【特集】100作品紹介記念④:メディアミックスの状況

折々の記録

【特集】100作品紹介記念④:メディアミックスの状況

このブログでこれまでに紹介したラジオドラマ100作品を総括する、この特集。
当初、長くても3回程度を予定していたのですが、結果的に4回シリーズになってしまいました(第1回第2回第3回もご覧下さい)。
第3回では「原作の種類」について特集しましたが、最終回の今回はメディアミックスに関する整理です。

メディアミックは本当に多いのか

以前から作品紹介の折々で私自身、青春アドベンチャースタッフの作品選択における先物買いの素早さについて言及してきたところです。
また、ウィキペディアの「青春アドベンチャー」の項目でも、青春アドベンチャーで取り上げられた作品の多くが他のメディアにも移植されている状況が書かれています。
果たして本当にそんなに多くの作品が(結果的に)メディアミックスの状況となっているのか。
以前から調べてみたいと考えていたのですが、作品数が膨大過ぎるために断念してきました。
今回、紹介100作品を迎えるにあたって、「原作の種類」と同様に、この100作品限定で調べるのであればさほど手間はかからないのでは?と思って、作業を始めてみたのですが…

やってみると…

これが結構大変でした。
青春アドベンチャーの原作は前回書いたとおり大部分が何らかの形の小説です。
そのためこれが青春アドベンチャー化されるとともに、TVドラマ化や漫画化、アニメ化などがされていることは実際に結構あります。
しかし、NHKが意図してメディアミックスを仕掛けているわけではなく、結果的にそうなっているだけのため、情報がバラバラであり全容を把握するのは一筋縄ではいきません。
そのため、「完全・詳細・正確」にデータを集めることは早々に放棄し、「簡単に調べられる範囲で・最低限の情報だけを・だいたいの精度で」集計することにしました。

ドラマ化・漫画化・アニメ化

集める対象は基本的に「ドラマ化」(TV・映画を問わず実写化したもの)、「漫画化」、「アニメ化」(TV・OVA・映画を問わず)だけとして、集めるデータはそれぞれの公開「年」だけにしました。
漫画・本の時期は基本的には単行本1巻の刊行時期に統一(ただし詳細不明な場合は適宜)、海外作品は日本での翻訳版の出版時期に統一。
映画・TVは公開時期または初回放送時期に統一するが、古典作品などで映画化が極端に古いものは分かる範囲で昔のものとしました。
以上の方針でオリジナル脚本作品12作品を除いた88作品について集計した結果が以下のとおりです。
ちなみに残念ながら、オリジナル脚本作品で他メディアに進出した例はありません(もともと舞台脚本をベースに作られた「泥の子と狭い家の物語~魔女と私の七〇日間戦争~」(オカモト國ヒコ作)は例外)。

分類 作品数 割合
ドラマ化 23 58%
漫画化 12 30%
アニメ化 5 13%
合計 40 100%

延べ40作の他メディアの作品が作られていますが、その中心は実写ドラマ化が約6割を占め、次いで漫画化が3割を占めています。
実はアニメ化されているのは5作品に過ぎず、アニメとは棲み分けが出来ていることが窺えます。
次に一つの作品がいくつのメディアミックスを達成しているかを調べると以下の通りです。

複数媒体でのメディアミックス

他メディア数 作品数 割合
3 1 1%
2 5 6%
1 27 31%
0 55 63%
合計 88 100%

ドラマ化・漫画化・アニメ化の3冠を達成している作品が一つだけあるのですが、これはアンデルセンの童話「雪の女王」です。
最近ではディズニーが「アナと雪の女王」という形で翻案していますが、古典的な童話なので、いわゆるメディアミックスとはちょっと違いますね。
2冠を達成している作品は全体の6%。
上記で見たようにアニメ化がネックになっており、なかなか3冠が達成が出来ない状況が窺えます。
ちなみにこの5作とは「バッテリー」(あさのあつこさん原作)、「Dive!!」(森絵都さん原作)、「遠い海から来たCOO」(景山民夫さん原作)、「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子さん原作)、「魔術師」(江戸川乱歩さん原作)です。
しかし全体の63%は特段、メディアミックスされていない状況です。
まあこれからされるのかも知れませんが。

原作→青春アドベンチャーまでの期間

次に少し視点を変えて原作が発表されてから青春アドベンチャー化されるまでの期間を調べてみました。
まず単純に平均値をとってみると約8.6年になりました(年単位のデータで計算しているので精度はあまり高くないことにご注意下さい)。
ただし、この平均値は原作発表が極端に古い以下のような作品が含まれての数値です。

これらの影響を排除するために平均値ではなく、中央値で集計すると4年になります。
そして概ね1年程度で青春アドベンチャー化された作品、すなわち原作本が出版された年と青春アドベンチャーが放送された年の差が0年又は1年の作品は合計34作品(約39%)に及びます。
やはり青春アドベンチャーのスタッフが常にアンテナを張り、新しいものを発掘する努力を怠っていないというのは確かだと思います。
ちなみに上記の34作品のうち、年の差が0年の14作品を列挙すると以下のとおりです。

補足とまとめ

その他、今回は集計の対象としませんでしたが舞台化されている作品(アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス原作)、スーツケース・キッド~バイバイわたしのおうち(ジャクリーン・ウイルソン原作)、死神の精度(伊坂幸太郎さん原作)、カレーライフ(竹内真さん原作)、雪の女王わたしは真悟(楳図かずおさん原作))、直木賞を始めとした文学賞を受賞した作品など非常に多様な作品が採用されています。

以上から必ずしも高確率でメディアミックス状態になっているわけではないものの、スタッフが柔軟に幅広く、そして素早く作品選択を行っているのは感じられました。
頭が下がります。
これからも良い一層、アンテナを高くしてよい原作を探していただきたいものです。

おまけ

なお、本集計は冒頭に述べたとおりかなりラフな収集情報を元に作成しています。
細かい誤り等は多々あろうかと思います。
その点については平にご容赦頂ければ幸いです。
折角ですので集計のためにつくったデータでタブつきのテキストファイルで以下のとおり掲げます。

掲示用リスト(100作品)

こんな自己満足の企画に4回にわたってお付き合い頂き、ありがとうございました。
次回からはまたいつもどおり作品紹介をしていきますので、よろしくお願い申し上げます。


【特集】「100作品紹介記念①:放送時期」はこちら
【特集】「100作品紹介記念②:ジャンルと格付け」はこちら
【特集】「100作品紹介記念③:原作の種類」はこちら


次の特集は「お勧め作品:山田正紀『神狩り』」です。


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