江戸時代を舞台にした作品ごとの時代設定を整理する

ゆるゆるつながり

【特集:青アド・ポーカー34】江戸時代を舞台にしたラジオドラマの一覧

NHK-FM青春アドベンチャーでは近世フランスを舞台にしたラジオドラマが妙に多いのですが、日本人にはその時代設定の前後関係がとてもわかりづらいことから、以前、それを一覧で整理しました。
一方、最近、青春アドベンチャーで増えているのが江戸時代を舞台にした作品です。

江戸時代といっても長い

江戸時代は約260年にも及ぶので該当する作品が多いのも納得ではあるのですが、長いだけあって、それぞれの作品が260年のどの辺を舞台にしているかは意外と混乱しがちです。
今回、江戸後期を舞台にした「女だてら」放送にあわせて、過去の江戸時代を舞台にした作品を一覧にして整理してみましたので、ご参照下さい。
なお、「あおなり道場始末」(2017年放送)だけはどこの時代に分類してよいかわかりませんでした。
ヒントを見つけた方がいらっしゃいましたら是非ご教示ください。

江戸時代を舞台にした作品一覧

さてそれでは一覧をご覧ください。
なお、以下の一覧には青春アドベンチャー以外の番組で放送された作品を含みます。

江戸時代初期・前期 (1603年~1700年ごろ)

徳川家康の征夷大将軍就任から幕藩体制の確立まで。
江戸時代と言っても初期にはまだ豊臣氏が存在していますので、戦国時代の名残が色濃い時代。
「霧隠れ雲隠れ」や「タイムスリップ大坂の陣」はそのターニングポイントとなった大坂の陣(1614年・1615年)を題材にしており、「きりしたん算用記」もその3年後が舞台です。
「ジャガーになった男」の冒頭に出てくる慶長遣欧使節はその少し前の1613年スタートですが、「ジャガーになった男」自体はそこから長い時間を描いていますので、以下の順としました。
その後、鎖国の進展(概ね1612年の幕領における禁教令から1639年の南蛮船入港禁止まで)により国内中心の経済体制が確立していくわけですが、この時期の金沢を描いたのが「時めがね金沢うた絵巻」です。
そして鎖国のきっかけとなった最大の事件である島原・天草一揆(島原の乱・1637年~1638年)を題材としたのが「碧眼の反逆児 天草四郎」と「白狐魔記 天草の霧」となります。
なお、「カムイ外伝」は原作に柳生厳包(連也斎)が登場することと、「続・カムイ外伝」の背景説明で明暦の大火に言及されていることから、この時代としています。
飢饉が描かれているのでもっと後期かと思っていたのですが意外と早い時期ですね。

江戸時代中期 (1700年ごろ~1750年ごろ)

○元禄期~正徳期
経済の急成長、貨幣経済の浸透とともに主に上方で元禄文化が花開いた時代。
そして、朱子学者・新井白石による正徳の治と呼ばれる文治主義による政治改革が進められた時代でもあります。
この時代を舞台とした作品としてはまず、元禄時代を象徴する「元禄赤穂事件」(いわゆる「忠臣蔵」)を描いた「白狐魔記 元禄の雪」。
そして、「エド魔女奇譚」も鎖国後間もない時期ならではの作品と言えるかもしれません。
ちなみに「エド魔女奇譚」の中では次の時代の主役となる徳川吉宗や徳川宗春も登場しています。
なお、「ウブヒメ」含めすべての作品が超常要素ありの「伝奇系」です。


徳川吉宗の幕政 (享保の改革)
江戸時代の三大改革の中でももっとも著名なものといえば「享保の改革」。
暴れん坊将軍として(?)有名な徳川吉宗の治世は、貨幣経済の幕府によるコントロールと質素倹約を旨としたものでしたが、この時代、吉宗の政策に敢然として対抗した尾張藩主・徳川宗春を主人公とした作品が「尾張春風伝」です。

江戸時代後期 (1750年ごろ~1850年ごろ)

○田沼意次の幕政 (田沼時代)
徳川吉宗亡き後、大胆な重商政策に舵を切った田沼意次。
従来、わいろ政治家との悪評を受けてきた田沼ですが、近年再評価が著しく、「ぼろ鳶組シリーズ」でも主人公の影の理解者として登場します。
しかし、末期には天明の大飢饉などの天変地異も重なり暗い世相となっていきます。
その時代を背景としているのが「風になった男」です。


○松平定信の幕政 (寛政の改革)
三大改革の2番目として有名な「寛政の改革」ですが、実は松平定信が老中に在任していたのは1787年から1793年の5年程度に過ぎないこともあり、この時代に該当する作品はありません、と思っていたのですが…
実は1782年に難破してロシアに流されていた大黒屋光太夫が日本に帰国したのが寛政の改革末期の1792年だったようです。知らなかった。
ちなみに「風になった男」の終盤は時間が飛ぶのですが、この時代は飛ばされて次の時代が最後の舞台になっています。


○文化・文政期 (大御所時代)
松平定信失脚後、文化・文政時代から天保年間までの約50年間、政治の実権を握ったのが第11代将軍・徳川家斉。
文化の中心が江戸に移り、いわゆる化政文化といわれる江戸文化の絶頂期を迎えます。
「女だてら」や「しゃばけ」はこの時代を描いた作品と考えると理解しやすいと思います(「しゃばけ」は時代設定が良く分かりませんが、こちらの外部サイトを参考にここに分類しました)。
なお、厳粛な武士の生き方を描いた「蜩ノ記」と、日本と朝鮮を股に掛ける痛快チャンバラ時代劇「魔岩伝説」がだいたい同じ時期を舞台としているのがなんだか不思議です。


○動乱の天保期
水野忠邦による天保の改革が行われた時代ですが、天保の大飢饉など社会不安が続いた時代でもあります。
中国に目を向けるとアヘン戦争が起きた時代であり、異国船の度重なる来訪、薩長雄藩の台頭など、次の時代の下準備が整いつつある時代でもありました。
「肥後の石工」は薩摩藩が戦争に備えた石橋をつくっていることが背景になっており、薩摩藩を取り巻く状況が変わりつつあることがわかります。
なお、大塩平八郎の乱を描いた「白狐魔記 天保の虹」がラジオドラマ化されれば、ここに分類されることになります。

江戸時代末期 (1850年ごろ~1868年)

いわゆる「幕末」です。
ペリー来航から、開国、幕末の動乱を経て江戸時代の終焉まで。
いわずとしれたフィクションの題材が豊富な時代ですが、青春アドベンチャーでは意外と取り上げられている作品は多くはありません。
「鷲の歌」は安政の大獄(1856年)の1年後が物語のスタートですが、舞台が琉球・薩摩のため京都や江戸の情勢は直接は描かれず。
忍者を主人公にして蝦夷地から北米まで縦横に舞台にする痛快な冒険もの「カムイの剣」・「カムイの剣 パート2」と、留学帰りの真面目な幕臣が時代の移り変わりに苦悩しながら新天地を目指す「武揚伝」。
雰囲気は大きく異なる2作品ですが、終盤の舞台が箱館・五稜郭の戦いになる点で一致しています。
ちなみに、「カムイの剣 パート2」の後半は明治期の話です。
また、日本人に大人気の新選組は、「タイムスリップ明治維新」で多少描かれていますが、この作品はコメディ色が強いので除外すると、「武揚伝」、「カムイの剣 パート2」にて土方歳三の最後が描かれているくらいでしょうか。
土方歳三といえば「月下花伝 時の橋を駆けて」(2018年放送)は幕末を描いていると言えるかは微妙なのでここでは除外しました。

補足事項

なお、この記事は当ブログにおいて作品ジャンルを「歴史時代(日本)」としていますが、ここで紹介している作品は実はそれ以外のジャンルの作品が多数を占めます。
ジャンルを「伝奇(日本)」(超常的な要素があるもの)としている作品は※1、「タイムトラベル」としている作品には※2、「歴史時代(海外)」としている作品には※3、「冒険(秘境漂流)」としている作品には※4を付けています。


■歴史の視点でみるオーディオドラマ
あの作品はこの作品と同じ時代、この作品に登場したあの人物はこちらの作品にも登場している!
時代背景を知れば作品はもっと楽しめる。
日本史・世界史の観点から作品をオーディオドラマを分類してみました。


■シリーズ「青アドポーカー」
作品間の緩やかな繋がりを楽しむこの企画。
その他の記事の一覧はこちらです。


コメント

タイトルとURLをコピーしました