サウンド・ドライブ 作:さわだみきお他(青春アドベンチャー)

格付:B
  • 作品 : サウンド・ドライブ
  • 番組 : 青春アドベンチャー
  • 格付 : B-
  • 分類 : 多ジャンル(競作)
  • 初出 : 2003年3月3日~3月14日
  • 回数 : 全10回(各回15分)
  • 作  : (下表のとおり)
  • 音楽 : BANANA
  • 演出 : 藤田至、濱田裕之
  • 主演 : 光石研、小西美帆

NHK名古屋局が制作する脚本家競作のオリジナル短編ラジオドラマ集作品、通称「10人作家シリーズ」。
本作品「サウンド・ドライブ」はその1作であり、2003年に放送されました。
なお、作品名は「サウンド・ドライブ」であり「サウンド・ライフ」ではありません。
そのため、当然ながら大阪局で制作している類似企画の「ライフシリーズ」の一作ではありません。

テーマは音

さて、本作品に収録されている10話の小品の共通キーワードは「音」。
この名古屋局で制作している短編作品集は、一貫して幻想的でアンニュイ、そして難解な作品が多いのが特徴で、本作品もご多分に漏れず独特の大人の雰囲気を持っています。
しかし、この「音」というテーマが、音だけで表現するラジオドラマにぴったり合っているから、抽象的で浮き世離れしているなりに、他の年の作品と比較すると、難解さはやや薄いように感じます。

BANANAさんの音楽

なお、この「音」をテーマにした作品で音楽を担当されているのは音楽ユニットのBANANAさん。
ロスト・タイム」のような軽妙なものから、厭世的な「レッドレイン」まで、名古屋局の多くの作品を担当されています。

各話の概要

本作品の各話のタイトルと脚本家、ジャンルと格付け、概要と一言は以下のとおりです。

◆第1話 「天使のおなら」 (さわだみきお)

分類 : コメディ
格付 : A
おならが見える機械を発明した水島は、一度もおならをしない女性に気がつくのだが。


全編、おならの音が連発される問題作。一見、ゲテモノ風だがなかなか見事なオチ。

◆第2話 「むぎゅっ」 (寺嶋奈美子)

分類 : ホラー
格付 : C+
妻が物をやたらと物を踏むようになった。憂さ晴らしなのか?夫は気になるが。


夫も無責任だとは思うが、ちゃんと話そうとしない妻にも問題があると思う。

◆第3話 「沈む」 (田島秀樹)

分類 : 幻想(日本)
格付 : B
何かから逃げる男。たどり着いたビルの屋上で女の姿を目にするのだが。


ハードボイルドでセンチメンタルな作品。感傷的なだけで内容はないが心には残る。

◆第4話 「壁のむこう」 (神谷千加子)

分類 : 日常
格付 : B-
大学生の女は壁を通して聞こえる男の生活音に耳を澄まし、その生活を想像する。


ヤマなし、オチなし。女の気持ちもわかったようなわからないような。

◆第5話 「うどん粉」 (二木美希子)

分類 : 日常
格付 : C+
うどん粉を捏ねる音が思い出させる鳴き砂の思い出。


それなりに哀歓は感じるが、所詮は初老の男性の繰り言と言っては言い過ぎか。

◆第6話 「雑音回収倶楽部」 (佐藤久美子)

分類 : 幻想(日本)
格付 : B-
あなたの耳障りな音を回収します。不思議な広告に惹かれて男はその倶楽部を訪れるが。


音を回収できるテープレコーダーという発想は面白い。テレコに時代を感じるが。

◆第7話 「誘拐」 (関澄一輝)

分類 : サスペンス
格付 : C+
気がついたら目隠しをされて縛られてクルマの中にいた。私は誘拐されたのか?


妖精作戦」でやりたい放題だった関澄さんの脚色。もう一ひねりあると思ったが。

◆第8話 「深層効果音」 (はせひろいち)

分類 : サスペンス
格付 : A
効果音により記憶喪失を治療する研究と大学構内で起きた自動車事故。二つの関係は?


サスペンス調。「ラジカセからレクイエム」には敵わないがそれなりに楽しめる。

◆第9話 「照子とうなぎと、その父親」 (橋本信之)

分類 : 日常
格付 : C
登校拒否中の娘とその父親がうなぎ屋で語り合う。父は登校拒否の理由を知りたがるが。


愚にもつかない会話。娘の声が娘に聞こえないのもイマイチ。

◆第10話 「寂しさの音色」 (土肥陽子)

分類 : 日常
格付 : C+
忙しい毎日。女が31歳の誕生日を迎える日に、男女は自分たちの会話を再考する。


メッセージはとても分かりやすい。そのメッセージにも反対はしないがありきたり。

光石研さんと小西美帆さん

本作の出演者は、まず男性側の主演が、この「10人作家シリーズ」では常連だった俳優の光石研さん。
光石さんは、「悪戯の楽園」(1999年)、「マジック・タイム」(2000年)などにも出演されています。
そういえば青春アドベンチャーの長い歴史の中でも異色作といえる「カラマーゾフの森」にも出演されていましたね。
また、もう一人の主演者である朝ドラ女優の小西美帆さんは、NHK本局の制作していたオリジナル短編集シリーズである「不思議屋シリーズ」の1作、「不思議屋図書館」でも主演されています。
短編集作品に手慣れたおふたりが主演しているからか、なかなかよくまとまった作品集になっています。

【10人作家シリーズ(名古屋脚本家競作シリーズ)作品一覧】
その難解さとアンニョイさで青春アドベンチャーでも異彩を放つ、名古屋局制作のオムニバス作品シリーズの一覧は、こちらです。
本作品以外の作品の記事もご覧ください。


コメント

  1. コン より:

    SECRET: 0
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    10話の中で面白く聞いた作品は「天使のおなら」「むぎゅっ」「壁のむこう」「誘拐」です。

    天使のおなら

    この作品は「おなら」を素材にしてユーモアに富んだ作品でした。斬新な作品だったと思います。

    むぎゅっ

    普段妻に無関心な夫を批判する作品。無関心が人をこれだけ狂わせたのかと思うと、周りの人に関心を持つのがどれだけ大事か改めて覚えました。

    壁のむこう

    女が男に手紙を書き換えて渡します。元の手紙を渡したらきっと男が傷付くことを気遣って気を配ったのだと思います。それが良かったです。

    誘拐

    緊迫した空気で始まりますが、Hirokazuさんが仰ったもう一捻りがあったらよかったのではないかと思いました。また、登場人物がもっといたら面白い話になったでしょう。

    これらの作品以外は正直何の話が分かりませんでした。(笑)話というか、会話の辻褄が合ってない感じしかありませんでした。

    15分尺のラジオドラマには物足りない感があります。それだけ物語を圧縮して再構成するのはさぞ難しかったでしょう。通常の青春アドベンチャーの尺だったら機知に富んだ作品になれたのではないでしょうか。

  2. Hirokazu より:

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    コンさま

    こんにちは。
    名古屋局のオムニバスはやたらと難解な作品が多いのですが「サウンド・ドライブ」は(比較的)わかりやすくていいですよね。
    私もやっぱり、ヤマがあってオチがある楽しい作品が好きです。

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