- 作品 : ボヘミアの魔術師
- 番組 : 青春アドベンチャー
- 格付 : B+
- 分類 : 伝奇(海外)
- 初出 : 2026年8月24日~9月11日
- 回数 : 全10回(各15分)
- 作 : 並木陽
- 音楽 : 日高哲英
- 演出 : 藤井靖
- 主演 : 中川晃教
1776年。フランスでは革命前夜にあたるこの時代。
中欧ボヘミアではハプスブルク家の盤石な支配が続いていた。
繊細な青年、ヨナーシュは貧しい村の期待を一身に背負ってプラハ大学に進学したもののドロップアウト。
「動物磁気医学」で病を治すという触れ込みで、有閑マダムから小銭をせしめるペテン師へと身をやつしていた。
金回りはよくなったものの自己嫌悪から鬱々とした日々を過ごすヨナーシュ。
そんな彼に突如望んでもいなかった立身出世の機会が訪れるのだが…

2017年の「斜陽の国のルスダン」以来、青春アドベンチャー毎年の恒例となっている並木陽さんによる西洋歴史もの。
その詳細は以下の記事をご参照頂きたいのですが、この「ボヘミアの魔術師」で、➀原作提供1作品、➁オリジナル脚本提供8作品、➂原作付き作品の脚色3作品と、合計12作品に及びます。

あくまで個人的感想ですが…
これらのうち個人的には➂の脚色作品に好みの作品が多いのですが、それら以外については、ストーリーのメリハリが若干薄いのと、悲劇も苦難も小ぎれいに(=宝塚にもあいそうな雰囲気で)描いてしまうあたりが個人的にはあまり好みではないのです(あくまで個人の感想です)。
歴史ものでは、もっと、こう七転八倒しながら泥臭く足掻く姿が見たいんですよ、私は。(あくまで個人の感想です)。
ということもあり、端的に言って放送開始前は「この類の作品はもうお腹いっぱい」という気持ちだったのですが、聞いていて2点ほど語りたい事項がでてきました。
やはり主演が素晴らしい
1点目は、これは放送前からわかっていたのですが、やはり中川晃教さん。
「ハプスブルクの宝剣」、「また、桜の国で」、「1492年のマリア」、「夜市」…
どれも素晴らしいですし、いまいちな作品を中川さんの力でひっくり返しているような例すらあります。
本作は序盤では「中川さんにしては普通かな…?」と思いながら聞いていましたが、慣れてくるにつれ「やはりいいなあ」と思いました。

今までと少し違う趣向
もうひとつは本作品が純粋な歴史ものではないこと。
いままでの並木作品には基本的にファンタジー要素はなかったんですが、今回はそれに挑戦しています。
単なる荒唐無稽なファンタジーになってしまうと並木さんの良さを殺してしまうと思うのですが、本作品は適度な感じ。
新しい挑戦には素直に拍手を送りたいと思います。
ハプスブルクといえば
さて冒頭に書いたとおり本作品の前半部分は主にオーストリア帝国、すなわちハプスブルク家を舞台としています。
以前「フランス史に『ルイ』が多すぎる」という記事を書いたわけですが、ハプスブルク家についても支配している期間が長すぎ、かつ地域が広すぎで前後関係がよくわからんというのが(受験で世界史を選択しなかった人の)率直な感想だと思います。
特に青春アドベンチャー+並木陽さん+中川晃教さん、という観点で見ると「ハプスブルクの宝剣」との関係が気になるところ。

楽しい趣向
簡単に言ってしまうと本作品の時代は「ハプスブルクの宝剣」の一世代後です。
「ハブルブルクの宝剣」で野々すみ花さんが演じていたテレーゼ(マリア・テレジア)と田代万里生さんが演じていたフランツ・シュテファン(フランツ1世)の息子が本作品のキーパーソンの皇帝ヨーゼフ2世。
ちなみに本作品でヨーゼフ2世を演じているのは田代万里生さん。
親子役を同一の俳優さんがやっているわけですね。
公式ホームページによればこの配役はあて書きだそうですが、両作を知っている人には嬉しいお遊びです。
ついでにいうとヨーゼフ2世のひ孫が「帝冠の恋」でチョウ・ヨンホさんが演じたフランツ・カール。
その妻はテレーゼと同様に野々すみ花さんが演じたゾフィーな訳ですが、ここまでいくとだいぶ訳が分からなくなってきます…
ストーリーは?
さて話を本作品に戻すと、主人公はこれらの歴史上の実在人物ではなく、架空の青年ヨナーシュ。
演じるのは中川晃教さんで、「ハプスブルクの宝剣」と同じです。
物語冒頭では「ボヘミアの魔術師」というより「ボヘミアのペテン師」というべきチャラいキャラですが、実はその繊細な性格ゆえの独特な能力を持っていることがわかってきます。
こういった繊細な役柄は中川さんのお得意とするところで、徐々に調子が出てきた第6話あたりで第1部的な部分が終了。
第1部のタイトルを仮につけるとすれば「ケルベロスの牙」編でしょうか。

おっとゲーテを忘れていた
その後、舞台はヴァイマール公国にうつり第8話くらいまで続いたうえで、以降は両方の要素をあわせるような形で進行していきます。
第2部?で初登場する最重要キャラは成河さんが演じるゲーテでしょうか。
成河さんも「昼も夜も彷徨え」の好演があるので信頼感十分です。

その他の配役
その他の配役も、本作品の敵役であるシュテレヴィッツ侯爵夫人パガーチェナ役の朝夏まなとさんや、ヨーナシュの相棒(詐欺仲間)ルドミラ役の仙名彩世さんなど、宝塚出身の女優さんが勢ぞろい。
ただ個人的には朝夏さんなら「ミシンの音色を、もう一度」や「月につれてって」、仙名さんでは「月の立つ林で」や「人魚が逃げた」といった現代ものの方が好きかな。
おふたりともこういった歴史ものは本気で演じれば演じるほど宝塚っぽくなってしまう気がするんですよね。
結局思ったこと
以上のとおり、出演者の熱演は認めざるを得ない本作品。
でも「軽業師タチアナと大帝の娘」でも感じたのですが、大河ドラマにしたいのか、登場人物のパーソナルな冒険譚にしたいのか、脚本家に迷いがあるように感じました。
大河ドラマで迫力を出すには、よぼど政治史、戦争史に造詣又は興味があり、かつ闘争のドロドロとした側面を描くのが好きな、ある種の変態的な探求欲・暴露欲が必要だと思います。
並木さんのオリジナル脚本からはそれは感じられず、後者に振った時の方がよい作品になっていると感じます(原作がある場合を除く)。
やはり脚本がすべて
結果、登場人物より出演者の魅力が中心の作品になっています。
これは出演者のファンには喜ばしいことなのだとは思いますし、番組の人気を保つためには必要なやり方なのかもしれません。
ただ、個人的には(演出の特別な力がなくても伝わる)骨太のストーリー、(出演者の特別な熱演がなくても)魅力のあるキャラが欲しい、というのが正直な感想です。
【並木陽原作・脚本・脚色作品一覧】
中世~近代ヨーロッパを舞台とした多くの作品を提供された並木陽さんの関連作品の一覧は以下からご覧ください。



コメント
今回の作品は、並木さんの力作のように感じますが、相変わらずこぎれいで予定調和的に感じられ、好きな方には非常に受ける内容のように思います。(私は特に好きではありません。)
残念なのは、今回もオーディオドラマ初挑戦の方がいなかったこと。次回の新作・「走れ!赤と馬」に出演する湖春ひめ花さんを回してもよかったのではないかと思いました。今回は手堅く
まとめる方向だったのかもしれませんが、合うか合わないか分からないオーディオドラマ初挑戦の方の声を聞けるのも楽しみの一つだと思っています。
匿名希望さま
コメントありがとうございます。
並木さんの作品は「他の原作者の作品を脚色」かつ「主人公が男性」の作品は結構好きです。
ただ、男性主人公の作品でもどこか宝塚の男役的な綺麗なものになってしまっているとは私も感じます。
宝塚の男役って、実際の男性とは全く別の「空想上の生き物」で、実際の男性はもっとドロッとしたものなので。
もっと泥水をすすり、もがき、足掻きながら一歩ずつ進む的な物語を聞きたいのですが、まあこれは私の価値観ですね。
キャストについてはおっしゃるとおりどこかで冒険して欲しいとは思います。
なかなか難しいとは思いますが。
作品聞きました。
中川さんは初めて聞いたのですが、声がよく、安定感があり、人気もあるのもうなずけました。
朝夏さんや他の出演者も熱演で聞き応えがありました。
ただ、第14回でクライマックスを迎えるのではなく、最終回にクライマックスで
よかったのではないかと思います。最終回は主要人物の登場しただけであっさりしていたから
それであれば「四日間家族」にように最終回でクライマックスの方が楽しみが続くと
思いました。(もっとも、「四日間家族」は最終回は不可思議な終わり方をしましたが。)
また、成河さんには悪いですが、中間部の第8話から第15話はなくても良い感じが
しました。(作品の狙いがはっきるするからです。)
この作品は良くも悪くも出演者の演技を聞く作品だと思いました。
出演者もよく集めたと思いますし、オーディオドラマ初挑戦の方がいなかったことも頷ける
内容でした。
匿名希望さま
コメントありがとうございます。
中川さんは、役としては「また、桜の国で」のレイが、作品としては「ハプスブルクの宝剣」が最高です。
是非、機会はあったら聞いてみてください。
毎回、返信をありがとうございます。
再放送があれば、期待して聞いてみます。
今回誤字が多いですね。お疲れ様です。
作品自体はファンタジーもあって他の並木陽作品より楽しめました。
⓵→①
並木洋右→並木陽
曲本→脚本
オーストラリア帝国→オーストリア帝国
演じるには→演じるのは
公開不要です。
Nagiさま
ご指摘ありがとうございます。
誤字については推敲する時間のない新作の記事ではだいたいこんなものでして、実は公開後にひそかに直しています。
仕事では許されない対応ですが。