- 原作 : 今村翔吾
- 脚色 : 丸尾聡
- 演出 : 真銅健嗣
- 主演 : 筧利夫
火喰鳥、西へ!
未だ小規模ながら、その懸命さと命を救う情熱を江戸の民から認められた「ぼろ鳶組」と松永源吾。
しかし、請われて赴いた京の都で源吾を待っていたのは、前例のない怪事件、気心の通じない相棒、遅々として進まない探索、そして京雀たちの冷たい視線だった。
頼もしい部下を江戸に残し翼をもがれたも同然の「火喰鳥」。
しかし命をあきらめることはできない。
だから彼は叫ぶ。
「火消は人の命を見捨てねえ。最後の最後まで諦めはしねえ!」
ぼろ鳶組第3弾!……?
2018年の「火喰鳥」、2019年の「夜哭烏」に続き、ついに「ぼろ鳶組シリーズ」の第3弾がラジオドラマ化されました。
その名は「鬼煙管 羽州ぼろ鳶組」!
………
………
………?
あれっ?これって原作だと第4弾ですよね?
原作第3弾「九紋龍」は?
「に組」の辰一と千羽一家はどうすんのよ?
「鬼滅の刃」が大ヒット中だけど、まさか「鬼」つながりで「鬼滅の刃」にあやかったわけではあるまいし…
確かに「鬼煙管」は序盤の山場ではあるのだけど、まさかこの3作でラジオドラマ化はおしまいなんてことはないですよね?
ずっとやって欲しいのだけど…
お願いします、演出の真銅さん!
1990年代に放送された「ランドオーヴァー」シリーズで、原作第3弾の「魔術師の大失敗」と第2弾の「黒いユニコーン」がなぜか原作と逆の順序でラジオドラマ化されたこともありましたし、私は一向に気にしません!
多少順番が変わっても、一部の巻が飛ばされても結構です。
本作品を青春アドベンチャー有数の長期シリーズにしちゃいましょう!
前半のクライマックス「襲大鳳」までは是非!
ぼろ鳶メンバーの登場は控えめ
と、のっけからお願いで始まってしまいましたが、楽しみにしているこのシリーズ。
舞台は江戸中期の安永年間、主人公はもちろん江戸の町にこの人ありと知られた新庄藩火消組・頭取の松永源吾(演:筧利夫さん)。
そして源吾のまわりを固めるのは「ぼろは着てても心は錦」な多士済々なぼろ鳶組メンバー…といいたいところですが、本作品は少し違う。
まず全2作と違い、主な舞台が江戸でなく京。
第1作で知遇を得た長谷川平蔵(火付盗賊改方長官から京都西町奉行に出世)から京都で起こる「火車」事件への助力を請われ上京した京都が舞台ですので、ぼろ鳶組からの登場は源吾に同行した2名だけ。
事件解決には欠かせないぼろ鳶組のオーパーツ(知識レベルはほぼ現代人)・風読みの加持星十郎(かじ・せいじゅうろう。演:大沢健さん)と、個人としても指揮官としても一級の火消で源吾の股肱ともいえる一番組組頭・武蔵(たけぞう。演:山口馬木也さん)。
新之助や寅次郎、彦弥が第1回にしか登場しないのはかなり寂しいところではあります。
ぼろ鳶以外も多士済々
ただ、その分、シリーズのキーとなるキャラクターが新たに多数登場します。
まずは平蔵の息子、銕三郎(てつさぶろう。演:金児憲史さん)。
銕三郎は江戸にいたころは「本所の銕」と呼ばれたドラ息子ですが、実はこの人の正体は…
そして、「蟒蛇」(うわばみ)の異名をとる淀藩常火消の頭取・野条弾馬(のじょうだんま。演:土田英生さん)はまさに「西の源吾」ともいうべき熱血火消!
そういえば炎を食う「火喰鳥」松永源吾と、炎を飲み干す「蟒蛇」野条弾馬は対になっているのかも知れませんね。
また、ぼろ鳶組のスポンサー(というほど単純にお金は出してくれないけど)大丸当主・下村彦右衛門(演:細見大輔さん)も登場。
下村彦右衛門は原作では「九紋龍」で登場しているため、原作第3巻の一部のシーンを組み込むことによって何とか登場させています。
「鬼」といえば
そして何より本作品のキーとなるのは吉見一豊さんの演じる長谷川平蔵宣雄。
原作第10巻を丸々1巻使って源吾たちより一世代前の火消たちを描いていることからもわかるとおり、ぼろ鳶組シリーズは多くの親子が登場する「父と子」の物語でもあります。
その多くが父の理想を受け継いでいく姿が描かれているのですが、中でも代表的なのがこの長谷川親子。
サブタイトル「鬼煙管」が示すとおり本作品は2人の平蔵の物語でもあるのです…
もはや筧利夫さんの代表作
さて、本作品の主演は前作、前々作と同様に俳優の筧利夫さん。
もともと「劇団☆新感線」や「第三舞台」に参加していた舞台俳優さんで、1990年代以降はTVドラマ「踊る大捜査線」で知名度を上げたことは皆様ご承知のとおり。
もし「ぼろ鳶組」がTVドラマ化されるなら是非、筧さんで、と思わせる熱演ですが、現実には年齢(本作放送時点で58歳)的に難しいのかな。
キャストは変えない
また、本作品の裏主役ともいえる長谷川平蔵を演じるのは吉見一豊さん。
本作品の直後に放送(再放送)される「スタープレイヤー」でも準主役級のキャスティングですが、最近の青春アドベンチャーでは剽軽な老人役でよく起用されています。
本作品でも第1作から継続して長谷川平蔵役を演じていますが、この役に限らず、細かい役まできちんと役者さんが続投しているのが本作品の良いところ。
ちなみに原作第6巻「夢胡蝶」(←このタイトルも「鬼滅の刃」に便乗できますね)はぼろ鳶組の纏師・彦弥の主役回、第8巻「玉麒麟」はぼろ鳶組の頭取並・鳥越新之助の主役回、そして第9巻「双風神」は加持星十郎の主役回です。
特に今回短い出演時間に終わってしまった、津田英佑さん(彦弥役)と小山貴司さん(新之助役)の演技がもっと聞きたいです。
是非続編を。
(補足)
本作品は、当ブログが実施した2020年リスナーアンケートの得票数2位に輝きました。
詳しくは別記事をご参照ください。
(補足2)
原作者の今村翔吾さんが2022年1月「塞王の盾」にて第166回直木賞を受賞されました。
(補足3)
途中からシリーズをお聞きになる皆様に向けて、ぼろ鳶組内部の人間関係をお互いの呼び方という切り口でこちらの記事に整理しました。
作品聴取にあたっての予習・復習にご利用ください。
■ぼろ鳶組シリーズ一覧
松永源吾とぼろ鳶組は今日も火事と戦う、ただ江戸の街を守り、人々の命を救うために。
- 火喰鳥 羽州ぼろ鳶組
- 夜哭烏 羽州ぼろ鳶組
- 鬼煙管 羽州ぼろ鳶組(本作品)
- 菩薩花 羽州ぼろ鳶組
- 夢胡蝶~羽州ぼろ鳶組
- 玉麒麟 羽州ぼろ鳶組
- 襲大鳳 羽州ぼろ鳶組
- お互いの呼び方で解説する新庄藩火消組
- 通称・異称で紹介する江戸の火消たち
- オーディオドラマ化から漏れた作品を補完する
■約260年に及ぶ江戸時代。
当ブログで紹介した江戸時代を舞台にした作品が、細かく見るとどの時代設定を背景としているのか?
この作品とこの作品はどちらが先?
実は同時期を描いている意外な作品とは?
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