制作統括(プロデューサー)でみる青春アドベンチャーの歴史(その1・1998年~2005年)

演出家・脚本家別一覧

始めにお断りしますが、私はテレビ・ラジオの制作体制については全くの素人です。
当然、NHKの内部情報も知らない一聴取者ですので、本記事はあくまで公式に知りえる範囲の情報をもとに個人の感想を書いたものにすぎないことをご了承ください。

「制作統括」or「演出」

さて、毎回の青春アドベンチャーの放送におけるスタッフ紹介を聴いていて、最近気になるのが「制作統括」。
現場における作品づくりの実務的な中心が「演出」(=ディレクター、映画でいえば「監督」)であるなら、「制作統括」(=プロデューサー)は番組全体の企画や、予算調達・管理、キャストやスタッフの人事など、まさに制作全体を統括する役職です。
ただ、青春アドベンチャーなどNHKのラジオドラマの場合、キャスティングは演出の方が行っているとの証言があります(こちら参照)し、個々の作品選定も演出の方を中心に行っていることが示唆される発言も散見します(例えばこちら)。

「演出」が重要

現実的に月1本以上で新作を作り続けるペースの中で、すべての作品に制作統括が中心的に関わっていたらとてもワークするとは思えません。
実際、放送の中でこそ制作統括の方のお名前も呼ばれますが、公式ホームページでは一部を除いて制作統括の方のお名前の記載はありません。
ということで、このブログでは作品制作の中心人物を「演出」ととらえ、各作品ごとに演出家の方のお名前を原作者、脚本家と併せて表記してきました。

「制作統括」の色も出る

ただやはり制作統括の方の「色」ってあるのではないかと思います。
また、そもそも制作統括の方がどの程度のサイクルで変わっているのか、各年代の制作統括が番組にどういう形でかかわっているのか等を概観すると何となく見えてくるものがあるような気もします。
そこで今回は同一の方が制作統括をしている期間をひとつの時代と考え、その時代単位で青春アドベンチャーの歴史を振り返ってみたいと思います。

期間分けの基準

なお、ある制作統括の方の担当期間中でも一部、他の方が制作統括となっている作品が挟まることがあります(主に大阪局、名古屋局の制作作品)がこれは大きな時代区分とは無関係しました。
また、今回整理したのは1998年初放送の「着陸拒否」以降。
この作品から番組中で継続的に「制作統括」の方のお名前が呼ばれるようになりました。
それ以前も部分的に把握している作品もありますが、網羅的に調べるのが困難なのでご容赦ください。

制作統括からみる歴史

それでは始めます(敬称略です。ご容赦のほどを。)

制作統括:河村正一

開始:着陸拒否(1998年3月)
最終:タイム・リーパー(1998年7月)


1995年TVドラマ「大地の子」で上川隆也さんを抜擢しお茶の間に浸透させた河村正一さんの制作統括時代。
ただし、ここで記載した期間は、放送で制作統括の紹介を始めてからの期間であり、手元の資料では少なくとも「ロスト・ワールド」の1997年6月には制作統括をされていたようです。
一方、1996年6月の「天体議会」時の制作統括は土屋秀夫さんでしたので在任期間は長くても1年ちょっとだったのかもしれません。
この時代は長く続いた「川口泰典さん演出作品大杉!」時代の直後くらいの時期。
番組が新しい方向性を模索していた時期だと思います。
なお、この時期の地方局作品の制作統括は大阪局の小松隆一さん(「少年漂流伝」)。

制作統括:松本順

開始:笑う20世紀 パート5(1998年7月)
最終:仮想の騎士(2001年5月)


土屋秀夫さん・河村正一さん制作統括時代には演出(「今夜は眠れない」、「夏の魔術」など)として青春アドベンチャーに関わっていた松本順(まつもと・すなお)さん。
制作統括時代にも「卯の音が出ない」(1998年12月)だけはご自身による演出です。
在任期間が3年と比較的長く「海賊モア船長の遍歴」、「封神演義」、「オルガニスト」、「645~大化の改新青春記」など語り継がれる名作が多く残されました。
また保科義久さん演出の「魔女たちのたそがれ」、「イカロスの誕生日」など声優さんを起用した作品も多めでした。
また、後に制作統括になる藤井靖さんの青春アドベンチャー最初の演出作品「不思議屋百貨店」が制作されたのもこの時期でした(そうか「不思議屋シリーズ」のスタートは藤井さんからだったんだ…)
なお、名古屋局作品は竹内豊さん、大加章雅さん、大阪局作品は小松隆一さん、内藤愼介さんが制作統括でした。

制作統括:音成正人

開始:踊る21世紀 Part2(2001年7月)
最終:南の島のティオ(2002年6月)


FMアドベンチャー」時代に役所広司さん主演の「21世紀のユリシーズ」を演出している音成正人さんが制作統括。
大河ドラマ「炎立つ」「琉球の風」のプロデューサーでもあります。
ただし、青春アドベンチャーファンからみると、ここから短い期間で制作統括が変わる苦難の?時代が始まった時期でもあります。
この期間の音成さん以外の制作統括は金井勉さん(大阪局「永遠の森・博物館惑星」)と銭谷雅義さん(名古屋局「私の告白」)。

制作統括:木田幸紀

開始:アクアリウムの夜(2002年7月)
最終:不思議屋薬品店(2002年11月)


木田幸紀さんは大河ドラマ「独眼竜政宗」の演出や同「毛利元就」の制作統括を経て、2011年にドラマ畑出身者にとしてNHKでは久々に理事に就任(2016年には専務理事)された方らしいのですが、なぜかわずか4カ月だけ青春アドベンチャーの制作統括をされています。
制作統括とされている作品も4作品のみ。
何があったのでしょうか?
なお、この4作品のほかにこの時期に金井勉さん制作統括の問題作?「カラマーゾフの森」が放送されています。

制作統括:大津山潮

開始:迷えるお羊年(2002年12月)
最終:光の島(2003年7月)


木田幸紀さん4か月で交代された後、残りの8カ月を担当されたのが大津山潮さん。
期間が短いので担当作は6作品のみ。
青春アドベンチャーでは珍しいギャラクシー賞優秀賞受賞作「光の島」が最後の作品になりました。
この期間の他局作品は「サウンド・ドライブ」(名古屋局、制作統括・銭谷雅義)。
なお、「光の島」のひとつ前に金澤宏次さんの制作統括がスタートしています(「海辺の王国」)。

制作統括:金澤宏次

開始:海辺の王国(2003年7月)
最終:穴(HOLES)(2005年6月)


「光の島」のあと「DIVE!!」から本格スタート。
在任期間は2年で一応、番組は落ち着いたと思われたのですが、2004年・2005年は新作の制作が極端に少ない年だったので色々とあったのかもしれません。
不思議屋不動産」、「おいしいコーヒーのいれ方Ⅶ」、「申モノにござる」など過去から継続シリーズや、「インテリア・ライフ」(小見山佳典さん制作統括だけど)、「タイムスリップ明治維新」などの新規スタートシリーズなど、シリーズものが多い印象。
上記のほか、他局作品の制作統括としては、銭谷雅義さん(名古屋局、「オーデュボンの祈り」、「家守綺譚」)、谷口卓敬さん(大阪局、「G戦場ヘヴンズドア」)。
なお、金澤宏次さんはNHKを退職され現在はユニオン映画株式会社の代表取締役社長とのこと。

予想以上に長い記事になってしまいましたので、2本に分けることにしました。
後半はこちらをご覧ください。

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