タイトル回収が印象的なオーディオドラマ5選

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【なんでもベストテン30】タイトル回収が印象的なオーディオドラマを5つ選んでみた(追加アリ)

タイトル回収って?

「タイトル回収」とは、作中で作品タイトルの真の意味が明らかになったり、絶妙のタイミングでタイトルがセリフ中に使われたりすることをいいます。
いわゆる「伏線回収」の一種と言って良いと思います。
wikipediaによれば伏線とは「物語や作劇上の技術のひとつで、進行上の将来に起こる(知らされる)重要な内容について、因果関係(線)を伏せて事前に示唆しておく手法」であり、伏線回収とはそれが物語の進行によって読者に明らかになること。
タイトル回収とはそれがタイトルにおいて行われていることです。

印象的なタイトル回収

タイトル回収がうまくいくとそのシーンはとりわけ印象的なものになります。
最近、話題になったタイトル回収といえば2022年大河ドラマの「鎌倉殿の十三人」でしょうか。
個人的には漫画「宇宙兄弟」も感銘を受けたタイトル回収です。
いずれも誰の目にも意味がわかるタイトルと思わせておいて、終盤で2つ目の意味があることが明かされるパターンです。

5選の紹介

それでは今まで紹介してきたオーディオドラマの中で印象的なタイトル回収のあった作品を紹介します。
(注:当初「5選」でしたが「ふたつの剣」を追加して6作品になりました)

さよなら、田中さん(2018年)

「さよなら、田中さん」は小学6年生の田中花実を主人公にする連作短編集で青春アドベンチャーで放送されました。
小学生女子の日常を描いているとはいえ、加害者家族、横領、保険金殺人、いじめなどスパイスの効いた内容の作品です。
本作品はセリフでタイトル回収するパターン。
それも最後の最後のセリフなのですが、このセリフに備えて途中でモノローグ担当が入れ替わるという念のいれようです。

さよなら、田中さん 原作:鈴木るりか(青春アドベンチャー)
田中花実は母親とふたり暮らしの小学6年生の女の子。お母さんは、建設現場の“ガテン系”の仕事で一生懸命に家計を支えてくれているが、食卓に頻繁にモヤシが上がったり、ドリーミングランドに行くために自販機の釣り銭忘れを探し回らないといけないくらいには貧乏だ。でも、ふたりは明るく楽しく生活している。本作品は、そんな花実の周りに起こる、ちょっとおかしい、けど、ちょっと心にしみるいくつかの出来事を綴った連作短編である。

また、桜の国で(2017年)

「また、桜の国で」は第二次世界大戦直前にポーランドに赴任する日本人外交官を描いた作品で、本ブログで実施した青春アドベンチャー30周年全466作品アンケートで第2位の得票を得ました。
この作品のタイトル回収は最終回。
タイトルそのままのセリフではないのですが、ほぼ同内容の会話が展開されます。
「また、桜の国で」どうするのか、どうなったのかは、聴いてのお楽しみです。

また、桜の国で 原作:須賀しのぶ(青春アドベンチャー)
中学を卒業後に外務省の留学生試験に合格してから早10年。1938年、日本の外務書記生・棚倉慎(たなくら・まこと)はベルリンからワルシャワへと向かう列車の車上にいた。先の大戦で傷つき、疲れ果てた欧州。欧州中のすべての人々が平和を渇望しているはずだった。しかしこのポーランドを覆う暗い影は何なのだ。歴史上幾度も他国に侵略され国土を失ってきたポーランドはまた何かに怯えているかのようだ。何かとは?それは領土的な野心を隠そうとしない隣国・ナチスドイツなのか。それとも平和のためなら小国の滅亡にすら目をつぶろうという大国の無関心なのか。いくつもの価値観の間で押しつぶされるポーランドの人々。自身、日本とロシアという二つのアイデンティティの狭間に立つ慎は、この踏みにじられ、引き裂かれた国で何を目にするのか。

ふたりの娘(2016年)

FMシアターらしい家族の問題を取り扱う真面目な作品。
主人公は若いふたりの女性なので「ふたりの娘」というタイトルの由来はあまりにも明らか…と思わせておいて少し違う意味が最後に明らかになります。
この作品も最後のセリフで「ふたりの娘」という言葉がきちんと入る形です。

ふたりの娘 作:新井まさみ(FMシアター)
建付けの悪い扉を力いっぱいに開けたら、向こう側に1人の少女が立っていた。わざわざ東京から京都まで訪ねて来たはずなのに、すぐに帰ろうとする少女の態度に不審を感じて問い詰めると、彼女は父の不倫相手の娘だった。父が遺書にとんでもないことを書いていることが発覚して、今、両親は離婚寸前。娘である私としても父に裏切られたという思いしかない。寄りにもよってこんなタイミングでやってきたこの少女は、またとんでもないことを言い出した。不倫相手の女が死んで、そちらも遺言を残したというのだ…

びりっかすの神さま(2014年)

「びりっかすの神さま」は岡田淳さんによる児童文学を原作とする作品で、現代日本の小学校が舞台ですが、「びりっかすさん」という妖精的な存在が登場するファンタジー作品です。
ストーリー展開の予想が付かない良作なのですが、タイトル回収という点でいうと最初から「びりっかすさん」が登場しているのであまり意外性はありません。
ただ、最終盤のセリフがタイトルにつながるところがなかなか気持ちが良い流れでしたので選びました。

びりっかすの神さま 原作:岡田淳(青春アドベンチャー)
「頑張れ。」その一言を残して始(はじめ)の父親は死んだ。どういう意味で父親はその言葉を始に残したのか。いくら考えても、始には答えは出ない。そんな始は、転校した新しい小学校で不思議な“おじさん”に出会う。よれよれのスーツを着て天使みたいな羽をつけたおじさん。でもよく見ると半透明だし、身長も筆箱にちょうど入るくらいしかない。しかも始以外のクラスメイトには見えないようだ。自分のことを「びりっかす」と名乗ったおじさんが言うには、自分はこのクラスの「びりはダメ気分」(=ビリになりたくないという恥ずかしい思い)が生んだ存在なのだという。確かにこのクラスはちょっと雰囲気がおかしい。やたらと頻繁に5分間テストをやるし、その成績で席順を決めているようなのだが。

最後の惑星(1990年)

「最後の惑星」は実は作中ではっきりとタイトル回収をしていないためここで選ぶのは本来おかしいかもしれません。
冷戦終結直前のアドベンチャーロード時代に放送された作品で、有人火星探査をテーマにした作品ですので、「惑星」が火星を表すとして「最後の」が何を表しているかわからない中、物語は進行していきます。
最後まではっきりとタイトル回収はしないのですが、終わった後にふとテーマを考えると「最後の惑星」が何を示していたかがわかる趣向です。

最後の惑星 原作:ユルゲン・ローデマン(アドベンチャーロード)
東西冷戦下の西ドイツ。ソビエト連邦による東西対話の動きは見えるものの、まだまだ緊張状態が続く西ドイツに、久しぶりの明るいニュースが舞い込んできた。アメリカ合衆国が世界初の有人火星探査を計画し、イギリス・西ドイツなどの西側ヨーロッパ諸国からもパイロットを選ぶという。ドイツ人の宇宙物理学者フェリックス・レーマンはこの千載一遇のチャンスに応募することを決意し、妻子に相談する。応募条件は、宇宙工学と宇宙物理学をはじめとする諸分野に詳しく、若く運動神経も良い人間という厳しいもの。しかし楽天家のレーマンは密かに合格する自信があり、息子も大賛成してくれた。妻と娘は心配そうだがそれでもレーマンの意思を尊重してくれた。火星探査計画への参加に向けて動き出したレーマンだが、彼は後に驚くべき事実を知ることになる。

ふたつの剣(2009年)

原作は早瀬利之さんのノンフェクション「タイガー・モリと呼ばれた男-幻の剣士・森寅雄の生涯」ですがオーディオドラマ版では敢えてタイトルを変えて「ふたつの剣」としています。
森寅雄は剣道で「昭和の武蔵」と呼ばれた天才剣士でありながらアメリカに渡りフェンシングでも頂点を極めた人物ですので、当然「ふたつの剣」とは剣道とフェンシングを表していると思われるのですが実は…
この作品も最終回のセリフに「ふたつの剣」という言葉が入ります。

ふたつの剣 原作:早瀬利之(青春アドベンチャー)
大正11年、森寅雄は7歳で伯父の野間清治に引き取られた。清治は東京で出版社を経営する大実業家であり、野間道場を主催する剣道家でもあった。寅雄は、野間家の厳しい躾のもとで天性の素質が開花し、剣道の達人と認められるようになる。しかし、やがて寅雄は「たとえ一片の木の葉であろうとも自分の意思で舞う木の葉になりたい」と野間家の桎梏から逃れる決心をし、アメリカへと旅立つ。この物語は戦前・戦中・戦後の54年間を、日本とアメリカ、剣道とフェンシングの間で生き抜いた、現代の剣豪の物語である。

その他

実はこの企画は「風の向こうへ駆け抜けろ」の再放送にあわせて考えました。
この作品の場合、第2作の「蒼のファンファーレ」で第1作のタイトル回収に近いセリフがあるのですが、再現度がイマイチなので上記5選には入れませんでした。
FMシアターで放送された「ビギンズナイト 俺たちのカウント2.99!」も似たような状況です。
その他、中盤にタイトル回収のある「ハプスブルクの宝剣」、終盤にセリフに入る「ロンリー・ランナー」、終盤タイトルどおりの状況になる「UFOはもう来ない」や「ジャガーになった男」、最後に何となく「獅子」の意味が分かる「獅子の城塞」なども印象的です。

まとめ

さらにいうとタイトル回収を超えてタイトルがネタバレになってしまっている作品もあります。
101便着艦せよ」とか「女王陛下のアルバイト探偵」などです。
なかなか難しいものですね。
みなさんが印象的なタイトル回収はどの作品ですか?


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