- 作品 : キャロル
- 番組 : サラウンド・ファンタジー
- 格付 : B-
- 分類 : 幻想(海外)
- 初出 : 1991年1月5日~1月6日
- 回数 : 全2回(各回60分)
- 原作 : 木根尚登
- 脚色 : 佐久間崇
- 演出 : 千葉守
- 主演 : 増田未亜
イギリスに住む少女キャロルの周りでは、人気バンド「ガボール・スクリーン」の新曲「ソング・オブ・プカラ」が今までにない酷い出来だと話題になっていた。
そんな、ある日、ロンドン・ビックベンの鐘の音が突然聞こえなくなるという不思議な事件が起き世間は騒然となる。
同時に、ロンドンフィルハーモニーでチェロを演奏しているキャロルの父親も、自分のチェロから音が出ていないようだと言い出した
キャロルは、この違う場所で違う人間に起こった3つの出来事がいずれも「音」に関係することに気がつく。
父を助けるために、キャロルは「ソング・オブ・プカラ」を学校の複合芸術科目で使用している機械で分析することを思い立つのだが、それがキャロルが異世界ラ・パス・ル・パスに迷い込んむ切っ掛けとなってしまったのだった。
TMネットワークのギタリストで小説家でもある木根尚登さんの処女小説「CAROL」を原作とするラジオドラマです。
TMネットワークのプロジェクト
もともと、この「CAROL」という作品は、TMネットワークが企画した音楽アルバムを中核とするメディアミックス作品全体の名前でもあります。
中核となる音楽アルバム「CAROL ~A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991~」がリリースされたのは1988年12月なのですが、作中の世界はアルバム・ラジオドラマとも1991年に設定されており、このラジオドラマは現実の1991年1月に2日間連続・60分ずつで放送されました。
メディアミックス
ちなみにその他のメディアミックス作品としては、小説が1989年、アニメ映画が1990年、コンサートツアーが1988年~1989年、漫画が1995~1998年、ドラマCDが1996年に発表されているようです。
青春アドベンチャー系列のNHK-FMのラジオドラマでは、他のメディア化に先行してラジオドラマ化した結果起こる「結果的にメディアミックス」になることが結構ある(メディアミックスの分析はこちら)ものの、NHKの性格からか意識的に他メディアとコラボすることはあまりありません。
ちょっと思いつくのは「マドモアゼル・モーツァルト」くらいです。
ちょっと特殊ですが「海に降る」も一例に挙がるかも知れません。
もちろん曲はTMネットワーク
さて、そういう経緯もあり、このラジオドラマにはTMネットワークの上記の音楽アルバムの曲がふんだんに使われています。
タイトル曲の「Carol」もそうですし、作中の重要なパーツである「ソング・オブ・プカラ」のシーンでは「STILL LOVE HER ~失われた風景~」が使われています。
それにしても作中で「最低」とレッテルを貼られる曲に、TMネットワークの曲を使うのはなかなか度胸がいると思います。
演出の千葉守さん、やるな。
ルイス・キャロル由来だよね?
一方、作品の内容を一言で言うと「不思議の国のアリス」と「オズの魔法使い」を足したような感じ。
主なお供(協力者)が、ティコ(演:亀山助清さん)、フラッシュ(演:後藤敦さん)、マクスウェル(演:塩沢兼人さん)の3人という点では「オズの魔法使い」的かもしれません。
ミュージシャンが原作者という意味で類似点のあるサウンド夢工房時代の名作「悲しみの時計少女」とも似たファンタジー作品です。
明るく元気
ただ、これらの作品と比較すると、本作品は「悪いやつをやっつけて大切なものを取り戻す」という単純な冒険ものの要素が強いストーリーで、ファンタジー独特の小昏さというのもはあまり感じられません。
特にこのラジオドラマの場合、主役のキャロル・ミュー・ダグラスを演じる増田未亜さんが明るく元気なので、その印象が一層増しているように感じます。
個人的にはNHK-FMのラジオドラマにおける増田未亜さんのベストは「ふたり」ですが、それとは少し違うっものの本作品も熱演だと思います。
その他のキャストとスタッフ
その他の出演者として気になったのは、「風の谷のナウシカ」で有名な島本須美さんや、「名馬 風の王」などでもナレーションをしている大山尚雄さん。
スタッフとしてはTMネットワークの楽曲以外を手がけられた「音楽」の藤掛廣幸さんや、「風の名はアムネジア」、「西風の戦記」、「CF愚連隊」などの佐久間崇さんでしょうか。
佐久間さんは割りとハードな作品が多く、純粋ファンタジーの本作品は少しイレギュラーも印象を受けます。
その後の木根さん
なお、本作品が好評だったからか、木根さんの作品はその後頻繁にNHK-FMのラジオドラマに取り上げられることになります。
具体的には、1991年の「ユンカース・カム・ヒア」及び「ユンカース・カム・ヒアⅡ」、1993年の「夢の木」及び「武蔵野蹴球団」、1997年の「P」。
これだけ多くの作品が取り上げられた作家さんはかなり少ない部類に入ります。
詳細はこちらの記事をご確認ください。
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