- 作品 : ザ・マンボスパイズ
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B-
- 分類 : コメディ
- 初出 : 1993年10月4日~10月8日
- 回数 : 全5回(各回15分)
- 作 : マキノノゾミ
- 演出 : 加藤択
- 主演 : 三上壱郎
大ヒット間違いなしとレコード会社に自分の曲を売り込みに行ったジロウ、サブ、ゲンの“マンボボーイズ”の3人。
しかし、レコードデビューはけんもほろろに断られた。
マンボは時代遅れなのか。
いや間違っているのはレコード会社の方だ。世間の方だ。
荒れる3人だが、自宅に戻り、届いていた小包を開けたときに状況は一変する。
実はジロウは3年前まで外務省の秘密諜報員だったのだ。
そして、人手不足の外務省は、ジロウとその仲間に、中南米サンチョ王国のお姫様を救出する密命を授けるという。
ジロウ以外の2名には何の受ける義理もない依頼。
しかし、報酬を聞いたとき、ふたりもこの提案に飛びつくことを決めた。
外務省の二階堂課長はいう「報酬は君たちのレコードデビューだ!」
本作品「ザ・マンボスパイズ」は、劇団M.O.Pを主催していた俳優・劇作家のマキノノゾミさんによるオリジナル脚本のラジオドラマです。
マキノさんは、ヒロインを宇宙飛行士にしてしまうという、歴代の朝ドラの中でも怪作として知られる「まんてん」(2002年下期)の脚本を担当した方で、「悪戯の楽園」に主演されたキムラ緑子さんの旦那さんでもあります。
本作品も「マンボ」+「スパイ」という何とも突飛な組み合わせを題材とした作品です。
ちなみに、「マキノ」と聞いて思い出すのは、「浪人街」や「次郎長三国志」などの監督として知られる「日本映画の父」マキノ雅弘さんや、その甥で映画監督としては「マキノ雅彦」と名乗っている津川雅彦さんですが、これらの方とマキノノゾミさんは特に関係はないようです。
本格スパイドラマ?
さて、本作品「ザ・マンボスパイズ」は、「スリル、スピード、サスペンスという3つのキーワードを売り物に、本格スパイドラマの幕が上がる!」などという口上とともにスタートしますが、冒頭のあらすじどおり中身はコメディ。
「反体制派から王女を救い出す」というプロットが同じ作品として、アドベンチャーロード時代の「女王陛下のアルバイト探偵」がありますが、軽い調子ながらキチンと冒険サスペンスをしていた「女王陛下のアルバイト探偵」と異なり、本作品はあくまで笑い、それもトホホ感満載の会話が作品の中心であり、両作品は性格が全く違います。
大体、マンボを愛するバンド、というあたりからすでにダメダメ感満載ですよね(マンボ好きの皆さん、ごめんなさい)。
もっとコテコテでよかったのでは
ただ、個人的な感想を言うと、本作品のギャグジーンは脱力系のそれが多く、蜃気楼のところなどちょっと笑えるシーンもあったものの、残念ながら腹を抱えて爆笑できる場面はあまりありませんでした。
折角のラジオオリジナルのドラマ脚本。
演劇風の高尚で薄味なユーモアもよいのですが、「ロスト・タイム」のしりとりシーン、「ゴーゴー!チキンズ」の「え~~」のシーン、「元中学生日記」の空回りし続ける主人公のような、何も考えずに音だけ聞いて爆笑できるコテコテのシーンも作って欲しかったものです。
全5話と、青春アドベンチャーでは短い構成でありながら、実質的に第4話で冒険が終わってしまうこともあり、何となく食い足りない感覚が残ってしまった作品でした。
キャスト紹介
なお、本作品で主役の「ジロウ」を演じたのは、牧野さん主宰の劇団M.O.Pに所属されていた三上壱郎さん(オリジナル脚本なので、この「ジロウ」が次郎なのか二郎なのか、確認する手段がありません…)。
また、ヒロインの「カサチョフ王女」を演じた濱田万葉(はまだ・まは)さんは違いますが、「サブ」を演じた小市慢太郎さん(「電気女護島」、「蜩ノ記」など)も劇団M.O.Pに所属されていました。
加藤拓さん唯一の演出作品
本作品のように、脚本家と主要な出演者などをセットでひとつの劇団に任せた作品は、ひとむかし前の青春アドベンチャーでは時折見かけました。
具体的には、多少役割分担は異なりますが、青春アドベンチャー随一の怪作「少年漂流伝」(劇団維新派)、有名劇団の役者が共演した「サンタクロースが歌ってくれた」(演劇集団キャラメルボックス)、原作者自らが出演した「怪人二十面相・伝」(劇団プロジェクト・ナビ)などが該当します。
本作品の場合は、加藤拓さんという、もともとテレビ畑(「八重の桜」、「天花」、TV版「精霊の守り人」などの演出)で、青春アドベンチャーではこれ一作しか担当されていない演出家が演出された作品だったからこその、凝ったスタッフ・キャスト構成だったように感じます。
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