プリンセス・トヨトミ 原作:万城目学(青春アドベンチャー)

格付:A
  • 作品 : プリンセス・トヨトミ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : A-
  • 分類 : 職業
  • 初出 : 2009年11月23日~12月4日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 原作 : 万城目学
  • 脚色 : オカモト國ヒコ
  • 演出 : 佐々木正之
  • 主演 : 利重剛

「その日」から10日前。
会計検査院の検査官である、松平・旭・鳥居の3人が東京から大阪へ向かった。
目的はいわずとしれた会計検査。
検査は何事もなく進むと思われたが、「社団法人OJO」なる団体に実地検査に向かった旭と鳥居が、実地検査をドタキャンされるという全体未聞の事態が起こる。
この団体、大阪府を経由して毎年5億円もの補助金が流れている。
このままでは済まされない。
自ら現地に赴く松平。
すると松平の前に、地下に建設された国会議事堂そっくりの建物と「大阪国・総理大臣」を名乗る謎の人物が現れる。
国費の不正使用を暴こうとする会計検査院と、400年間守ってきた秘密を守ろうとする大阪国の10日間の戦いが始まる。



万城目学さんの小説を原作としたラジオドラマです。
かなり非現実的なストーリーで一種のファンタジーではありますが、超常的な事件が起こる訳ではないので、ジャンルは「幻想系」ではなく「日常系」にしています。

大阪の大阪による…

大阪が舞台で、登場人物の大部分も大阪に関係のある人ばかり(最後の最後に意外な人物も大阪出身だということがわかります)なので、物語の大半は大阪弁で進行します。
しかし意外にも、特段、テンションの高い会話が続くわけではなく、機知に富んだボケとツッコミが展開されるわけでもなく、話している内容はとても真面目、というか普通の会話です。
この物語には、大阪には200万人の男達が所属するもう一つの「国家」が存在し、「トヨトミ」の血脈をその象徴として密かに守り続けている、という設定があります。
この秘密を代々、父から息子への口伝で守り続けているというのが物語のミソであり、これらの設定を軸に結末に向かって伏線が回収されていく過程は、なかなか聴きごたえがあります。

結局金はどうなった?

それにしてもどうしても気になるのが「結局、補助金は何に使われていたのか?」という問題。国会議事堂?の維持管理でしょうか?
ちっちゃい問題ですかね。でも少なくとも毎年5億円、35年で175億円が闇に消えていたわけですよ。
しかも暴力をちらつかせながらの圧力をかけてまで守ろうとしている。
この点について、作品終盤までの松平には自分の意に染まない動きでも最大限に活用して不正を暴こうというマキャベリスティックな迫力があったのに、最後に個人的な意地と情に流されたようになってしまってちょっと残念でした。
この辺は原作ではきちんと説明されているのでしょうか。

会計検査院3人衆

本作品、誰が主役か今ひとつ分からないのですが、会計検査院側の3人は利重(りじゅう)剛さん、川原亜矢子さん、マギーさんの3名が演じていらっしゃいます。
利重さんの重厚さ、マギーさんの軽快さ、ともになかなか聞き応えがあります。
また、川原さんは旭役と同時にナレーションも担当されています。
ちなみにこの旭という役は、最初は単なる物語の語り部的な位置づけに見えますが、最終的には結構重要な役であったことがわかります。

大阪国代表

大阪側は、大阪国総理大臣・真田幸一が「浪速のロッキー」こと赤井英和さん、その息子真田大輔役は三田村陽斗さん、プリンセス・橋場茶子役は櫻田実久さん。
赤井さんの演技は上手い下手以前に、普段からこんな感じで口べたなんだろうなという、ある意味、自然な感じを受けます。
そういえば2021年のFMシアター「摩耶ぎつね」もそんな感じでした。
また、三田村さんと櫻田さんは役どおりのリアルな少年少女のようで、三田村さんはやはり大阪を舞台にした2012年の「屋上デモクラシー」では主演を勤めています。

三昧との連携

ところで本作品、初めて第1回が放送されたのは2009年11月23日。
この日は、実はNHK-FMの有名な音楽特番「今日は一日〇〇三昧」の第56回目「今日は一日”おいしい音楽・食いだおれ”三昧」が放送された日でした。
というか「今日は一日”おいしい音楽・食いだおれ”三昧」が終わった直後にプリンセス・トヨトミの第1回が放送されたことになります。
「食いだおれ」といえば大阪。
「トヨトミ」といえば大阪。
明らかに狙った番組構成です。
こういうところNHK、意外とやりますね。


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