彼女が遺したミステリ 原作:伴田音(青春アドベンチャー)

未格付
  • 作品 : 彼女が遺したミステリ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : AA-
  • 分類 : 推理
  • 初出 : 2025年1月6日~1月17日・19日(※)
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 伴田音
  • 脚色 : 入山さと子
  • 演出 : 小島史敬
  • 主演 : 入野自由
  • (※)1月13日の第6回が地震情報で中止され、以下1回ずつ繰り下がり最終回は1月19日(日)に放送されました。

一花(いちか)とともに人生を過ごすはずだった家に引きこもって1年4カ月。
病気で亡くなった彼女から手紙が届いた。
死人から手紙が来るわけはない。そんなことはわかっている。
ということはこの手紙は生前、彼女が手配していたものだ。
あの時、病室を離れなければ良かった。ずっとそう思ってきた。
最後に彼女は何を言おうとしていたのか。
この手紙を読めばそれがわかるかも知れない。今、縁(よすが)にできるのはそれだけだ。


いやーこれは入野自由さんファン感涙の作品だな~
それが本作品「彼女が遺したミステリ」を初めて聴いた時の感想です。

青春アドベンチャーと入野自由さん

入野自由さんといえば若手の人気声優として有名な方(といいつつもう36歳ですが)で多くのアニメやゲームに出演されているのですが、もともと劇団ひまわり所属の子役という出自もあり、青春アドベンチャーにも昔から出演されています。
最古は2008年の「尾張春風伝」でしょうか。
最近では2.5次元舞台をテーマにした人気作「ウィッグ取ったらただの人」(2020年)に主演されたほか、「世界から歌が消える前に」(2021年)では(ちょっとだけですが)劇中でラップを披露されています。
個人的には「昼も夜も彷徨え」(2023年)で演じた主人公のしっかり者の弟・ダビデがとてもよかった。

入野自由さんファン感涙?

そんな中、本作品で入野さんが演じる主人公・博人は最愛の人を亡くし悲嘆にくれるちょっと頼りなげな若者。
しかもこの作品は博人のモノローグがとても多い。
つまり入野さんの感情のこもった演技が全編にわたって堪能できるわけですよ。
これはファンの(特に女性のファンの)方にはたまらないのではないかな。
そういう意味で本作品は、青春アドベンチャーの長年の功労者ともいうべき入野さんとそのファンに対するスタッフからの贈物のような作品だと思います。

故人なのにヒロイン

さていきなり出演者紹介から入ってしまったので、ついでに他の出演者もご紹介。
まずヒロインの一花を演じるのは入野さんと同様に主に声優として活動されている柚木涼香さん。
一花は第1話時点で故人なのですが、過去に遡るシーンが多いことに加え、一花もモノローグがとても多いため、柚木さんの優しい語りが作品全般を通じて続きます。
ちなみに柚木さんの声はアニメ畑の声優らしくとてもかわいらしいものなのですが、実は入野さんよりずいぶんと年上です。
でもこの柚木さんをあえて起用した理由は第8回を聴いていてわかる気がしました。
先ほどこの作品は入野さんファン必聴的なことを書きましたが、実は柚木さんファンも必聴だと思います。
アニメや吹き替えと違ってビジュアルに頼らないオーディオドラマだから一層にです。
まあ具体的には第8回を聞いて頂くしかありませんが。

ヒロインの他にも2名の女性が…

という訳で、全編を入野さんと柚木さんの穏やかな語りが彩っている本作品ですが、実は昨年(2024年)年初に放送された同じ小島史敬D演出の「死にたがりの君に贈る物語」であまりに口汚い佐藤友子(演:尾碕真花さん)がちょっとトラウマになっている私としては「今年の小島作品は口調がずいぶんおとなしやかなだなあ」とちょっと物足りなく思ってしまった面もありました。
ところが、実は「口汚い担当」は本作品にも別におりまして…それが三田みらのさん演じる薫子です。
博人にぶつける悪意のこもったセリフがいいアクセントになっているとは思いますが、「バスタイム」、「うるはしみにくし あなたのともだち」といい癖の強い役にキャスティングされることが多いのは少しお気の毒です。

出演者は6人だけ

この3人のほかに、主人公のなぞ解きに同行することになる円谷を演じる岡本夏美さんを加えた4人が主要なキャストとなります。
出演者が女性中心のオーディオドラマの場合、誰が誰だかわからなくなりがちなのですが、三田さんなどがかなり癖強に演じていることもありその心配はありません。
なおこの4人の他に出演者は大西みのりさんと松木賢三さんの2人しかおりません。
特に第1回では入野さんと柚木さんしか出演しません。
この青春アドベンチャーでは異例なミニマム感がいいですね。

ミステリー作品ではあるが

さて出演者紹介で時間を使ってしまったのでストーリーについては捲きで紹介。
大きな流れは冒頭で紹介したとおり、死んだ恋人から次々と提示される謎を解きながら先に進んでいく形。
序盤だけでも、みなとみらい→ペットショップ(熱帯魚店)→葛西臨海公園…とテンポよく進んでいきます。
全般的に恋愛色が強く、各場面で提示される「謎」も本格的なミステリーというより「なぞなぞ」的なものが多いのですが、場面転換が早いのは心地よいです。

そして後半へ

前半1週間は入野さんのセンチメンタルな演技を堪能しつつ、テンポのよい「なぞなぞ」の連打を聴いているうちにすっきりと終わります。
ただ、最初の配達員は誰だったのか、なぜ一花は円谷を巻き込んだのか、なぜ薫子は手紙のことを知っていたのかなど、伏線も複数、設置されています。
後半はこれらの伏線が丹念に回収されていく展開で好感の持てるものでした。
結末に意外性はありませんし、(個人的には)そもそもあの結末でよかったのだろうかという思いもありますが、伏線はすべて回収し、登場人物たちも前向きな心持で終わることができており、気持ちの良い作品になっていると思います。
ただ、作品タイトルに入っている「ミステリー」を求める方というより、出演者のセンチメンタルな演技を楽しみたい方、具体的には恋愛ものとして聞きたい方、入野さん、柚木さんのファンの方向きの作品であるとは思います。

各回のサブタイトル

なお、各回のサブタイトルは以下のとおりです。

  1. 謎の手紙
  2. 謎解きの協力
  3. 付きまとう女
  4. 幽霊の正体
  5. クラゲの謎
  6. 円谷さんの秘密
  7. 最後の謎
  8. 真実のメッセージ
  9. ありがとう博人くん
  10. 一花が遺してくれたもの

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