- 作品 : マサマサ
- 番組 : FMシアター
- 格付 : C+
- 分類 : 職業
- 初出 : 2024年9月28日
- 回数 : 全1回(50分)
- 作 : 久継遥々
- 演出 : 南﨑美玖
- 主演 : 山本千尋
東北海道動物園にある日、飼育計画にない一頭のオオカミが連れてこられた。
毛並みがわさわさとしていることからマサマサと名づけられたそのオオカミを持ち込んだのは北海道未来環境研究所(通称、未環研)という聞いたことのない組織。
しかも、マサマサは以前世話したオオカミとはどこか違う。
不信感を覚えながらも、担当になった女性飼育員・那月は懸命に面倒を見るが、ある日、再びあらわれた未環研がマサマサを連れ去ってしまう。
慌てて未環研に駆け付けた那月だったが…
本作品「マサマサ」はNHK札幌放送局が制作したオーディオドラマで2024年9月にNHK-FMのFMシアターで放送されました。
脚本は日本脚本家連盟・北海道支部の主催(NHK札幌局が共催)するオーディオドラマの脚本賞である「北のシナリオ大賞」の受賞作です。
北のシナリオ大賞とは
北のシナリオ大賞は北海道を舞台にした脚本を募集するコンクールで、大賞受賞作は毎年FMシアターでドラマ化されています。
ここ数年は「土方さん、さようなら」(2021年)、「礼文バージンロード」(2022年)、「クジラの歌を聴かせてあげる」(2023年)と良作が続いたので本作も期待していたのですが…
オオカミ再導入
NHK札幌局のホームページ(外部リンク)によれば「歴史や科学的な事実、現実でもあり得そうな内容を土台にした物語」、「SFファンタジーな部分もあり」などと書かれているのですが、これSF的でしょうか、「あり得そうな内容」でしょうか。
確かにテーマとなっている「オオカミ再導入」はアメリカで実際に行われているし、世界中で検討がなされているのも事実です。
だからこそ動物園の飼育員が詳しくないなんてことはありうる?
飼育員ってそんなもの?
しかも本作品の再導入計画は信じられないほど杜撰です。
オオカミを1匹だけで再導入するとか意味が分かりません。
こんな計画を国や道が認めたなんて、日本の役所はそんなにダメな組織になってしまったのか?
いやそもそも飼育員なら絶滅したはずのエゾオオカミがいるという事態にもっと驚きなさいよ…
科学考証は?
実はこの辺には裏があり中盤に説明があるのですが、それがあるからこそ、無能なのは計画の推進側ではなく、明らかなおかしさをスルーしてしまった那月ということになってしまう。
いやいやその中盤で説明がある科学的な技術の活用も(ネタバレを防ぐため詳細は書けませんが、この作品と同じです。←ネタバレ注意)単なる再導入以上に科学的、倫理的に問題がある気がする。
この辺がどうしても気になって物語に入り込めませんでした。
あくまで個人の感想です。
あと中盤以降、物語があまりに感傷的に進行するのも…
また、先輩後輩の話し方とか、「みかん研」のくだりとか、俵丸博士の話し方とか、ちょくちょく笑いを狙いに来ているのも…
そうそう「公共の福祉」も人間社会の利益や権利の衝突を調整するための法理であって、作中で使っているのは意味違いますよね…
すみません、細かい話ばかりで。
本作品は本来そういうSF的な作品ではなく、人間と動物の心のつながり!的なセンチメンタルな作品なのかもしれません。
那月も「理屈の問題じゃない!」と叫んでいますし。
私が入り方を間違えたのでしょう。
演技は素晴らしい
さて本作品の主演は女優の山本千尋さん。
元武術太極拳選手という異色の経歴のアクション女優さんですが…
いいじゃないですか!
得意の体術を生かせないオーディオドラマというフィールドでありながら、その情感豊かな演技は聴きごたえ十分です。
本ブログで付した格付けの「+」分はこの山本さんの演技と素晴らしくリリカルな音響効果の分です。
やはり本作品は例えば「面影」と同様に、SF的な趣向など気にせず、リリカルな気分に浸って聞くべき作品だったのでしょう。
私は聞き方を間違えたのかも知れません。
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